大学生のストレス軽減のためのセラピードッグ
セラピードッグが人々に気持ちの安らぎや、ストレス軽減効果を与えることは広く知られています。その活躍の場も病院や高齢者施設などだけに留まらず、被災地、裁判所、空港などさまざまな方面に広がりを見せています。
中でもアメリカやカナダで増えているのは大学でのセラピードッグプログラムです。大学生と一般集団の調査結果を比較すると、大学生のストレスの高さや精神衛生の悪化と言った問題をより多く抱えていることが分かっています。
大学のキャンパス内でセラピードッグによるセッションを提供することは、学生のストレス軽減に役立っています。
しかしコロナ禍をきっかけに対面でのあらゆる活動が制限され、通常のストレスに加えて学業の中断や社会的孤立などで大学生への負担はさらに増加しました。
このような問題を受けて、カナダのブリティッシュコロンビア大学教育学部とブロック大学の研究者チームが、学生がセラピードッグとハンドラーとのリモートセッションを受けることで、ストレス軽減に役立つかどうかについての調査研究を行いました。
リモートセッションを犬がいる場合といない場合で検証
ブリティッシュコロンビア大学では、10年前からキャンパス内でのセラピードッグプログラムを取り入れており、毎年4,000人以上の学生がプログラムを利用しています。
セラピードッグとのセッションではハンドラーがカウンセラーの役目を果たし、学生が自分のストレスレベルと心身の健康について、自分自身で考えるよう導くための自由形式の質問をしていきます。
リモートセッションの効果を調査するための研究には467人の大学生が参加しました。彼らはカナダ西部の他の大学から募集されました。
リモートセッションはZoomを使ったライブセッションと、録画されたYouTubeビデオがあり、それぞれにモニター越しにセラピードッグが同席している場合と、ハンドラーだけの場合が用意されました。
参加者は「ライブ/犬有り」「ライブ/犬なし」「録画/犬有り」「録画/犬なし」にランダムに振り分けられました。
どのパターンでもハンドラーが対面セッションの時と同じように自由形式の質問をして進行していきました。セッション時間は一律に5分間でした。
リモートセッションの効果と、犬の効果
参加者たちはセッションを受ける前と受けた後の両方で、その時に感じたことを表現する言葉を選択する定型のテストを受けて効果が測定されました。
どのパターンのセッションの参加者も、セッションを受けた後にストレス、孤独感、不安が軽減し、キャンパスとのつながりを強く感じるようになり幸福感が高まったことを報告しました。
しかし、犬とハンドラーの両方がいるライブセッションを受けた参加者は、セッションの前と後のポジティブな感情が著しく向上しており、他の3パターンとは一線を画していました。
リモートのモニター越しであっても、セラピードッグのセラピー効果がはっきりと示されたことは、このようなプログラムを持たない大学の学生へのサポートなど、さまざまな可能性が広がっていくきっかけになりそうです。
まとめ
大学での学生向けセラピードッグセッションをZoomを利用したリモートで行なった場合にも、ストレス軽減や幸福感の向上に大きな効果があったという研究結果をご紹介しました。
この研究ではライブでセラピードッグ同席が一番高い効果を示しましたが、録画されたビデオでもやや弱いとは言え良い効果があったことも重要な点です。犬が同席したビデオを制作することで大量の人がセラピーにアクセスすることができるからです。
また研究者は触れていませんが、リモートでのセッションは犬への負担が少ないことも良い点です。セラピードッグはセッションを受ける人との関わり合いが大好きな場合も多いのですが、対面とリモート両方を使うことで人と犬双方の幸福度が高まるようになれば理想的ですね。
《参考URL》
https://doi.org/10.1080/08927936.2022.2062866