犬の自傷行為とは?
自傷行為とは自分の体を傷つける行動のことで、人だと刃物で自分の手首や腕などを切ったりすることを指します。そして犬の場合は、体の一部を舐め続けて傷を作ったりすることを指します。
犬は緊張や不安などを感じたときに、尻尾を追ったり足を舐めたりして気持ちを落ち着かせようとします。短時間で落ち着いてやめるのであれば、転位行動という正常な行動です。
しかし日常生活に支障をきたすほど、ずっと尻尾を追い続けたり足を舐め続けたりする場合は、常同障害という心の病気だと考えられます。
自傷行為は常同障害の症状のひとつで、自分の尻尾を追って出血するほど噛んだり、脱毛や炎症を起こすほど足を舐め続けたりしてしまいます。エスカレートすると、尻尾を噛み切ってしまうことも。
こうした自傷行為のほかに、常同障害の症状として
- グルグル歩き回る
- 影や光を追い続ける
- いない虫を追うように口をパクパクさせる
といった行動が挙げられます。常同障害は、人の強迫性障害に似ていると言われています。
犬が自傷行為をしてしまう理由は?
自傷行為の背景にある常同障害の原因には、遺伝要因や環境要因が関わっています。そのため犬が自傷行為をしてしまう理由もいろいろですが、今回はその理由を心理的な側面から紐解いていきます。
1.退屈や孤独
犬が退屈なときや寂しいときに、ちょっと尻尾を追ったり足を舐めたりして、暇つぶしや気を紛らわすのはよくあることです。
しかし、日常的に退屈や孤独を感じていると『ちょっと』では済まずに、出血するほど尻尾を噛んだり、皮膚炎になるほど足を舐めたりしてしまうことがあります。退屈な時間や孤独な時間が多いことがストレスとなり、自傷行為に繋がってしまうのです。
日頃から長時間の留守番が多かったり、飼い主さんにあまり構ってもらえなかったりする犬は注意が必要です。
2.欲求不満
犬の運動不足やストレスを解消するために、毎日の散歩は必須です。散歩に行かなかったり、行ってもごく短時間であることが多いと犬は欲求不満になります。
また、犬の本能的な欲求を満たす遊び(モッテコイや引っ張りっこなど)や、散歩中のにおい嗅ぎをさせてもらえないことに不満を募らせることもあります。
こうした欲求不満からストレスをため込み、自傷行為に至ってしまうケースは少なくありません。
犬の自傷行為をやめさせる方法は?
愛犬が自分で自分の体を傷つけるのは、飼い主さんにとってもつらいものです。きっと、どうにかやめさせたいと思うことでしょう。しかし、飼い主さんの自己流の対処法では悪化させてしまう恐れがあります。
正しい診断と治療をしてもらうためにも、愛犬が自傷行為と思われる行動をしていたら、まずは獣医師に相談することが大切です。
もし常同障害による自傷行為と診断された場合は、どのような治療が行われるのでしょうか?
1.行動の修正
自傷行為に至ってしまう常同障害を改善するために、獣医師の指導を受けながら行動修正を行います。
症状や犬の性格などによって方法は異なりますが、例えば足を舐めるのがやめられないのなら、足を舐める行動を抑えるトレーニングをします。
叱ってやめさせようとしたり、無理やりやめさせようとしたりするのは絶対にNGです。それがストレスとなって更に舐めるようになってしまったり、別の問題行動が生じたりする恐れがあります。
2.薬やサプリメントの投与
常同障害と診断された場合は、行動修正法とともに薬剤療法を行う場合もあります。抗うつ剤や抗不安剤が処方されるのが一般的です。飼い主さんが薬剤の使用を不安に思う場合は、サプリメントを使用することもあります。
3.原因を取り除く
生活環境を見直して自傷行為の原因と思われるものを取り除き、犬のストレスを減らすことも重要です。
孤独な時間や退屈な時間が多いのなら、意識してコミュニケーションやスキンシップの時間を増やします。
散歩が十分でない場合は、散歩の回数や時間を増やします。散歩は犬の年齢や体調、性格などを考慮し、その犬に合った散歩時間やコースにしましょう。遊びや散歩中のにおい嗅ぎで本能的な欲求を満たしてあげることも大切です。
まとめ
今回は、犬が自傷行為をしてしまう理由とやめさせる方法をご紹介しました。ご紹介した理由からも分かると思いますが、ストレスは犬の自傷行為に繋がりやすいです。愛犬がなるべくストレスを感じないように生活環境を整えて、自傷行為を予防しましょう。
自傷行為の背景にある常同障害も、ほかの病気と同様に早期発見と治療が大切です。自傷行為に気づいた場合はもちろんですが「同じ行動を繰り返している気がする」と感じた場合も、早めに獣医師に相談をしましょう。相談するのは、動物の行動治療に詳しい獣医師が望ましいです。