犬の身体の形と性格特性との関連を調査
ご存知のように犬は同じ種の中での身体的な特徴のバラエティが非常に豊富な動物です。これらの特徴の多くは人間による選択育種で作られて来たものなので、形態と行動の間には強い関連があり、研究も数多く行われています。
しかし身体の形態と犬の気質との関係については、今まであまり注目されず研究も行われていませんでした。この度ブラジルのサンパウロ大学の心理学者が、犬の身体の形態と性格特性について調査を行い、その結果が報告されました。
調査対象の犬を頭の形によって分類
この研究では171頭の家庭犬が調査されました。研究チームはこれらの犬の年齢、性別、不妊化の状態、犬種、頭の形、体高、体重によって分類しました。犬の性格特性については、刺激に対する反応を測定するための質問票への飼い主の回答から分析しました。
頭の形というのは、犬の頭蓋骨の幅と長さとの割合で3つのグループに分類したものです。具体的には、パグやフレンチブルドッグなど頭蓋骨の幅が広く長さが短い短頭種、グレーハウンドやドーベルマンなどの頭蓋骨の幅が狭く長い長頭種、レトリーバーやビーグルなどその中間の中頭種といった分け方です。
参加した犬のうち約3分の1は雑種犬だったため、頭蓋骨の最も幅の広い部分の数値を頭部を上から見た時の長さの数値で割った指数によって、3つのうちのどれかに分類しました。
刺激に対する反応についての質問票は、性格特性の中でも感情反応性について調査するものです。これは対象となる動物がさまざまな形のポジティブな刺激(トリーツや遊びなど)と、ネガティブな刺激(大きな音など嫌悪的な刺激)についてどれくらい強く反応するかを、それぞれの項目について飼い主が回答しました。
犬の頭蓋骨の長さは刺激への反応の強さと関連していた
データを分析した結果、特に注目を集めたのは犬の頭蓋骨の長さによる違いと性格特性の一部との関連でした。
短頭種の犬は他の2グループに比べてネガティブな刺激に対する反応性が高かった。しかし短頭種の犬も年齢が高くなるとネガティブな刺激に対する反応性は低下しました。
犬の体重については、体重の軽い犬ほどネガティブな刺激に対する反応性が高いこともわかりました。つまり、体重の重い犬はネガティブな刺激に対する反応性が低く、この傾向は頭蓋骨の長い犬ではより顕著でした。
年齢については、全ての犬で年齢が若いほどネガティブな刺激に対する反応性が高くなっていました。
これらの調査結果は犬の頭の形態の他に、年齢と体重が犬の感情反応に影響を与える重要な要因であることを示していると研究者は述べています。前述したように、調査対象の犬のうち約3分の1は雑種であることから、これらの違いが単純に犬種によるものではないことも分かりました。
まとめ
犬の頭蓋骨の長さ、体重、年齢が、刺激に対する犬の反応性に影響を与える要因であり、短頭種の犬はネガティブな刺激に対して強く反応するという研究結果をご紹介しました。
この研究では因果関係については検証されていませんが、今後さらに研究が進められるとまた新しいことが分かるかもしれませんね。
犬種だけでなく頭の形や身体の大きさによってこのような傾向があると一般の飼い主も知っておくと、愛犬の特性を理解する上でも助けになる可能性があります。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.beproc.2022.104606