犬にストレスを与える原因とは
ストレス原因を分類すると、大きく3つに分けられます。「生理的ストレス」「物理・化学的ストレス」「心理・社会的ストレス」です。これは人間だけに限った話ではなく、犬のストレス原因も同じです。
生理的ストレスとは、生きていく上で必要なことが満たされない状態です。空腹、睡眠不足、思うように排泄できない、新鮮な水を飲めない、病気やケガをしても適切な治療を受けられないといったような問題が含まれます。
物理・化学的ストレスの多くは、不適切な環境要因によるものです。不適切な温度や湿度、騒音、過剰な照明、不快なニオイなどが含まれます。人間と犬の感覚の違いにより、なかなか飼い主さんには気付きづらいことも多いかもしれません。
心理・社会的ストレスとは、精神的に落ち着いて暮らせない要因となるものです。愛犬に対して不安、恐怖、緊張、孤独、嫉妬などを感じさせるような原因となる問題が含まれます。
ストレスが限界に達している時に犬が見せる行動
ストレスレベルが低い時の犬のストレスサインは「いつもと違う行動」です。ダメージが少しずつ高まっていくと「問題行動」が現れ、限界まで達すると「心身に支障をきたす」レベルになります。今回は、ストレスが限界にまで達した際に犬が見せる行動をご紹介します。
1.食欲不振や消化器系の症状を繰り返す
心身への支障として最も現れやすいのが、食欲の変化です。特に食欲不振になり、それまで大好きだったフードやおやつにも興味を示さなくなることが多いです。また下痢や嘔吐といった、消化器系の症状を繰り返す場合もあります。
2.自傷行為
自らの身体にケガをするほどのダメージを与える行為を、自傷行為といいます。ストレスが限界にまで達してしまうと、自傷行為が出ることが多いです。例えば、前足の同じ場所を執拗に舐め続けて脱毛や皮膚炎を起こす、自分の尻尾に噛みつき続けて血を流すなどです。
3.血尿
非常に強いストレスを感じると、血尿が出る場合もあります。犬は、雷や花火などの大きくて振動を伴うような音が苦手です。花火大会や嵐の翌日などに見られることが多いようです。
4.攻撃的になる
ストレスを溜め込み、攻撃的になる場合もあります。発し続けているストレスサインに気付いてもらえず周囲に対する不信感が募り、警戒を解けなくなってしまって些細なことですぐに臨戦態勢に入るのです。他人や他の犬も攻撃対象となるため、非常に危険な状態です。
5.元気消失や無気力化
ストレスがこれ以上ないほど高まり我慢の限界に達すると、無気力になることもあります。無表情になり、目から生気がなくなります。何にも興味を示さず、1日中ほとんど寝ているだけといった状態になります。
ここまでくると、愛犬を元の状態に戻すには相当の苦労と時間が必要でしょう。ストレスサインを察知したら、ストレスレベルが低い間に対処することが大切です。
犬のストレスを解消する方法
生理的ストレスの改善
生理的ストレスは、生きていくために最低限必要な条件が満たされていない状態であり、飼い主さんの最低限の責任であるといえます。
愛犬の状態に適したフードを適量食べさせ、常に新鮮な水といつでも排泄できる清潔なトイレが用意された状態を維持し、お住いの地域や生活スタイルに適した予防医療と適切な獣医療を提供した上で、日々の健康管理を心がけましょう。
物理・化学的ストレスの改善
人も犬も、周囲からの情報を視覚・嗅覚・聴覚・触覚・味覚から得ています。しかし、各感覚の性能や使い方には大きな違いがあります。そのため、人間にとって心地よい環境が犬にとっても心地よいとは限りません。
人間には普通の灯りが犬には眩しすぎ、心地よい音楽がうるさく、心を落ち着かせるアロマの香りが不快なこともあるでしょう。愛犬がストレスサインを発し初めた頃に、物理・化学的ストレスが加わった可能性の有無をよく検討しましょう。
心理・社会的ストレスの改善
最も難しい問題が、心理・社会的ストレスだといえるでしょう。犬の感情はとても豊かで、問題になるのは不安や恐怖だけではありません。知らない人や動物、場所に対しては緊張し、飼い主さんとの交流が減れば孤独を感じます。
飼い主さんの気持ちが他に向いてしまえば、寂しくもなるし嫉妬心も芽生えます。飼い主さんの都合もあるでしょうが、できるだけ時間を捻出し、愛犬との交流や散歩、遊びの時間を作り出しましょう。
また暮らしのルールをきちんと決め、飼い主さんご自身もご家族も、常に同じ基準で愛犬に接することも大切です。ぶれない方針が愛犬を安心させ、自信をつけることにつながります。
まとめ
ストレスは、多すぎることだけが問題なのではありません。ストレスがまったくないのも問題です。人間で例えると、定年退職でやるべき事がなくなった、子どもが自立して家を出ていったというような時にも、うつのようになる場合があります。
つまり、本人のやる気を後押しするような、気持ちを前向きにさせる原動力としてのストレスもあるということです。ストレスは、多すぎても少なすぎても心身の健康を害するのです。
愛犬のために、ストレスをすべて排除しようとする必要はありません。愛犬の様子をよく観察してストレスサインを察知し、愛犬が最も元気に暮らせる適正なストレス状態を保てるようにすることが大切なのです。