犬の活動レベルに影響する要因をソリ犬の調査結果から知る

犬の活動レベルに影響する要因をソリ犬の調査結果から知る

ソリを曳く犬の活動レベルに影響する要因をさまざまな角度から調査した結果が発表されました。仕事を持つ犬の活動に影響する要因は何だったのでしょうか。

お気に入り登録

ソリ犬は犬の活動パターンを知る最適なモデル

犬を撫でる女性とソリ犬たち

シベリアンハスキーなど遥か昔からソリを曳くことを目的に飼育されてきた犬がいます。現代人の多くは犬にソリを曳かせる必要はありません。

しかし自然環境にさらされる機会が多い一方で、人間と強く結びついて生活しているソリ犬は、犬の活動パターンと環境要因や人間との関わりの影響を調査するのに最適なモデルだと考えられます。

この度カナダのトロント大学の人類学の研究チームが、レクリエーションのためのソリを曳く仕事をしているソリ犬と、仕事を持っていないソリ犬の活動パターンを様々な条件によって比較分析した調査結果を発表しました。

仕事を持つソリ犬と持たないソリ犬の活動を調査

ソリを曳く犬たち

調査対象となったのは、カナダのオンタリオ州のハリバートンとアルバータ州のキャンモアという2カ所の犬52頭でした。

犬たちは全員が2歳以上で平均年齢5.33歳、29頭がハリバートン、23頭がキャンモアからです。ハリバートンの犬は決まった仕事を持っていませんが、キャンモアの犬は観光レクリエーションのソリを曳く仕事をしています。

ハリバートンの日中平均気温は-4.9℃(最低気温-13.59℃、最高気温1.43℃)夜間平均気温は-6.01℃(最低気温-15.5℃、最高気温1.3℃です。キャンモアの日中平均気温は4.51℃(最低気温-10.86℃、最高気温2.31℃)夜間平均気温は-5.71℃(最低気温-12.60℃、最高気温1.19℃)です。

日中でさえ平均気温が氷点下のハリバートンよりもキャンモアの方が気温がやや高いことが分かります。

ハリバートンの犬は全員がアラスカンハスキーで、キャンモアの犬たちはアラスカンハスキーとシベリアンハスキーの混合でした。アラスカンハスキーというのは正式な犬種ではなく、ソリを曳くことに特化して育種された犬がこのように呼ばれています。

ソリを曳く目的も、スピードを重視するか重量を重視するかによって犬に求められる特性も変わるため、育種者が目的に沿った交配を行なってきました。そのため外見の特徴はシベリアンハスキーよりもバラエティに富みます。

犬たちには活動量を測定するモニターが装着され、性別、年齢、気温、日中と夜間、人間との関わりといったさまざまな要素と、活動パターンの関連が分析されました。

犬の活動に影響を与えた予想通りのもの、意外なもの

夜の犬のシルエット

決まった仕事を持っていないハリバートンの犬の活動には、性別と気温のみが有意に影響していました。オス犬はメス犬よりも活動的でした。

また、日中の気温の高い日は活動レベルが低下しました。夜間の活動についても日中と同じく気温が高い夜は活動レベルが低下しました。これはコンパニオンアニマルとしての犬の活動レベルと共通しています。

仕事を持つキャンモアの犬の日中の活動量は、平日よりも週末に増えていました。これは観光客向けのソリの稼働率が週末に高くなるためで、作業犬の活動量に最も大きく影響するのは、人間との関わりであることを示しています。日中の気温という環境要因は作業犬の活動レベルに影響していませんでした。

他にキャンモアの犬の活動に有意に影響していたのは犬の年齢と犬種でした。若い犬の方が活動レベルが高く、アラスカンハスキーはシベリアンハスキーよりも高い活動レベルを示しました。

夜間の活動ではキャンモアの犬の活動に影響したのは月の明るさのみでした。月明かりの照度が高い(より明るい)夜は犬の活動レベルが低下しました。

多くの研究では、犬は昼行性の生き物であると結論づけていますが、キャンモアの犬の活動レベルが月が暗い夜に高くなることから、犬は人間が日中活動することに合わせて適応しているが、昼行性の行動は一時的なものである可能性が示されました。この点についてはさらに研究が必要だとしています。

まとめ

遠吠えするアラスカンマラミュート

仕事を持っているソリ犬と持っていないソリ犬の活動レベルを調査した結果、仕事を持つ犬の活動に最も大きく影響するのは、人間が決めた作業スケジュールであるという報告をご紹介しました。

この結論は一見当たり前のようでいて重要なことを含んでいます。自由意志で活動する犬は気温の高い時には活動レベルを低下させるのに対し、人間の決めたスケジュールに従う作業犬の活動レベルは気温が変化しても変りません。

作業犬を使う人間が犬の健康と福祉に対して大きな責任があることが数値によって示されたと言えます。感覚的には当たり前と思われることを、数値によって明確にすることは科学的な研究の重要な役割です。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-022-11635-5

はてな
Pocket
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。