犬猫の誤飲・誤食
2011年にアニコムホールディングス株式会社が172人の獣医師に対して行ったアンケートの中に『(診療)経験のある異物』と『死亡経験のある異物』について尋ねている項目がありますので、ご紹介します。
※暫定致死率=死亡経験のある異物÷経験のある異物×100
【異物(経験のある件数/死亡経験のある件数/暫定致死率)】
1位:ひも(150/27/18%)
2位:果物等の種(150/8/5%)
3位:石や砂(148/8/5%)
4位:布類(145/13/9%)
5位:ボール(141/7/5%)
6位:竹串(138/9/7%)
【中毒物(経験のある件数/死亡経験のある件数/暫定致死率)】
1位:ヒトの医薬品(150/16/11%)
2位:チョコレート(141/9/6%)
4位:殺鼠剤(78/29/37%)
4位:除草剤(78/21/27%)
6位:エチレングリコール(不凍液)(48/28/58%)
6位:ナメクジ駆除剤(48/20/42%)
また同社が3,313人の飼い主さんに行ったアンケートの『犬に中毒を起こすと知っている物』の問いに対しての上位3位は、「ネギ類(98%)」「チョコレート(91%)」「観賞用ユリ(29%)」でした。
特にチョコレートは、殆どの飼い主さんがその中毒性を知っているにも関わらず誤食件数が多く、注意をしていても防ぐのが難しいことが分かります。
参考:https://www.anicom-page.com/hakusho/journal/pdf/120206.pdf
拾い食いの死亡事例
1.常習性のある誤飲
【10歳のダックスフンドの場合】
元気で食欲はあるが、よく嘔吐するという主訴で受診。飼い主さんには拾い食いをしたという認識はなかったが、『異物誤飲の可能性が高い』と診断され緊急開腹手術をし、腸管内から木の実を摘出。
さらに2〜3ヵ月後、再び嘔吐で受診。X線写真に不自然なものが写り緊急開腹手術したところ、腸管内から使い捨てマスクを摘出。散歩中の拾い食い防止のために、散歩中は口輪をつける対策を指示される。
半年後、嘔吐で再々受診。可哀想だから散歩中に口輪はしていなかったとのことで、検査の結果『誤飲』と診断され、開腹手術したところ腸管内からビニールの塊を摘出。すでに腸の一部が腐敗しており、手術後に死亡。
2.毛布の誤飲
【6歳のミニチュアダックスフンドの場合】
家で嘔吐を繰り返して受診。吐瀉物中に青い毛布のようなものを発見。しかし、検査の結果、腸閉塞の可能性は低いと診断され、帰宅。
翌日嘔吐のため再受診。試験開腹手術で胃と十二指腸を確認し、肥厚した十二指腸を切除し、入院。嘔吐が止まらず、紹介された他の動物病院に転院。
転院先の診断は腸閉塞。開腹手術により腸管内から青い毛布を摘出し、壊死している部分を切除したが、2日後に死亡。
3.チョコレートの誤飲
こちらはアメリカでの死亡事例です。
【体重約20kgのスプリンガースパニエルの場合】
約900gのチョコレートを食べてしまい、15時間後に死亡。血液中のテオブロミンが高濃度だったことが確認された。
犬は、テオブロミンを分解するのに人間の3倍の時間を要します。そのため、少量でも継続して与えれば、血液中のテオブロミン濃度は高くなり中毒症状を起こします。通常の4倍以上のテオブロミンを含んでいる高カカオチョコレートは、さらに危険度が高まります。
拾い食いをさせないための注意点
犬の手が届く場所に置かない
うっかり置きっぱなしにしないのはもちろん、落としたまま気付かないということも含めて、常に整理整頓や床の清掃に気を使いましょう。
余計なものに関心を持たせない
愛犬がひとりの時にも余計なものに関心を持たせないよう、退屈させない工夫をしましょう。ストレスを溜めさせないように日々の散歩や遊びをしっかり行う、散歩中は常に意識を飼い主さんに向けさせるのも大切です。
無理矢理取り上げない
事例紹介にも出てきたように、愛犬が異物を口に入れても、無理に取り上げようとはしないでください。犬は取られまいとして飲み込んでしまうことが多いのです。
異物を口にした時には、冷静に手放させましょう。そのためには、普段から「離せ」や「頂戴」といったようなコマンドで、咥えたものを手放させるトレーニングをしておくと良いでしょう。
まとめ
拾い食いを何度も繰り返す犬の場合、「蓄積したストレス」や「食欲が増す病気」といった原因も考えられますので、根本的な対処が必要です。
また今回ご紹介した事例のように、異物誤飲の診断がつかなかったり、手術を繰り返したりするケースもあります。そうなると、中毒性のないものでも最終的には命を失ってしまうこともあります。
拾い食いの予防には、環境整備と日頃のトレーニングが大切です。