デザイナードッグ人気の理由を調査
ラブラドールとプードルのミックスであるラブラドゥードルや、パグ×ビーグルのパグルといった『デザイナードッグ』と呼ばれる犬たちがいます。デザイナードッグとは、人間が意図的に犬種の違う純血種同士を交配させて生まれてきた犬です。
新しい純血種を作り出す場合にも犬種の違う犬を交配させることがありますが、その場合は何代にも渡って選択育種を繰り返し、安定的に同じ特徴を持つ犬が生まれて来るようにする膨大な時間のかかる作業です。
イギリスではこの数年デザイナードッグの人気が高まっています。王立獣医科大学とノッティンガム大学の研究者チームは、以前の研究で2019年に購入された18.8%がデザイナードッグで、さらに2020年にはその割合が26.1%に増加していることを報告しています。
デザイナードッグが人気を集めていることは間違いがなく、このたび同研究チームはその理由は何なのか?を調査した結果を発表しました。
飼い主が述べたデザイナードッグを選んだ理由
調査は2019年から2020年の間に、子犬を入手した6,293人の飼い主への聞き取り調査の回答を分析して行われました。6,293人のうち1,575人がデザイナードッグの飼い主、4,718人が純血種の飼い主でした。
この調査で最も一般的だったデザイナードッグはコッカプー、ラブラドゥードル、キャバプー、スプロッカー、ゴールデンドゥードルでした。
飼い主の回答を分析した結果、デザイナードッグを選んだ理由として次のようなものが挙げられました。カッコ内の数字は同じ理由を挙げた純血種の飼い主の%です。
- ライフスタイルに適したサイズが選びやすい 74.8%(59.1%)
- 全般的に健康である 62.1%(42.3%)
- 子供との生活に最適 56.0%(42.5%)
- トレーニングしやすい 54.3%(36.4%)
- 犬アレルギーが出にくい 47.1%(7.9%)
上記の中で目立つのは、飼い主に犬アレルギーが出にくいという低アレルギー性を重視する人が、デザイナードッグの飼い主は純血種の飼い主の約6倍もいることです。しかし、現実にはデザイナードッグに関する研究でこの特性に関する証拠は見つかっていません。
トレーニングや子供との生活に関しても、デザイナードッグでは攻撃性の増加など親である純血種とは違う行動上のリスクも報告されています。
デザイナードッグが全般的に健康であるという根拠もありません。残念ながら、デザイナードッグを選んだ理由の多くが間違った認識に基づいていることが示されました。このことは将来の飼育放棄のリスクが高いことを示し、犬の福祉にとって大きな懸念です。
デザイナードッグ購入先の赤信号を見落としている可能性が高い
犬を選んだ理由の他にもデザイナードッグの飼い主に目立つ傾向がありました。
犬の購入先を決める際の理由を純血種の飼い主と比べると利便性を優先する傾向が示されました。それぞれの理由と割合、カッコ内は純血種の飼い主の回答%です。
- 信頼できると評判のブリーダーだから 76.6% (79.7%)
- 購入前の健康診断を提供しているから 59.3% (66.2%)
- 居住地に近くて便利だから 48.0% (36.2%)
- 欲しい時に子犬が入手可能だったから 45.9% (37.2%)
- 価格が安かったから 37.1% (35.0%)
また購入前の犬との対面についても、デザイナードッグの飼い主と純血種の飼い主では違う傾向が見られました。カッコ内は純血種の飼い主の回答%です。
- 購入前に直接子犬を見る機会があった 60.4% (67.0%)
- 子犬の母親を直接見た 73.1% (79.8%)
- 子犬の同胎の兄弟犬を直接見た 67.7% (78.1%)
遺伝病などの検査のため親犬のDNAテストやスクリーニングについても、デザイナードッグの飼い主は純血種の飼い主に比べて「受けた」と答えた人の割合が低く、「テストが受けられるかどうか最初から聞かなかった」と答えた人の割合が高いことも分かりました。
母犬や同胎犬を見ていない、DNAテストやスクリーニングを受けていないことは、悪質な販売者の赤信号を見落としている可能性が高く、犬の健康を無視した繁殖が行われているリスクも高くなります。
デザイナードッグの子犬の価格帯で最も多いのは2,000〜2,999ポンド(約32万〜49万円)で、純血種の最も多い価格帯500〜1,499ポンド(約8万〜25万円)を大きく上回っていました。
赤信号の見落としは購入した子犬の将来だけでなく、悪質業者に資金を提供しサポートすることでデザイナードッグ全体の健康と福祉に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。
まとめ
イギリスでデザイナードッグの人気に高まりについて調査した結果をご紹介しました。
デザイナードッグを購入した理由が誤った認識に基づいていることが多く、将来の飼育放棄のリスクが心配されること。犬の購入方法が悪質業者や無責任な販売をサポートしている可能性が高いことなど、犬の健康と福祉が心配される結果が明らかになりました。
これらはイギリスだけでなく日本も含めた世界の多くの国で見られる傾向です。適切な教育や啓蒙活動にこのような研究結果が活かされることを切に願います。
《参考URL》
https://cgejournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40575-022-00120-x