保護施設での犬のストレスレベルを被毛から測定した調査結果

保護施設での犬のストレスレベルを被毛から測定した調査結果

保護施設で動物が感じているストレスを把握することは動物福祉を守るために重要です。保護犬のストレスレベルを被毛を使って測定した調査結果が報告されました。

お気に入り登録

動物保護施設での犬のストレスを調査

保護施設の犬舎の中の犬

動物保護施設で暮らしている動物の福祉は、関係者の多くが心を砕いている事柄です。しかし施設の設備の改善、遊び時間や散歩を充実させるなどの努力が十分に行われている場合でも、動物がストレスを感じていることが観察されています。

また保護施設で暮らすことが動物にとって、どのくらいのストレスなのかを把握するための調査研究も数多く行われています。

この度オランダのユトレヒト大学の動物行動学の研究者が、動物保護施設で暮らす犬のストレスレベルと、時間による変遷を犬の被毛から調査した結果を発表しました。

被毛に含まれるコルチゾールの値を測定

人の手に置かれた犬の被毛

研究者が犬のストレスレベルを調査するために採用したのは、犬の被毛に含まれるコルチゾールの値でした。コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれ、身体的および精神的なストレスを感じた時に分泌されます。

短期的なストレスを調査するためには唾液や尿中のコルチゾール値を測定しますが、継続的で長期に渡るストレスは、毛髪や被毛に蓄積されたコルチゾール値を指標にします。

調査対象となったのは、オランダ最大の動物保護施設であるアムステルダムアニマルシェルターで暮らす52頭の犬たちでした。健康状態や行動面で問題のある犬、1歳未満または13歳以上の犬は含まれず、平均年齢3.8歳のメス犬18頭とオス犬34頭が選ばれました。

犬たちは施設入所時、入所から6週間後、家庭犬として譲渡された6週間後、譲渡されてから6ヶ月後に身体の同じ部分の被毛を剃って採取し、それぞれの時点のコルチゾール値が測定されました。

また対照群として、52頭の犬たちと犬種、サイズ、年齢、性別の分布がほぼ同じの家庭犬20頭も調査に参加しました。対照群の家庭犬たちの被毛の採取と測定は1回のみ実施されました。

環境の良い施設でも犬はストレスを感じている

保護犬を撫でるボランティアの男性

被毛中のコルチゾール値を採取時期別に比較すると、施設入所時の値は家庭犬20頭と比較して大きな差はありませんでした。しかし施設滞在後6週間の時点での値は、保護犬たちの方が有意に高くなっていました。

また調査対象になった52頭のうち、家庭犬として譲渡された犬たちの譲渡後6週目の測定値は、対照群の20頭の家庭犬とほぼ同じレベルまで下がっており、6ヶ月後の測定でも同様でした。

これら52頭の犬たちが保護されていた施設は、オランダ国内でも動物福祉向上に先進的に取り組んでいる所です。犬たちは個室が与えられ、他の犬の吠え声などを極力遮断するために鉄格子ではなくガラス扉が設置された屋内犬舎、その屋内犬舎にはそれぞれに専用の屋外犬舎が取り付けられているという恵まれた設備と環境です。

このような施設であっても犬のコルチゾール値が増加したということは、犬の吠える声が響き渡り複数の犬がグループで収容されているような場所でのストレスは想像に難くありません。

測定されたコルチゾール値は「保護施設への入所理由」「以前に犬舎で暮らした経験」によっても違っていました。施設以前の生活との違いが大きいと犬のストレスも大きくなります。

また犬のサイズ、年齢、毛色のメラニンタイプによってもコルチゾール値に違いが見られたそうですが、今回の調査ではサンプルサイズが小さいため、因果関係を探るにはさらに調査が必要だということです。

まとめ

犬舎の中の垂れ耳の犬

オランダの動物保護施設で暮らす犬たちのストレスレベルを、被毛に含まれるコルチゾール値を測定して調査した結果をご紹介しました。

調査対象になった犬たちが暮らしている施設は、世界的に見ても高いレベルの動物福祉が整えられているのですが、慣れ親しんだ環境から離れることが犬にとってどれほどのストレスになるかということがこの調査結果からも窺えます。

保護動物の福祉を向上させるためにも、このような研究は不可欠です。一般の飼い主としては家庭での慣れ親しんだ環境が犬にとってどれだけ重要であるのかを改めて心しておきたい結果と言えます。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-022-09140-w
https://www.doamsterdam.nl/en/

はてな
Pocket
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。