飼い主が持つ「理想の犬像」とは
現代の日本のおいては空前のペットブームの影響で、犬や猫を飼育する人が増加しています。すでにたくさんの犬を飼育した経験がある人もいれば、初めて犬を飼育する人も多いでしょう。
どんな人も犬を飼育する前は「理想の犬」を思い描いていると思います。さて、その「理想の犬」とはどんなものでしょう。
飼い主(家族)に従順であり、健康で病気知らずで吠えたり噛んだりしない犬だったり、しつけが容易でトイレの失敗がなく散歩でも引っ張らない犬であったり。あるいはグルーミングや獣医さんを嫌がらない犬であったり、おとなしくて車が大好きでどこへでも連れていける犬であったり。
これらをクリアする犬であればどんなご家庭でも簡単に飼育することができます。こういった「理想の犬」に育てようとする飼い主さんのために、たくさんのトレーナーが本を出したり動画でレクチャーしていますね。
これらの理想をまとめると
- おとなしく飼い主に従順で、しつけがしやすい犬
- 健康管理やグルーミングに手間がかからない犬
というところでしょうか。
理想とは程遠い「現実の犬」
しかしそんな理想とは裏腹、現実の犬のお世話はかなり大変です。
まず、どの犬たちも個性の塊です。飼い主さんと主導権の奪い合いでパワーゲームに発展したり、ちょっとしたことでお腹を壊したり外耳炎にかかったり、何かに反応してけたたましく吠えたり噛みついて家具を壊したり。
トイレはあっちこっちにはみ出し、散歩に行けばぐいぐい引っ張りまくったり、家にいるときはひっきりなしに走り回ったりいたずらしたり、シャンプーも爪切りも断固拒否、獣医さんに行こうものなら大騒ぎ、車に乗せたら五分の距離でも車酔いでげーげー吐いたり。
思い描いていた暮らしとは程遠く、ちっとも思うようにいかないことがほとんどです。うまくいかないことに腹を立て、犬たちを「悪い子」と決めつけてしまうかもしれません。
そんな時は、ちょっと深呼吸して考えてみましょう。
人間の子どもたちもそれぞれ個性があり、何年もかけてゆっくり大人になっていきます。犬たちも同様に、はじめは何も知らない子犬で何年もじっくり学習して人との生活になじんでいきます。
しかも言葉も通じない別の生き物なのですから、飼い主の側が彼らの個性に合わせた付き合い方をしていくほうが良い場合もあります。
現実の犬と暮らすために意識すべきこと
犬種による傾向を過信しすぎないように
まず犬たちにもそれぞれ個性がある、ということをちゃんと考えてあげましょう。のんびりさんもいれば、せっかちな子もいます。
犬たちは長いブリーディングの歴史があり、犬種ごとにおおまかな特徴がまとまっています。しかしその犬種の犬たちがすべて同じではありません。この犬種だから〇〇なはず、という思い込みはNGです。
ゴールデンレトリーバーなどは明るく従順で、頭もよいため初心者でも比較的しつけをしやすい犬種と言われています。しかし遊び好きであり精神年齢が成熟するのに時間がかかるため、おとなしい子もいますが3歳を過ぎてもいたずらや破壊行動が収まらないという子もいます。
またシェパードなどは勇敢で賢く訓練性能が高いと言われている犬ですが、意外にナイーブでストレスに弱くすぐお腹を壊したりフードを食べなくなったりする子が多かったりします。
しつけもその子に合わせた方法を
しつけ方法についても同様に個性をよく見ていくことが大切です。とある犬にはこの方法がよく効いたけれど、この犬には通用しなかったということが多々あります。ほめられると喜んで覚える犬もいれば、ほめるよりタイミングの良い叱り方で覚える犬もいます。逆に一度叱られたら意気消沈してしまう子もいるでしょう。
この子はこの方法ではできなかったから悪い子だ、というのではなく、この方法ではうまくできなかったから別の方法を試してみよう、という飼い主側の試行錯誤する姿勢がとても大切です。
まとめ
犬たちは私たち人間とは別の生き物であり、もともとは別の生活スタイルで生きている動物です。ともに生活する上では、人間の都合やスタイルだけを押し付けるのではなく、彼らの生態を理解し個性を尊重していけるとお互いに良いパートナーとして暮らしていけるのではないでしょうか。