甘やかしとは
愛犬を「甘えさせる」のと「甘やかす」のでは、大きく意味が異なります。似ているようでも、甘やかす方に偏ってしまうと、愛犬の心の成長にはあまり良くないこともありますね。
飼い主さんが困ってしまうような問題行動に発展してしまってからでは、なかなかカバーが難しいのが正直なところです。未然に防ぐには、その違いをあらかじめ理解しておくことが大事だと言えます。
甘やかす、って、悪いこと?
本題に入る前に、飼い主の皆様に一度考えていただきたいことがあります。甘え、とは、そんなに悪いことなのでしょうか。甘え、甘えさせる、甘やかす、甘やかし過ぎない。どれも区分けが付きにくく、解釈も様々にあります。
犬は基本的には人に甘えたい生きものである、といった本質的な部分から見れば、甘えについては、基本的にはそれほど厳しい対応をするべきではないと、私自身は思っています。人も、犬に甘えることもありますからね。
犬にとっては逆効果となる『甘やかし行動』3選
甘やかし過ぎた結果、問題行動に転じたパターンには、実際のところ、どういったものがあるのでしょうか。代表的な例を見ていきます。
1.要求吠え
イメージが付きやすい例で、最も多いパターンです。犬が「あれが欲しい」と吠え続ければ、「はいはい、これね」と、犬の意のままに飼い主が従っている状態です。このパターンが犬の脳に擦り込まれると、犬にとっては、しめたもの。
様々なバリエーションを展開し、いつでも、どこでも、この要求吠えがまかり通ってしまうということをすぐに学習してしまいます。いわゆる、犬が王様になってしまう状況ですね。抱っこしろ、あのおやつが食べたい、ケージから出せ、などなど、要求は、吠えという武器を使って、どんどんエスカレートしていきます。
≪対策法におすすめなのは≫
要求吠えの対策としては、小さな要求であっても、「断じて応じない」ことです。小さな要求はOK、大きな要求はNG。という曖昧さが、要求吠えを加速させてしまいますので注意が必要です。
2.気に入らないと唸る、咬みつく
犬のワガママに従う、というのは、犬を甘やかし過ぎる、というのと同意語です。「嫌だ」という感情から、犬が唸ったり咬んだりしたことに対して、飼い主さんが怯えることがあります。
恐怖心からその状況を受け入れ、唸りや咬みつきを受容してしまうのは、甘やかし過ぎると言っていいと思います。間違った解釈を繰り返した結果として、痛くもないのに、触れられただけで「ヴヴゥ~!」と唸り、だれかれ構わず咬みつく犬になっては困りますね。
≪対策法におすすめなのは≫
体を触れられるのを嫌がるとか、ブラッシングを嫌がって唸る犬の場合、まずは本当に痛いのかどうかの判断をします。もしかすると、身体上の理由で、本当に痛くて限界でつらいのかもしれないからです。
そうではないことが分かれば、やるべきことはただ一つ。「動じない」です。甘やかし過ぎによって形成されてしまった問題行動を治すには、飼い主さんの覚悟が必要です。唸ってきても犬を見ない。咬んでも大きい声を上げたり、泣くような仕草、声を出さない。そんな意識の改革が不可欠です。
(ただし、咬みつきによってケガをしてしまうようなハードなケースでは、咬まれてもいたくないようなグローブを使ったりなど、専門的な対策を取りながら改善していきますが、専門家の指導を受けながらが良いでしょう)
3.暴走、引っ張り、ケンカ
これも、犬の思うがまま、感じるままに行動をすることを、飼い主さんが許容してしまったという、甘やかし過ぎのパターンです。犬の自由度を100パーセント受け入れてしまうことで、犬が行動の主導権を握る結果になります。
散歩中に暴走したい、興味のある方にグイグイとひっぱり、要求を通す。気に入らない犬が来れば、ケンカしたいと相手に挑んでいく。耳障り、目障りな乗り物が通れば、敵意を持って追いかけまわす。
これらのすべては、犬のやりたいことを受け入れてしまった、飼い主さんの甘やかし過ぎによるものです。
≪対策法におすすめなのは≫
「良い」と「ダメ」の境界線をハッキリとさせることが大事です。特に柴犬などの和犬や、コーギー、シェパード、ポメラニアンといった犬種では、主導権を常に飼い主さんが持つ、という意思を心がけると良いでしょう。
つまり、犬が「やりたいな、こうしたいな」といった気持ちを持ったとき、自分勝手に行動させない癖付けをすることで、改善につながっていきます。
同時に議論されることの多い、叱る、叱らない、について
言うまでもなく「甘やかす」の反対は、「犬を叱る」ではありません。叱る、叱らない、については色々なご意見があるでしょう。飼い主さんたちの感覚だけではなく、ドッグトレーナーの中でも、それぞれに考え方の違いがあります。
私は犬を叱らないで育てる訓練士として、自身のメソッドと実績を持っています。しかし、これだけがすべてではありませんので、ひとつの考え方として、本記事を読んでください。
犬の育て方(しつけ方)に正解はありません。正解は、犬とあなた(あなたの家族)の中だけに存在します。
まとめ
甘やかしすぎ、甘やかす、甘える、甘えさせる。これらの線引きは難しいものですね。甘えの濃度を細分化しつつ、犬の気持ちを理解し、良い方向に導いていけるようにしていきましょう。犬も、それを飼い主さんに望んでいます。