犬が飼い主を慰めてくれる理由
1.人間の感情の変化がわかる
犬の祖先はオオカミであり、群れで暮らしていました。
その中で食料を手に入れられない個体が、人間と一緒に暮らすようになったとされています。
食料を守る番犬になり、今度は人間と集団生活をすることになりました。
常に群れで生活していたため、仲間の感情の変化を読み取るのは欠かせなかったようです。
現代の犬も家族の一員が悲しんでいるとき、すぐに察するのは得意と思われます。
ただし、慰めるかどうかはその犬の性格次第です。
2.共感能力がある
かつて麻布大学で、犬の共感能力を調べる実験が行われました。
犬と飼い主が離れて座り、飼い主がリラックスしたときと暗算などのストレスをかけたときで、犬の方はどう反応するのかを調べました。
すると飼い主がリラックスしているときは犬も安心し、ストレスがかかったときには飼い主を何度も見て心配する、という結果が出たそうです。
群れで暮らすには相手の感情を察する必要があります。
そのため、哺乳類のほとんどは共感能力があるとされていますが、中でも犬は特に優れているようです。
3.涙への好奇心
犬は、涙というものがどんなものか知りません。
心配というよりも、普段見かけないものを見て興味が湧いているだけの可能性があります。
地面に知らないものが落ちていると口に入れて調べるのと同じです。
犬の感情の読み取り方
嗅覚
人間は恐怖心を抱いたとき、楽しい感情を抱いたときなど、感情によって汗のニオイが変化します。
人間にはわかりませんが、嗅覚が優れている犬はわずかなニオイの変化を読み取っていると考えられます。
また病気のときにも人間の体臭は変化します。
飼い主が体調不良で寝ているときにそばに来て心配する犬は多いです。
筆者の先代犬は家族が風邪をひいたとき、やけにニオイを嗅いでいたことがあります。
聴覚
犬の聴覚は優れていて、人間よりもかなり遠くの音を聞き取ることができます。
大きな音が苦手な犬は多いですが、耳が良すぎるのが原因でもあります。
近年の研究では遠くからの飼い主の声が聞き取れるだけでなく、声のトーンから感情を読み取れることがわかっています。
ハンガリーでは犬に飼い主の姿を見せずに声を聞かせ、脳波がどう変化するのか調査が行われました。
高いトーンを聞いたときに脳波は大きく変化し、低いトーンのときにはあまり変化しなかったそうです。
顔を見なくても飼い主が喜んでいるのか、悲しんでいるのかがわかるのです。
視覚
犬の視力はあまり良くなく、0.2~0.3程度と言われています。
近視の人ならわかると思いますが、かなりぼやけて慣れた場所でないとどこに何があるのかわからないくらいですね。
裸眼で生活するには難しい視力です。
飼い主を認識するときには視覚はあまり使わず、嗅覚や聴覚に頼っているようです。しかし表情を見分けることはできます。
オーストリアでは、犬に人の笑った顔と怒った顔の写真を覚えさせる実験が行われました。
笑顔を選ぶとおやつがもらえることを教えると、多くの犬が正解したそうです。
また怒った顔を選ぶとおやつがもらえると教えた場合、ほとんどの犬が正解したものの不快な反応を示していたようです。
飼い主を心配する犬の行動
顔を覗きこむ
『飼い主が落ち込んでいるときに、犬が顔を覗きこんできた』という情報はたくさんあります。
人間も気になることがあると、近くに様子を見に行くことがあります。
犬も同じように、心配して飼い主の近くに来ていると考えられます。
顔や手を舐める
犬が飼い主を舐めるのは母犬が影響していると考えられます。
出産直後に子犬の羊膜を剥がすとき、排泄を促すとき、食事を与えるときなど、母犬が子犬を舐める機会はたくさんあります。
成犬が飼い主を舐めるというのは愛情表現です。
甘えるときにも舐めますが、落ち込んでいる飼い主に「大好きだよ、私は味方だよ」と表現しているのかもしれません。
おもちゃを持ってくる
物を咥えて持ってくるというのは、レトリーバー系によく見られる行動であり、大切なものを渡すのは、余程信頼している相手である証拠です。
「遊んで元気出してよ」と誘っているのでしょう。
過去におもちゃを持ってきて褒められた経験があれば、これをやったら飼い主が喜んでくれると思ってやっていると考えられます。
体をくっつける
犬が体をくっつけたり背中を見せたりするのは、信頼できる相手だけです。
あなたは背中を任せても良い相手、そばにいるから大丈夫、という意味なのでしょう。
まとめ
若い犬よりも年をとった犬の方が飼い主の感情の変化に敏感なようです。
長く一緒にいると意思疎通がしやすくなるのは、人間と同じですね。
犬は感情豊かで、飼い主さんの変化にすぐ気づいてくれます。
しかし残念ながら、人間は犬に異変があっても気づかないことが多いです。
癒しになってくれる犬と長く幸せに暮らすために、普段から愛犬とコミュニケーションをたくさんとってあげてください。