犬のトイレ歴史
犬にトイレを教えるという作業は、一般的な共通常識のように感じてしまいますが、ほんの50年前までは、ペットシーツも普及してなく、一部の室内犬は敷かれた新聞紙に排泄するくらいでした。それ以外の犬は外に繋がれ、所かまわず排泄をしていたものです。
そう考えると、まだ犬にトイレを教えるという行為は、ほんのここ50年未満のこと。本来、野生のままの犬、野良犬なら、気になった箇所すべてどこにでもおしっこをかけていいはずですが、日本という国で人と生きていくためには、それはできません。
つまり、犬にトイレを覚えさせるというのは、犬の本能よりも人側の都合を優先させているのだと、心に留めながら教えていただきたいのです。
子犬の定着問題≪心理1≫
子犬がトイレの場所を覚えるプロセスは三段階。導入、反復、定着です。
「導入」では、タイミングを見計らい、誘導して成功させて褒めることが大事です。「反復」は、体と脳に染みこむように、一連の流れを繰り返して教えること。そして「定着」では、サポートせずとも犬がスムーズにできること。この三段階に大きく分けられています。
ところが、大抵の失敗をしている方は、導入が何度か成功したところで、定着したと勘違いしてしまいます。そして、粗相を目撃しては叱るという悪循環が生まれます。さらには「わざと腹いせに粗相したに違いない」と犬を責めます。
こうなると、一度導入に成功をした子犬にとっては、なにをどうすれば正解なのかがわからない、混乱した状態になります。そうなると、導入からまたリセットをしなければなりません。
子犬期のトイレの教え方は、とにかく連れていき、成功させて褒めることを繰り返すのが成功のカギです。
成犬のマーキング問題≪心理2≫
成犬での粗相と言えば、とにかくマーキングでしょう。マーキングとは、縄張り意識から生まれる、おしっこをひっかける行為のことです。ここは自分のテリトリーだよ。ここでは自分がえらいんだよ。そんなメッセージが込められた行動です。
男の子ばかりにアルアルだと思われがちですが、女の子も縄張り意識があり、気が強いタイプの子は足をあげてマーキングをします。心理としては、上位に立ちたいという気持ちと、負けたくない、自分を認めてほしい、というものが挙げられます。これをやめさせるのには、なかなか一筋縄ではいきません。
なぜならそれは、それぞれの持つ個性やプライドに依存されていることに加え、飼い主との関係性も絡んでいるからです。成犬のマーキング問題をしつけで改善しようと思ったら、飼い主さんのマインドも同時にリセットする必要があり、ここにマジックはありません。
しつけの他には、去勢、避妊手術をすることでホルモンの分泌が抑えられますから、オペの後はあまりマーキングをしなくなったという子も一定程度います。
最後にちょっと姑息な手段かもしれませんが、しつけのし直しを行いつつ、外出先ではマナーパンツを使うというというのも、迷惑をかけないという意味では便利に使いたいものです。
シニアのおもらし問題≪心理3≫
シニアの場合には、色々な問題が複雑に絡み合っています。体の調子、寒さ、筋肉の衰え、持病、多飲、飲んでいる薬の副作用、痴呆などがありますね。こうした体の問題が大きく左右することは避けられないものです。
さて、その際の心理についてはどうでしょう。ステージによって気持ちは変わってくると思います。でも、こんなに長い間一緒に生きてきた家族ですから、家族が「またおもらししちゃったよ~」などと残念そうな声をあげれば、それは犬の心にも伝わります。
ここからは私の推測に過ぎませんが、多くのシニア犬を見ていると「申し訳ないな」という顔に見えます。サークル、移動ベルト、おむつなどの介護用品を使い、犬が悲しい思いをしないようにケアしていきましょう。
まとめ
いかがでしたか。犬の粗相について、それぞれのステージごとに分けてお伝えしてきました。
赤ちゃん時代、成犬時代、シニア時代。考えてみれば、わたしたち人も同じではないでしょうか。心理を想像し、理解しながらサポートしていきたいですね。