ペットの犬や猫の排泄物から検出された化学物質【研究結果】

人間と同じ環境で暮らすペットの犬や猫は多くの化学物質に曝されています。犬猫の尿や便から検出された化学物質についての研究結果をご紹介します。

更新日：2022年05月03日

日常生活の中の化学物質とペット

リビングでくつろぐ男性と犬と猫

私たちの日常生活はさまざまな種類の化学物質に溢れています。繊維製品を染色する合成染料には、皮膚細菌や腸内細菌の作用で還元分解し芳香族アミンという化合物を生成することがあります。

芳香族アミンの中には発ガン性リスクが確認されているものがあり、これらは特定芳香族アミン類と呼ばれます。特定芳香族アミン類はタバコの煙からも生成されます。

ペットの犬や猫は人間と同じ環境で暮らしていることから、特定芳香族アミンにも曝されていると考えられます。

さらに彼らは人間よりも体が小さいこと、代謝の仕組みが人間とは違っていることから、化学物質の影響を強く受ける可能性があります。しかし、ペット動物がどのくらい特定芳香族アミンのリスクに曝されているのかは、今まで調査されたことがありませんでした。

この度アメリカのニューヨーク大学グロスマン医学校の研究者が、犬と猫の尿と便のサンプル中の特定芳香族アミンを分析した調査結果を発表しました。

いろいろな犬用おもちゃ

研究チームはニューヨーク州アルバニーの一般家庭のペット、動物病院に入院中のペット、アニマルシェルターで暮らしている犬と猫（合計犬42匹、猫21匹）の尿サンプル、同じ地域に住んでいる一般家庭の犬37匹と猫40匹の便サンプルを採取しました。

そして30種類の特定芳香族アミンと2種類のタバコ化学マーカー（ニコチンとコチニン）を検出するため、これらのサンプルを分析しました。

分析の結果、30種類の特定芳香族アミンのうち8種類が尿サンプルの38％に、9種類が便サンプルの73％に含まれるという高い割合を示しました。また猫の尿サンプルは犬よりも高い濃度が検出されました。

また、タバコ科学マーカーであるニコチンなどの数値に特定芳香族アミンとの相関が低かったことから、タバコの煙以外のものから特定芳香族アミンが生成されていることが示されました。

カラフルなドッグトリーツ

犬と猫の排泄物から検出された芳香族アミンの量は、自宅で生活しているペット、入院中のペット、アニマルシェルターの保護動物の間でほとんど差がありませんでした。これはこの物質が日常生活の中でいかに一般的で、避けることが難しいかということを示しています。

ペットの体内の特定芳香族アミンの発生源は、繊維製品の染料、動物用医薬品、ペットフードの着色料などが推測されています。

医薬品は必要があってのことなので避けることはできませんが、ペット用のベッドや布製おもちゃの品質、着色料を使ったトリーツやフードを避けることが重要です。

今のところ、芳香族アミンのレベルがどの程度までなら安全なのかということも不明ですが、各種製品の規制を設けるためにも、この研究が一歩を踏み出したと言えます。

寄り添っているラブラドールとアビシニアン

ペットの犬と猫の尿と便を分析したところ、発ガン性リスクのある特定芳香族アミンが高い割合で検出されたという研究結果をご紹介しました。

現代社会に生きている限り化学物質をシャットアウトすることは不可能ですし、心配し過ぎてピリピリして生活するのもかえって良くありません。しかし過剰な染色の布製品や着色料入りの食べ物を避ける、ペットのそばでタバコを避ける、などは簡単にできるリスク回避ですので生活の中に取り入れたいものです。