悲しい話
本題に入る前に、ひとつ、悲しい話をご紹介させてください。つい、先日のこと。わたくしのもとに連絡をくれた女性がいます。相談の内容はこのようなものでした。
「先月、マルプーの保護犬を引き取ったのだけど、全然なついてくれません。私が仕事から帰ってきても、隠れていてジッと私を見ているだけです。昔飼っていた犬は、私が帰宅すると、お帰り、お帰り♡というような、キャッキャとした歓迎をしてくれたのに。この子は、私を好きになってくれないのでしょうか。もっと相性の合う、ちがう子を引き取ったほうが良かったのでしょうか」。
これをお読みになったみなさんは、いかが感じられましたか。
この相談から読み取れること
おそらく、みなさんも同じことを思われたはずですが、話に出てくる保護犬のマルプーちゃんは、この女性を「頼りない」と感じているような気がしませんか。頼りないから、自分の感情を表現できないのではないでしょうか。
また、保護された経緯からも、なにかの理由を持っているはずです。こうしたケースではそれを加味し、いつも以上に慎重に丁寧に信頼のきずなをつくっていく必要があるわけです。
しかし、この女性は「犬はなつくものだと思っていた」「せっかく保護してあげたのに」「私を好きにならないなら、別の犬でも」。犬を拒絶する心の中が前面に出てしまっています。
こんな思考の方に、犬がなつくとはとうてい思えません。以上は特殊なケースですが、もしかすると、頼りない飼い主というのは、犬の気持ちが分からない飼い主、であるのかもしれません。
犬に『頼りない飼い主』と思われてしまうNG行為2選
では、気分を変えて、すでに信頼関係のできている愛犬からであっても「もう、飼い主さんたら、頼りないなあ~」と思われてしまう行為を3選、お送りします。
1.あせり
人は誰でもあせるものです。こう書いてしまうと、元も子もない当たり前の話ですが、例えば愛犬を連れたドライブの途中で、こんな経験はありませんか。
「あれ?こっちの道だっけ。ナビとなんだか違うような…。あれ?さっきもこの道、通ったかも!?」とか、「待ち合わせの時間まで、ギリギリ~!やばい、やばい」など。
飼い主さんがあせりを感じる時、それまでおとなしくドライブベッドで眠っていた愛犬が、突然ムックリと起き出して、キューンキューンと不安げに鳴くとか、キョロキョロと窓から周りを見だすとか。また、ドライブベッドをホリホリと搔き始めるとか。
これは、あせりという感情をモロに出している飼い主さんを頼りなく思い、とにかく自分を落ち着けよう、そして弱い者に加勢して助けてあげよう、といった行為です。頼れる飼い主さんになるためには、あせりは禁物ですね。
2.落ち込みやすい
飼い主さんがショックを感じ、悲しみ、気分の沈み、悩みといった感情から抜け出せずにいると、犬はどうするでしょうか。
犬は群れで行動する生きものであり、仲間のダメージをケアしようとする動物です。ですから、大好きな飼い主さんが悲しみを患っていることを感じれば、そばに行き、寄り添い、なめたり、体の一部をくっつけて、癒そうとする本能を持っています。
しかし、この回復させる行為が一時的なものであるなら良いのですが、引きずったり、しょっちゅう深いため息をついたり、沈み込んでいたりするのは、犬を不安にさせます。
そして、これまで頼ってきたあなたに代わって、自分があなたを守る存在になろうとします。言葉で見ると、一見、ヒーローのような良い行動に聞こえますが、それは違います。どの犬も、人を率いて家族のリーダーに俺はなる!とは思っていないんですね。
でも、前出のように飼い主さんが弱く、不安定であると感じれば、自身が前に出て、あなたを守ってあげなくては生きていけないと思うようになります。
これが、外敵に対して異常に吠えやすくなるとか、部屋の中をいつまでもウロウロと歩き回り、警備をするようになるなどの、いわゆる問題行動に結びついていきます。
生きていれば、落ち込むことや悲しみにぶつかりますが、それを早期にカバーしてくれるために、あなたの犬はあなたのもとにやってきたのかもしれません。愛犬のためにも、早く立ち直る癖をつけ、犬から「頼りないなあ~」なんて、思われないようにしていきたいですね。
まとめ
犬に頼られる飼い主さんになるために、大きな叱り声や、小言、にらみつけ、暴力は必要ありません。単に「頼りないなあ~」と思われる機会を減らすだけで良いのです。
あとは、いつものあなたのままで。少しだけ胸を張って、犬の前を歩いて。そうした自信あふれる飼い主さんの姿を見て、「うちの飼い主さんって、やっぱり頼りがいがあるな~♡」と思うものです。