普通の虐待と何が違う?「優しい虐待」とは
愛犬への「虐待」と聞くと、どんな行為を思い浮かべるでしょうか?指示に従わなかった愛犬への暴力行為、トイレの処理やお散歩を放棄して劣悪な環境で飼育するいわゆるネグレクト行為など、犬好きとしては聞いただけで怒りがこみ上げてきますよね。
ですが、誰が見ても「虐待」とわかるこれらの行為以外にも「優しい虐待」と呼ばれる虐待行為があるんです。「優しい」と名が付く通り、それは一見すると愛犬のためを思った行為で、愛犬への愛情や優しさから生まれる行為。
そして最も問題なのは、虐待をしている本人ですらよかれと思ってしている行為であり、「虐待をしている」という意識がないことなのです。
絶対にダメ!愛犬への「優しい虐待」行為
1.好きなものを好きなだけ食べさせる
目を輝かせてごはんやおやつをねだってくる愛犬の姿は可愛いですし、愛犬がおいしそうに食べている姿を見ていると「幸せそうだなあ」と感じます。とはいえ、欲しがるものを欲しがるだけ与えれば、それが愛犬の「本当の幸せ」なのかというとそうではありません。
食べすぎは言うまでもなく肥満の元となり、肥満は万病の元となります。好きなものを好きなだけ食べさせたことが結果として愛犬の行動の自由を奪い、更には寿命を縮めてしまえば、それはまぎれもなく「虐待」なのです。
わんこは野生で暮らしていた頃、群れで大型の獲物を狩って食べていました。いつでも狩りが成功するわけではないため「食べられるときに食べておく」という性質があり、満腹感を覚えにくい体質になっています。
その名残りからわんこは「出されたものはとにかく全部食べる」傾向があるので、自分で食欲をコントロールすることはできません。わんこの肥満は100パーセント飼い主さんの責任です。飼い主さんがしっかりと意識を持って節制してあげなければなりません。
2.悪いことをしたのに叱らない
愛犬が問題行動をした際、しつけと称して殴る蹴るの暴力行為をするのはもちろん虐待です。ですが、かと言って叱らずにスルーしたり、場合によっては「褒められた」とわんこが誤認するような態度をとるのも実は「優しい虐待」に当たります。
人間の育児でも「叱らない子育て」がたびたび物議を醸しますが、人間の場合は子どもがある程度分別のつく年ごろになれば、自ら「これはおかしい」と気づける可能性もあります。
ですがわんこの場合は、飼い主さんが毅然とした態度で「これはいけない」と教えてあげなければ、自分で気づくことは絶対にできません。結果として善悪の区別のつかないワガママわんこになってしまうのです。まさに「可愛さ余って憎さ百倍」な状況を招きかねません。
それでも「可愛いんだから多少のワガママくらいは許せる」「人間の善悪をわんこに押し付けたくない」と思う人もいるかもしれません。ですがそれは飼い主さんの家庭内だけの話です。
災害や家庭の事情でやむをえず愛犬が家庭の外で暮らさなければならなくなった場合、しつけのできていないワガママわんこは他者から受け入れてもらうことができるでしょうか?答えは「ノー」です。
結果として肩身が狭くなり、家族で路頭に迷ったり愛犬と別れざるをえなくなる可能性もあります。人間社会でわんこと暮らしていく以上、人間社会での最低限のルールを教えなければわんこの本当の幸せは得られません。
3.必要以上に連れ歩く
かわいい愛犬とはいつでも一緒にいたいもの。ましてお出かけのときに名残惜しそうに見送られたり、帰宅したときに大興奮でお出迎えされたりしてしまうと「もうこの子をひとりぼっちにはしておけない!」と思ってしまいますよね。
世界ではわんこを家にお留守番させること自体が虐待とみなされる国もあるほどですが、とはいえわんこを必要以上に連れ回すのも良い点ばかりとはいえません。
わんこによってお出かけが好きな子と苦手な子がいるため、ある程度の個体差はありますが、環境が変わるということはそれ自体が一定のストレスになります。交通機関で移動する場合には、移動中に多かれ少なかれ我慢を強いられることになるでしょう。
また、お出かけ先も慣れない場所や人が多い場所では疲れてしまったり、お祭りやイベント会場ではわんこが苦手な音がすることもあります。慣れていて安心できる自宅でのんびりお留守番したほうがよっぽど快適という場合もあるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?いずれも飼い主さんとしては「愛犬が喜ぶから」「喜ぶと思って」している行為ですよね。ですがその場の一時の「幸福」が、将来的にわんこの「本当の幸福」につながるかどうかは話が別です。
もしこの記事を読んで心当たりがあると感じた人がいたら、自分の行動や接し方を振り返るとともに、もう一度、愛犬の本当の幸せを考え直してみてください。