猟犬の役割
日本には古くから「一犬・二足・三鉄砲」という言葉があります。
この言葉には「狩猟には猟犬が必須である」という意味が込められています。
これは、優秀な猟犬と一緒に狩猟をすることの醍醐味を表現した言葉なのだと思います。
猟犬は、主に2種類に分けることができます。「獣猟犬」と「鳥猟犬」です。
獣猟犬ってどんなことをするの?
獣猟とは、イノシシ猟などを指します。
イノシシを発見した猟犬は、獲物との距離を一定に保ちつつ追跡します。
そして「ここに獲物がいるぞ!」と、パートナーであるハンターに吠えることで知らせます。獲物の正確な位置を知らせるためです。
例えば、イノシシ猟では「巻き狩り猟」という方法があります。
ハンター(人)と猟犬が協力して行われます。
多数で四方から獲物を取り囲み、獲物を追い詰めます。
追い詰めたところで鉄砲を持つ「射手」と呼ばれるハンターが撃ちます。
犬が獲物に咬みつくことで捕らえるという獣猟は、法令によって禁止されています。
「犬が咬みついて獲物を捕らえる」というイメージを持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
環境大臣が禁止する猟法には、「犬に咬みつかせることのみにより捕獲等をする方法又は犬に咬みつかせて狩猟鳥獣の動きを止め、若しくは鈍らせ、法定猟法以外の方法により捕獲等をする方法」とあります。
鳥猟犬ってどんなことをするの?
鳥猟犬の役割は、ハンターのサポートをすることです。
鳥を発見したら「伏せ」をすることでハンターに鳥の存在を知らせるという役割があります。
吠えたり追跡したりすると鳥に逃げられてしまうためです。
このような役割を持つ鳥猟犬を「ポイントドッグ」と呼ぶことがあります。
発見した鳥を驚かせて飛び立たせ、鳥の居場所をハンターに知らせるという役割があります。
飛び立ったところをハンターが銃で撃ち落とすのです。
このような役割を持つ鳥猟犬を「フラッシングドッグ」と呼ぶことがあります。
そして、ハンターが撃ち落とした獲物を口にくわえて持って来るという役割もあります。
このように鳥猟犬には主に3つの役割があり、基本的には一頭にひとつの役割が与えられます。
3つ全ての役割を一頭の犬が担う場合もあり、その場合は「HRP犬種」と呼ばれるかなり優秀な鳥猟犬が担います。
猟犬に向いている犬種
獣猟に向いている犬種
- 身軽であること
- 俊足であること
- 勇敢であること
- 適度な追い鳴きができること(ただ吠えれば良いというわけではないため、適度さが必要)
このような犬が獣猟に向いているとされています。
日本では、ノウサギやユキウサギの猟にはビーグルが主に使われています。
イノシシやニホンジカの猟には、ハウンドや日本犬(中型)が使われています。
鳥獣に向いている犬種
- 人と共同作業をすることが好きなこと
- 指示を待つことができる我慢強さがあること
- 攻撃性が低いこと
- 水場や水中が得意なこと
- 泳ぎが得意なこと
- 厳しい寒さに強いこと
- 冷たい水の中にも耐えられること
- 水を弾く性質のあるダブルコートであること
- 撃ち落とした鳥をそっと口にくわえることができること
このように、鳥猟犬には求められる内容が多くあります。
前述のポイントドッグにはイングリッシュポインター、フラッシュドッグにはイングリッシュスプリンガースパニエル、口にくわえて持って来る役割にはラブラドールレトリバーが向いているとされています。
3つ全ての役割を担うことができる優秀なHPR犬種としては、ワイマラナーが有名です。
猟犬を育てるコツ
- 一般的なしつけを徹底すること(「待て追え戻れ」は必須)
- 技能に応じた訓練をすること
この2つが必須だとされています。
訓練の方法や育てるコツは、地域によって異なります。また、ハンターによっても様々です。
コツをひとつ挙げるとすると、「毎日の散歩」があります。
散歩や運動は犬に好奇心を持たせるために必要なことだからです。
同じコースばかりではなく、様々な場所に行くことで人や他の犬に慣れさせることも大切だとしています。
最も大事なことは「子犬の段階から十分な愛情を持って丁寧に育てること」だそうです。
ハンター(人)と猟犬が一体となって協力して行われるのが狩猟だからです。
信頼関係が不十分では、安全な狩猟は行われないのです。
まとめ
猟犬の役割・猟犬に向いている犬種・猟犬を育てるコツを解説しました。
少しでも猟犬に興味を持っていただけたでしょうか。
私は子供の頃、近所にたくさんの猟犬が飼われていました。
当時は放し飼いで町を自由に歩く猟犬もいました。
仕事をする姿は見たことがありませんが、普段は家庭犬と変わりなく、人懐こくて子供にも愛情深い犬だという印象を持っています。