コロナ禍で留守番が減った犬のその後の分離不安
コロナ禍は人間だけでなく、一緒に暮らすペットたちの生活にも大きな影響を及ぼしました。ペットにとって最も大きな変化は、パンデミックの期間中は飼い主が彼らと過ごす時間が増えたことでしょう。
しかし生活が少しずつ元の状態に近づき、飼い主は再び毎日仕事に出かけペットの留守番の時間が長くなっています。犬は人間が一緒にいない時に長時間吠える、粗相をする、家具などを破壊するといった分離不安に関連する行動を見せることがあります。
飼い主との時間が短くなった現在、分離不安とそれに関連する行動のリスクが高くなっていると考えられます。
イギリスの動物保護団体ドッグズトラストの調査研究部門は犬の飼い主を対象にして、留守番時間の長さと分離不安に関連する行動についてアンケート調査を実施しました。
ロックダウン前後で犬の行動を比較する調査
アンケート調査は2020年2月(=ロックダウン前)2020年5月〜7月(=ロックダウン中)に実施され、さらに2020年10月(=ロックダウン後)にフォローアップ調査が行われました。アンケートはオンラインで行われ4,670人が回答しました。
回答者のうちロックダウンの前から留守番の時間が無かった犬、生後12ヵ月未満の犬は統計から除外されました。最終的にベースラインとなる2月からフォローアップの10月までのデータが揃った1,807頭のデータが分析されました。
回答者の犬の平均年齢は4.25歳で、71.9%の犬が一頭飼いでした。オスとメスの割合は約半々で、86.1%が不妊化手術済みでした。
分離関連行動についての各データ
データを分析した結果、ロックダウンとロックダウン解除を経た期間に個々の犬の行動は大きな変化を見せていました。変化のうち目立ったのは以下のようなものでした。
- ロックダウン前に分離関連行動があった犬のうち55.7%は10月のフォローアップ時には分離不安が無くなっていた
- ロックダウン前に分離関連行動が無かった犬のうち約10%は10月に分離関連行動が発症した
- 以前は分離関連行動がなかった犬の発症リスクは高齢の犬ほど高かった
- 分離関連行動発症のリスクは、ロックダウン前〜最中の留守番時間の変化と関連していた
- ロックダウン中の留守番時間が以前より短くなった犬は、10月の発症リスクが最も高かった
- 全体の分離関連行動の有病率はロックダウン前22.1%、10月のフォローアップ時は17.2%に低下した
この調査結果は、飼い主の日常生活の変化が犬の分離不安に強く関連していることを示しており、分離関連行動への理解につながると考えられます。
まとめ
イギリスでの調査で、パンデミックによるロックダウン中に以前よりも留守番の時間が大きく減少した犬ほど、再び留守番が長くなった時に分離不安に関連する行動を示すリスクが高いという調査結果をご紹介しました。
分離不安に関連する行動は吠える声が近所の迷惑、居住空間の破壊など飼い主の負担が大きく飼育放棄の原因につながりやすいものです。そして何よりも犬の情緒がネガティブな状態にあることを意味するため、犬の福祉にとって大きな問題です。
世界中でこれほど大規模に犬の飼い主の日常生活が激変する機会は今までなかったので、この調査結果は今後の対策のために貴重なものです。今回は具体的な対策までは言及されていませんが、今後さらに調査研究の報告があると思われ、続報が楽しみです。
《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani12040482