犬のメンタルの病気を予防するキーは毎日のいろいろな刺激【研究結果】

犬のメンタルの病気を予防するキーは毎日のいろいろな刺激【研究結果】

イギリスのチャリティ団体の調査部門が、環境エンリッチメントが犬に及ぼす効果と、一般の飼い主のエンリッチメントや犬のメンタルへの意識についての調査を発表しました。愛犬の心の健康のために知っておきたい調査結果です。

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生活の質を向上させる『環境エンリッチメント』

ラグビーボールで遊ぶジャックラッセルテリア

毎日特にすることも友人と交流することもなく、心にも身体にも刺激のない生活を続けていると、多くの人は精神の健康や脳の認知機能に支障をきたします。これは人間だけでなく犬など他の動物でも同じだと言われています。

人間に飼育されている動物の生活環境は人間が与えるものが全てです。そのため近年では動物園の動物、家畜、コンパニオンアニマルの生活環境に付加的な刺激やアクティビティを与えて、動物の生活の質を向上させることが重要だとされています。

このようなプラスアルファの刺激やアクティビティは『環境エンリッチメント』と呼ばれます。

環境エンリッチメントが動物の行動にどのような影響を与えるのかを、イギリスの介助犬育成チャリティ団体であるガイドドッグUKの調査研究部門が発表しました。同研究者はその後、犬のメンタルヘルスに関するアンケート調査を行い、環境エンリッチメントとの関連についても報告しています。

介助犬訓練中の犬たちに環境エンリッチメントを与えた結果

車椅子のハンドラーに撫でられるラブラドール

ガイドドッグUKの研究チームは、介助犬になるための訓練プログラムを受けている犬10頭に対し環境エンリッチメントを与え、その前後の行動を比較観察しました。犬たちは全員が12〜14ヵ月齢でした。

環境エンリッチメントとして提供されたのは、食べ物を使う知育玩具、犬同士での遊び、ハンドラーとの遊びや触れ合いタイム、ミニアジリティ的なプレイハウスなど計7種類のアクティビティでした。

犬たちは8週間にわたって、これらのアクティビティをランダムな順序でそれぞれ2回ずつ与えられました。

結果は、環境エンリッチメントのアクティビティを与えられるようになった後では、犬たちのリラックス行動が有意に増加、反対に警戒行動とストレス行動が有意に減少しました。

ポジティブな効果が最も高かったのは犬同士での遊びとプレイハウス、行動の変化が最も小さかったのは食べ物を使ったエンリッチメントでした。犬たちがとても若いこともあるのでしょうが、運動に関連するアクティビティの効果が高いようです。

しかし、全てのアクティビティはポジティブな結果を出していたことから、運動だけに偏ることなく、さまざまな種類のバラエティを持たせることで飽きることを防ぎ、エンリッチメントとしての効果がより高くなると研究者は述べています。

犬のメンタルヘルス、飼い主の意識を調査

ベッドの上に伏せるジャーマンシェパード

上記のような調査研究の後に、同研究チームは家庭犬の飼い主を対象にした「愛犬のメンタルヘルスについて」のアンケート調査を行い、その結果も報告されています。

調査によると、74%の犬が不安やうつ状態を示す行動を見せたことがあり、18%の犬がほぼ毎週そのような行動を示していることが分かりました。

犬のメンタルヘルスが低下している時の行動は、食欲不振36%、破壊行動32%、活動レベルの低下、今まで好きだったことに興味を示さない30%、吠え行動の増加29%などが報告されました。

しかしメンタルヘルス低下の行動が出る前に、その兆候を見抜くことができると回答した人は36%のみでした。また34%の人は、犬も脳に刺激を与えないと行動上の問題が起きることを知らなかったと回答しました。30%の人は犬のメンタルや精神に変化が起きることを全く認識していませんでした。

約6割の人たちは犬の気分を高める方法として、長時間の散歩、犬を撫でる、特別なトリーツを挙げています。フードパズルなどの知育玩具を与えている飼い主もいますが、半数以上の人が知育玩具が精神的な刺激になると知らずにいました。

環境エンリッチメントと呼ばれる刺激について知らない飼い主が多いこと、メンタルヘルス上の問題を示したことがある犬が7割以上もいたことは、考えなくてはいけないポイントです。

ガイドドッグUKの研究者は、多1日に1〜2回1時間程度の散歩だけでは脳、精神、身体への刺激が十分ではないことを指摘しています。

フードパズルやノーズワークマット、飼い主によるグルーミング、散歩コースに変化をつける、ドッグスポーツなど、さまざまな種類のエンリッチメントを少しずつ頻繁に行うことが、犬のメンタルヘルスを良好に保つために重要だということです。

まとめ

フードパズルに挑戦する柴犬

散歩や食事、遊びタイムなどの犬の生活環境にプラスアルファの刺激やアクティビティを加える『環境エンリッチメント』が、訓練中の犬のリラックス行動を増加させストレス行動を減らしたという研究結果をご紹介しました。

一方で、一般の飼い主さんには犬のメンタルヘルスや環境エンリッチメントへの理解があまり浸透していないことも調査から明らかになりました。

犬の生活に必要な運動や刺激の量や質は年齢や犬種によっても違いますが、全ての犬には心と身体への刺激が必要です。愛犬のメンタルヘルスを良好に保つために、楽しい刺激をたくさん考えてあげてください。

《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani12020141
https://www.wearecentralpa.com/news/world-news/uk-study-most-pet-owners-dont-spot-signs-of-depression-anxiety-in-their-dogs/

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