愛犬の行動や性格は飼い主さんの態度に影響されます
最近は犬の研究も進んでおり、習性や人との関係などについても新しい事実が分かってきています。
中には、以前は常識だと思われていたことが、実は間違いであったということなども出てきています。
その代表例が「犬は家族に順位を付る」とか「犬自身が最上位に立とうとする」といった考え方です。
特殊な飼育環境でない限り、犬には上下関係という概念はなく、自分が最上位に立とうとすることはないというのが、最近の常識です。
愛犬の問題行動は、犬が人間よりも上位に立とうとするからではなく、飼い主さんの犬への態度や接し方が悪影響を与えていることが多いのです。
今回は、愛犬に悪い影響を与えてしまう、飼い主さんのよくない態度や接し方をご紹介します。
飼い主さんが愛犬に対してしてはいけない態度
1.体罰を使ったしつけ
以前は、飼い主さんよりも前を歩こうとする、リードを引っ張るという場合は、チョークチェーンで首を絞めるといった体罰を使ったしつけが行われていました。
しかし今では、体罰を用いたしつけはよくないことだとされています。
飼い犬にとって、飼い主さんは親のような存在です。
愛犬と飼い主さんは、「愛情」と「信頼」という絆で結ばれていることが基本です。
体罰は、愛犬に恐怖心を植え付けるだけで、飼い主さんに対する信頼感を損なうことになってしまうのです。
恐怖によるしつけは身につかず、常に不安を抱えた神経質な性格をつくり出します。
2.感情に任せて叱る
しつけの基本は、褒めることです。もちろん「それはダメだ」と伝える場合には、叱ることも必要です。
しかし、実は叱るというのはとても難しいことなのです。それを知らずに、ただその時の感情に任せて叱りつけても、何の効果もありません。
叱ってもよいのは、飼い主さんの目の前でいけないことをやったときだけです。
叱るタイミングは、いけないことをやった直後の1秒以内です。タイミングを外すと、愛犬はなぜ叱られたのかを理解できません。
ましてや感情的に怒鳴りつけても、体罰と同様に恐怖心を植え付けるだけです。
3.心のこもっていない褒め言葉
先の2つは、叱る時の態度でした。今回は、褒める時のお話です。
小さな声でボソボソと「ヨシ」とか「いい子だ」といっても、おそらく愛犬は褒められたとは感じません。
普段よりも声のトーンを少し高めにして声を張り、心の底から褒めましょう。
愛犬は、言葉ではなく態度や様子から飼い主さんの言いたいことを察知します。
愛犬と向き合う時に飼い主さんの心が少しでも別の方を向いていると、飼い主さんの言いたいことは愛犬には伝わりません。
4.一貫性のない態度
犬は、言葉を文章としては理解できません。全て、飼い主さんの態度や様子から察知します。
そのため、同じことをしたのに日によって褒められたり叱られたり、というような一貫性のない態度をとられると、犬はどうして良いのかわからなくなり混乱してしまいます。
例えば、食事時間でもないのに飼い主さんの下にやってきて、「おやつ頂戴!」と吠えたとします。
何回か無視をして拒絶したにも関わらず、愛犬のしつこさに根負けして何回目かにおやつをあげてしまうのもよくありません。
愛犬は「しつこくねだればもらえる!」と学習するだけです。
飼い主さんだけではありません。一緒に住んでおられるご家族によって対応が異なる場合も同様です。
5.環境の変化に対する無配慮
犬は、環境の変化に敏感です。変化が生じたときには、愛犬に対する配慮が必要です。
特に新しい家族が増えた場合には、必ず愛犬への愛情が変わっていないことを示してあげましょう。
新しい家族とは、赤ちゃんや新しく迎えた動物などです。
新しい家族が増えると、飼い主さんの気持ちはどうしても新しい家族の方に向いてしまいます。
しかし、飼い主さんが新しい家族のお世話ばかりしていると、先住犬は飼い主さんの自分に対する愛情がなくなってしまったと感じてしまいます。
その気持ちに気付かずにいると、先住犬の心のバランスが崩れて問題行動につながることもありますので、注意してあげてください。
6.催促になんでも応えてしまう
しつけは褒めるのが基本で、叱ってもよいのは限定された場合のみと聞くと、愛犬からの要求を断ってはいけないと勘違いされる飼い主さんもおられます。
しかし要求になんでも応えてしまうのも、間違った態度の1つです。過保護や甘やかしは、我慢できない犬にしてしまいます。
愛犬が自分から飼い主さんの下へやってきて、なにか催促をした場合は、「ダメ!」と言って一旦無視します。
そして1〜2分後に、「オスワリ」とか「オテ」といった愛犬が得意な指示を出します。
上手にできた場合、ご褒美に要求をかなえてあげましょう。
まとめ
人間の常識や感覚だけで愛犬に接していると、よくない影響を与えてしまうことがあります。
愛犬にとっての飼い主さんは、親と同じような存在です。
信頼と愛情の絆を結び、人間社会の中で安心して暮らせるために必要なことを教えなければなりません。
愛犬に間違ったことを学習させたり、常に不安を抱えた神経質な性格にしてしまったりすると、愛犬はもちろん、飼い主さんご自身も苦しむことになるでしょう。
人間の常識や感覚だけではなく、犬の習性や感じ方を知ることで、愛犬との間にしっかりとした絆を結び、双方が快適に暮らせるようになりたいものです。