コロナ禍における保護施設の犬たちの活動レベルの変化【研究結果】

コロナ禍における保護施設の犬たちの活動レベルの変化【研究結果】

アメリカの動物保護施設の犬たちはコロナ禍の中、行動や活動レベルに変化があったのだろうか?という調査の結果が発表されました。犬と社会のつながりを改めて考えさせられます。

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保護施設の犬たちへのコロナ禍の影響を調査

保護施設のボランティアの男性と犬

COVID-19のパンデミックという世界規模での出来事は社会全体に大きな影響をもたらしました。人間の社会で生きている犬たちも例外ではなく、ペットとして暮らしている家庭犬の行動の変化について世界中の科学者が調査研究を行なっています。

しかし、家庭ではなく保護施設で暮らしている犬たちの生活は影響を受けたのでしょうか?受けたとすればどのようなものだったのでしょうか?

ニューヨーク市立大学ハンター校心理学の研究チームは、動物保護施設で暮らす犬の行動を、コロナ安全対策実施前と実施後で比較分析した結果を発表しました。

コロナ対策前と対策後、保護施設の運営の変化

保護施設の犬舎内の犬

調査対象となったのは、ニューヨーク市内にある大規模保護団体アニマルケアセンターの施設の犬たちでした。調査期間はコロナ安全対策が実施される直前の2020年2月26日〜3月17日、コロナ安全対策のロックダウン実施中の2020年7月10日〜23日の2つの期間でした。

この2つの期間中、34頭の犬の犬舎にカメラを設置し、午前8時から午後8時まで1時間おきに平均15秒の自動撮影が行われました。犬たちは全て個別の犬舎に収容され、犬舎にはベッド、食器、飲料水の器が備えられています。

コロナ禍以前の施設の運営スケジュールは、平日の営業時間は8時〜20時、土日は10時〜18時。22時〜翌朝6時まで消灯。6時〜7時に朝の給餌、犬たちのグループでの遊び時間9時から11時。16時〜17時に夕方の給餌。ボランティアによる散歩は1日中随時行われていました。

コロナ安全対策のロックダウン中2020年4月〜8月まで施設は一般市民とボランティアに対して閉鎖されました。職員は小グループに分けて活動し、グループでの遊び時間は人手不足のため最小限に抑えられました。午後の1時間全室消灯して昼寝の時間を設けました。給餌と夜間消灯時間は変更なしでした。

コロナ対策後、犬たちの行動と活動レベルに明らかな変化

犬舎の隙間から出た犬の前足

撮影されたビデオの犬たちが犬舎内を歩く歩数を1日ごとに平均化したところ、コロナ禍以前は平均54.9歩、対してコロナ禍のロックダウン中は平均77.6歩と有意に増加していました。

これは犬同士の遊び時間やボランティアとの散歩といった活動時間が減少したことから自然なことと考えられます。今回の調査ではストレスに関連する活動まではカバーできなかったので正確なことは不明ですが、犬舎の中を歩く行動はストレス行動である可能性もあります。

コロナ禍以前には、犬たちは午前中に活動レベルが高く午後は犬舎で休んでいることが多かったのですが、ロックダウン中は1日の活動量がほぼ一定に保たれるという活動パターンの明らかな違いが見られました。

社会状況が変わることで施設への人の流れが変わり、犬たちの活動量や活動パターンに明らかな変化があったことが確認されました。コロナ禍による社会的変化は施設内の犬の犬舎での行動に悪影響を与えた可能性が示されています。

またこの調査で使用されたカメラによる自動撮影の手法は、保護施設の動物の行動を観察分析するために有効であると証明されました。今後、保護施設内の犬のストレスや福祉を調査する際に活用することが期待されます。

まとめ

犬舎の中から見上げる犬

ニューヨーク市の動物保護施設においてコロナ安全対策直前とコロナ対策ロックダウン中の犬たちの行動を比較分析したところ、活動量と活動パターンに明らかな違いがあったという調査結果をご紹介しました。

保護施設を訪れていた一般市民や散歩ボランティアの姿が見えなくなり、世話をするスタッフの数も減ったことで犬の行動が変化することは容易に予測できます。しかし、これらの変化は犬によってストレスの増加になる場合、反対に軽減になる場合もあります。

保護犬を取り巻く社会の状況が変わった時の犬の行動をこうして調査分析することで、施設での犬の生活をより良くする手がかりとなります。

《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2022.105614

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