『穏やかで温厚な犬種』3選!優しいと言われる理由や飼う時の注意点まで

『穏やかで温厚な犬種』3選!優しいと言われる理由や飼う時の注意点まで

穏やかで温厚な犬種。犬種の成り立ちや制定の歴史は、特にわたしの好きな分野です。しかし、改めて考えてみると「この犬種に決まっているでしょう」などと、断言もできないものですね。今回は優しい犬について、ご一緒に考えてまいりましょう。

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犬種の全体像

4頭の犬

およそ300種ある犬種を、用途ごとに分けたのが犬種グループです。国際畜犬連盟(以下FCI)では下記のような10のグループに分かれています。少し長くなりますが、犬種のルーツを知ることはとても大事です。

ご自身の犬がどのグループか、次に飼いたい犬はどのグループか。たいへん参考になりますので、おさらいを兼ねて、犬種のグループ分けを見ていきましょう。

  • 1グループ:牧羊犬、牧畜犬

家畜の群れ、誘導、保護するための犬たち。シェパ―ド、コーギーなど

  • 2グループ:使役犬

番犬、警備、作業をする犬たち。ドーベルマン、ブルドッグ、ミニチュアシュナウザーなど

  • 3グループ:テリア

小型の獲物を狩猟する犬たち。ヨークシャーテリア、ジャックラッセルテリアなど

  • 4グループ:ダックスフント

土の下にあるアナグマやうさぎなどの巣を、群れで猟をする犬たち

  • 5グループ:原始的な犬

日本犬を含む、ハスキー、スピッツ、ポメラニアンなど

  • 6グループ:嗅覚ハウンド

優れた嗅覚を持ち、獲物をしとめる狩りの友。ビーグルなど

  • 7グループ:ポインター、セター

獲物の位置を確認し、静かにその場所を知らせる狩猟犬。アイリッシュセッターなど

  • 8グループ:7グループ以外の狩猟犬

ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、アメリカン・コッカースパニエルなど

  • 9グループ:愛玩犬

家庭犬、伴侶目的の犬。プードル(サイズすべて)、マルチーズ、シーズーなど

  • 10グループ:視覚ハウンド

優れた視覚とスピードを持つ脚力で獲物をしとめる犬。イタリアングレイハウンドなど

歴史をたどれば

狩猟の犬と男性

さて、ここまでズラリと10グループをご紹介してきました。これは200年ほど前にイギリスで制定された、用途、能力、容姿ごとのグループ分けです。

時代は経過し、繁殖や飼い方も変わってきましたが、私たち人の本能的な部分が変わらないように、犬もまた、持って生まれた気質や能力といった部分については、それほど変わりません。

しかし、ハンティングや防衛、警備、家畜を守る、などの用途にはほとんど使われることがないわけですから、ごく一部の犬を除いては、どの犬もみなそれぞれの特徴を持ちつつも、家庭犬としての飼いやすさを重視して改良がすすめられています。

穏やかで温厚な犬種3選

女性とゴールデン

では、わたくしの長い犬業界の経験を踏まえ、穏やかで温厚な犬3選をお伝えします。でも、この犬種なら絶対におとなしいですよ。というものではないので、本文を最後までよくお読みになってください。

≪穏やかで温厚、優しい犬種3選≫

  •  キャバリアキングチャールズスパニエル
  •  ゴールデンレトリバー(イギリス系なら特に)
  • バセットハウンド

どうでしょう。「意外~!」という声が聞こえてきそうですが、熟考した結果、この3頭にしぼりました。

なぜ、この3種なのか

王冠のベッドとキャバリア

1.キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

ビクトリア女王、チャールズ一世をはじめ、イギリス王室からの寵愛を受けた、貴族の犬です。伝記や映画に登場するキャバリア。もともとは、トイ・スパニエルという、すべてのスパニエルの基礎になった犬ですが、その後、日本の狆、中国のパグなどを交配して、王室に好まれる姿に改良されていきました。

使役、番犬、猟犬としてのルーツを持たず、良き家庭犬として、人によりそうような素質を求められて繁殖されました。王室の犬ですから、一般家庭に普及されるのは、ずっとあとの時代。それまでの間、王室で人と一緒に寝起きをしてきた歴史を持ちます。

