愛犬から尊敬されるとはどういう事?
かつては「犬の群れには明確な上下関係があり、群れの最上位に立つリーダーのみが食べ物、寝床、おもちゃなどの全てを優先して得られる」と考えられていました。
この順位社会の頂点に立つリーダーを「アルファ」、アルファになろうとする犬を「アルファ気質が強い犬」と呼びました。
アルファ気質が強い犬は、アルファになるために唸る、吠える、攻撃的になるなどさまざまな問題行動(アルファシンドローム)を起こすため、体罰等を使って犬よりも人間の方が上位であることを教えることが、しつけの基本だとされてきました。
しかし現在では、順位社会を構築するのは特殊な環境下でのことであり、通常の犬の群れに存在するのは、父親や母親のような存在と家族的な関係性だということが分かっています。
アルファシンドロームが信じられていた頃は、犬からリーダーであると認められることが尊敬されることだとされていました。しかし、犬に上下関係の概念がないと分かった現代、愛犬から尊敬されるとは、信頼されることだと考えられています。必要なのは、主従関係ではなく信頼関係なのです。
現在、アルファシンドロームは、不安や警戒心から生じると考えられています。アルファ気質が強いと言われていた犬は、神経質や敏感な、許容範囲の閾値が低い犬だと考えられています。
では次から、愛犬から信頼される飼い主の特徴について見ていきましょう。
愛犬から尊敬される飼い主の特徴
1.常に落ち着いた穏やかな態度で接する
アルファシンドロームの原因は、その犬の性格から来る許容の閾値の低さであることが分かりました。つまり、愛犬と接する際に、愛犬の閾値を超えるような負の刺激(嫌な思い)を与えないことが大切なのです。
人間同士でも、「もうそれ以上は近づかないで」というソーシャルディスタンスがあります。犬も同じで、最初は撫でられて快感を覚えていたとしても、ある閾値を超えてしまうと急に不快に転じて、唸ったり逃げ出したりすることがあるのです。
突然感情的になって大声を出す飼い主さんよりも、常に落ち着いて穏やかな態度で接してくれる飼い主さんの方が、安心できて信頼しやすいです。愛犬と接する時には、穏やかな態度を意識しましょう。
2.常に一貫した態度で接する
信頼できる飼い主さんは、愛犬に対して人間社会の中で暮らすためのルールを教えてくれる存在でもあります。父親や母親のように、常に、正しいことをすれば褒め、間違ったことをすれば叱ってくれる存在が必要なのです。
昨日は褒められたのに、同じことをして今日は叱られた。お母さんは褒めてくれるのに、同じことをしてもお父さんからは叱られる。このように基準がぶれてしまっては、愛犬は混乱するばかりです。常に一貫した態度で接っすることを意識しましょう。
3.状況によって正しい判断ができる
信頼できる飼い主さんは、愛犬を危険から守ってくれる存在でもあります。そのためには、状況により臨機応変に、正しい判断ができなければなりません。
例えば散歩中の歩き方です。アルファシンドロームが信じられていた頃は、犬にリーダーである飼い主さんよりも前を歩かせてはいけないと考えられていました。この歩き方をリーダーウォークといいます。
現在では、「リーダーの前を歩かせると自分の方が上位だと誤解させる」という考え方も否定されています。しかし、車の往来が激しい道路での散歩では、自由に前を歩かせたりリードを引っ張らせると、愛犬が飛び出して事故に遭うリスクを高めることに繋がります。
愛犬の安全を守るため、臨機応変に判断し対応することも意識しましょう。
4.愛犬の許容範囲を理解して接する
アルファシンドロームを起こす理由は、飼い主さんの接し方が愛犬の許容範囲を超えてしまい、脅威を感じさせてしまったためでした。犬種や個々の性格によって、許容範囲はさまざまです。愛犬の許容範囲がどの程度なのかということを、日頃の観察やコミュニケーションから把握し、愛犬の気持ちになって考えることを意識しましょう。
5.嬉しくないことも嬉しいことで終わらせる
愛犬は、幼い子どものいうことはあまり聞きません。それは、子どもが自分よりも下位の存在だからではなく、自分を守ってくれる存在ではないと知っているからです。
しかし、日頃から食事をくれたり一緒に遊んでくれたりする方でも、歯磨きや耳掃除など、愛犬にとって嫌なこともする方だと、嫌なイメージが強くなり、信頼してもらえないケースも見られます。
愛犬が嫌がるような世話をした後にも、「最後まで○○できて偉かったね」と褒めてご褒美をあげるなどで、最終的に良い体験に変えてあげられる飼い主さんは、愛犬からも信頼されます。
必要なことであれば、愛犬が嫌がる体験も最終的には良い体験に置き換えてあげることも、愛犬と接する時に意識しましょう。
まとめ
さまざまな研究が進むにつれ、今まで常識だと考えられていたことが大きく覆ってしまうことがあります。犬のアルファシンドロームもその1つです。
しかし、それは人間に対する研究でも同じです。昭和の頃は、運動中の水分補給はいけないと信じられていましたが、現在は運動中も喉が渇く前に水分補給をすることが常識となっています。
常に研究が進み、科学は日進月歩です。犬の生態や行動に関しても、常に新しい知見を得ることで、愛犬にとって信頼される飼い主になりたいものです。