うちの子はお友達ができない
猫が自己中、気まぐれ、気分屋、というイメージに対して、私たち人は、犬にとてもフレンドリーなイメージを持ってしまいがちです。いつも笑顔で、元気で、友好的である。アニメや小説に出てくる犬というのも、大体、こんな描かれ方をされています。
しかしながら、最近の犬の傾向として、他の犬が苦手、という犬が増えているように感じます。わたくしのもとに寄せられるご相談にも「うちの犬は、お友達ができなくて」というものがあります。
さて、この問題の解決法。まずは、愛犬のことをよく知る、というのが重要なキーです。
他の犬が苦手、という犬のシグナル3選
見逃さないでいただきたいのは、愛犬からのシグナルです。例えば、散歩中に犬に出会うと「これ以上近づかないで!」と、シグナルを出していることがあります。それは、小さなものから大きなシグナルまで、様々です。
1.分かりやすい仕草、行動
唸る、歯をむき出しにする、吠えるというのは、だれでも気づきやすい仕草、行動ですね。
唸る、歯をむく、吠えるときの犬の気持ちは「これ以上、近づかないで!」です。
このときの対処としては、毅然とふるまう飼い主さんの強い意志が大事です。「も~、だめよ~」などの困ったような声を出しつつも、もしかしたら仲良くなれるかもしれないなどの甘い期待を持ちながら、相手の犬に近づける、というのは、最も良くないパターンです。
あからさまに相手の犬に敵対心を抱き、苦手だと感じている犬の場合には、リードを短く持ち、キビキビとした速足で、まっすぐ前を向いて犬とともにその場から離れることです。
2.勘違いしやすい仕草、行動
「この子は唸っているけれども、しっぽを振っているから喜んでいる」これは、非常に勘違いされやすい犬のシグナルです。しっぽを振ると喜んでいる、というのは定説かもしれませんが、犬が興奮したときに見せる仕草のひとつです。
興奮というのは、友好的な興奮も、敵意ある興奮も含めて、ですから、見極めが難しいところです。この状態の犬同士を挨拶させる場合は、リードを短く持ち、なにか一瞬でも危ない予兆を感じたら、すぐに引き離す心構えをしておくことです。
3.逃げる仕草、行動
せっかくドッグランに来たというのに、全くといっていいほど走らず、飼い主さんの足元にばかりいる犬もいます。これは、単に臆病なだけだ、と勘違いする飼い主さんも多いのですが、そうではなく、安全な場所から様子を丁寧にリサーチしている、慎重な行動です。
これを無理に「せっかく来たのだから、お友達と遊んできて」と、わざわざ犬の集団に参加させる飼い主さんがいますが、これはNG。それよりも、慎重な愛犬の行動を理解し、寄り添うことが大事です。
飼い主さんの足にしがみつき、抱っこをせがんだりすることもあります。これは「もう限界なの。助けて」というときの犬からのシグナルです。このとき、抱き癖がつくから、甘えているから、といって抱かない飼い主さんは、犬の気持ちを理解していないのではないでしょうか。
パーソナルスペースを考える
犬側からの気持ちを話しますと、それぞれの犬によって、パーソナルスペースが違います。これは、私たち人も同じこと。相手にそれ以上踏み込んでほしくない、というレッドラインが、それぞれによって違います。
このレッドラインを超えると、犬は攻撃をしたり、などといった行動に出ます。臆病だから、怒りっぽいから、けんかっ早いから、というのは、別々のものとして考えられがちですが、実は突き詰めていくと、その根底には、同じような心理が働いています。
ですから、私たち飼い主は、自分の犬のパーソナルスペースの許容範囲を知ることが不可欠であり、また、理解と対処についても、その犬、その犬なりのパターンを把握するのが大事なのです。
まとめ
少々、辛口な意見になりますが、犬は、本当に犬のお友達がほしい、と思っているのでしょうか。わたくしは、そうでもないと考えています。犬の幸せは、飼い主さんと並んで歩くこと、一緒に笑うこと、寄り添うこと。心をつなげて生きることなのではないでしょうか。