そのため、争いや縄張り意識が低く、温厚というわけですね。実際に、わたくしも数多くのキャバリアを見てまいりましたが、確かにどの子も社交的であり、ゆったりとした気持ちを持っている犬が多いと感じます。

2.ゴールデンレトリバー(特にイギリス系)

「特にイギリス系」という注釈を入れたのには理由があります。ゴールデンレトリバーの基礎はいくつかの水猟犬に由来しますが、改良の途中で、スコットランドをはじめとしたイギリスを中心に繁殖されたものと、それとは別にアメリカに渡り繁殖されたラインがあります。

現在、日本に多くいるのは、アメリカ系のゴールデンと思ってくださっていいでしょう。(一部、改良を目的としたイギリス系とアメリカ系の交雑はあります)どちらのタイプのゴールデンも、穏やかで防衛心があまりなく、攻撃的な要素が少ない気質を持っています。人が好きで、子供や老人にも適切に振舞える、優しい犬として知られています。

しかし、この二つのラインには少々のちがいがあることも書き添えておきます。イギリス系のゴールデンたちは、愛好家たちによって、その血統を守るためにあまり国外に輸出されなかったという歴史を持ちます。

これに対して、アメリカに渡ったワーキング系を中心としたゴールデンたちは、アメリカの広い国土に広まり、高い運動能力やアクティブな要素を特化され、さらにアメリカンナイズされ、明るく朗らかな性質が強まっていきました。

そのため、この二つのラインを比較してみると、イギリス系のゴールデンの方が優しさ、穏やかさという要素をより多く持っていると言えます

と、いうわけで、ゴールデンについて「だって優しい犬なんでしょう?」とか「すごく飼いやすいんでしょう」といった質問を受けても、その答えとして「概ねそのとおり。でも、結構、個体差が大きいですよ」と、お伝えしています。血統を選び、適切に飼うことができれば、穏やかで優しい、おおらかな家庭犬となります。

3.バセットハウンド

まさか嗅覚ハウンドがランクインしているなんて!!!と、驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。そう。嗅覚ハウンドと言えば、6グループ。持ち前の嗅覚の良さを使って獲物を負う、非常にタフでスタミナのある犬たちです。

しかし、このバセットハウンドは、風貌も性格も、他のハウンドたちとは少し違います。短足でどこかユーモラスな外見を持ち、決してアグレッシブさを感じないのが特徴です。それもそのはず。本犬の作出の目的は「丁寧に獲物の匂いをかぎ、ゆっくりとしたスピードで追跡をすること」にありました。

つまり、それまでのハウンドに求められた、どう猛さを持って獲物を追いつめるタフガイのようなイメージから、ちょこちょこと群れでゆっくり追いかける、ソフトなスポーツハンティング用に改良されたのが本犬です。そのため、ハングリーさやストイックさとはかけ離れた、ゆっくりと穏やかな性格を持ち、争いごとは好きではありません。

みなさまにお伝えしたいこと

バセット寝る

今回は、性格、性質だけにフォーカスし、穏やかで優しい犬を選びました。申し上げておきたいのは、穏やかで優しい犬、イコール、とても飼いやすい犬、「ではない」ということです。

例えば温厚犬種として名高いキャバリアは、先天性の持病を抱えていることも多いですし、シングルコートでありながらも抜け毛が多めな犬種です。

ゴールデンは穏やかな性格を持っていますが、体重は25キロ~35キロほどになります。明るく朗らか、子供にも優しい名犬ですが、運動量も必要な犬です。はたしてあなたは、きちんとしつけてその体格の良い本犬をコントロールできるでしょうか。

バセットハウンドはおっとりとしていて、ゆっくりとした動作をします。多少のことでは驚かない、どっしりとした気質を持っています。しかし、よく通る野太い声、皮脂が多めで皮膚の管理が難しいといった面もあります。

まとめ

ポメラニアン一頭

穏やかで温厚な犬が欲しいと思ったら、まず、犬種のルーツについて知ることは重要です。でも、犬種を超えて、持っている個性を超えて、巡り合う縁があるはずです。犬種にこだわりすぎるあまりに、大事なものを見失わないように犬を選んでいただきたいと思います。

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