犬と音楽に関する研究の数々
多くの人間にとって音楽はストレスを軽減するのに役立ちます。心身をリラックスさせたり、作業効率をアップさせたりと音楽の種類によってその効果は様々ですが、多くの人が日々音楽の恩恵にあずかっています。
そのためか、人間以外の動物の福祉の向上にも音楽が役立つだろうか?という研究は長年にわたって数多く行われています。中でも犬を対象にしたものは数多く「アニマルシェルターで音楽を流すと犬の吠え行動が減少し睡眠時間が増えた」「犬はリズムの激しい音楽よりもレゲエやソフトロックを好む」などの研究結果が報告されています。
そして先ごろ、犬のストレスを軽減するために科学的に設計されたという犬専用音楽についてのプレスリリースが発表されました。
犬専用の音楽は従来の音楽と何が違うのか?
犬専用の音楽を発表したのはアメリカのペットアコースティックという会社です。同社は1997年から、環境音と聴覚が動物の行動にどのような影響を与えるかについて研究を続けています。
動物が知覚する音の周波数は動物の種によって異なり、反応もそれぞれに違います。動物が音に対して否定的で強い反応を示す場合、周波数のうち高いものと低いものが引き金になります。同社は犬が不快だと感じる超高域と低域の周波数を除去した音楽を設計しました。
人間が聞くことのできる周波数の最高域は約2万ヘルツですが、犬の場合は3万〜5万ヘルツの高域を聞き取ることができるため、人間の音楽では不快に感じる場合もあるからです。
今までにも犬用の音楽がCDや配信サービスで販売されていますが、それらは静かなピアノ曲や子守唄などで特に犬の聴覚に特化したものではなかったという点で大きく違っています。
犬専用音楽は実際にどのくらいの効果があったのか?
犬に特化した音楽が実際に犬に対してどのように作用したのか、実験の結果も報告されています。実験にはさまざまな犬種、サイズ、年齢の20頭の家庭犬が参加しました。
犬たちは心拍数、心拍変動、活動レベルを自動記録するスマートカラーを着用し、スピーカーから音楽を流した時と音楽無しの時のそれぞれの数値が比較されました。音楽有りと音楽無しの状態はそれぞれ約3〜4時間で、犬たちは屋内屋外両方で自由に動き回れる状態でした。
音楽を流した時の数値の測定結果は次のようなものでした。
- 20頭中18頭の犬の心拍数が低下した
- 20頭中13頭の犬の心拍変動が高くなった
- 20頭中10頭の犬の活動レベルが下がり、3頭が変化なし、7頭が上がった
心拍数の低下は体がリラックスしていること、心拍変動が高いことはストレスレベルの低下を示しています。
研究機関の実験に比べると簡易的なものですが、犬用の音楽が犬を生理的に落ち着いた状態にすることは間違いがないようです。犬にとって不快な音域が含まれないため、副作用のない不安軽減の方法として期待ができそうです。
動物保護施設、動物病院、雷や花火の音が聞こえる時など利用範囲も広そうですね。
まとめ
アメリカの会社が設計開発した犬の聴覚に特化した音楽が、ストレス軽減に効果的であるという報告をご紹介しました。
具体的にこの音楽がどのように発売されるのかは発表されていませんが、日本でも利用できる日が来ると良いですね。
《参考URL》
https://www.prnewswire.com/news-releases/new-biometric-study-proves-pet-acoustics-canine-music-lessens-stress-and-anxiety-in-dogs-301540836.html
https://www.petacoustics.com