犬の行動には必ず理由があります
犬は、自分で自分の体を舐めて体を清潔にします。それがセルフグルーミングです。
したがって、排泄物が付着しやすいお尻の周りも、自分で舐めて綺麗にします。
しかし四六時中セルフグルーミングをするわけではありません。
飼い主さんが気付くといつもお尻を舐めているという場合は、注意が必要です。
行動には、必ず原因や目的、つまりその行動を起こした理由があります。
そしてその内容は、実にさまざまです。
過去に良い思いをした経験を元にまた良い思いをしたくて、ということもあれば、不快感を和らげるため、ということもあります。
また、体に潜んでいる病気から誘発された行動かもしれません。
今回は、愛犬が自分のお尻を頻繁に舐めている場合に考えられる理由や、それをそのまま放置した時に考えられるリスクについて解説します。
犬がセルフグルーミング以外で自分のお尻を舐める理由
1.残便感
一所懸命にいきんで排便をしたのに、なんかスッキリしない。まだうんちが残っているような気がする、という経験はありませんか。
犬の場合も同じで、排便をしてもなんだかスッキリとしないということがあり、その残便感からお尻が気になってしまってしきりに舐める場合があります。
特に高齢になると、肛門括約筋の力が衰えてキレがなくなり、不快感が残ることが増えるようです。
2.むず痒い
肛門の周囲は被毛も薄くなっているので、刺激に弱い部分でもあります。
そのため、虫に刺されたとかお尻周りの皮膚が炎症を起こしているような場合に、むず痒さからお尻の周りをよく舐めることがあります。
痒みの強さによっては、舐めるだけではなく、噛むようなこともあります。
3.不快感
犬の腸内に回虫、鞭虫、サナダムシなどが寄生している場合、肛門周囲の炎症や下痢などの症状があらわれます。
また、寄生虫の卵や断片が肛門の周りに付着することもあります。
寄生虫以外にも、お尻の周りに生じる病気もあります。
このようなお尻周りの不快感が原因で、頻繁にお尻周りを舐めていることがあります。
4.心因性の行動
肛門の周囲とは少しずれていますが、尻尾や尻尾の付け根、臀部などをいつまでも舐めている場合は、強迫性障害から生じた常同行動である可能性もあります。
不安やストレスが原因となり、同じ行動を意味なく続けるという症状です。
舐め続けることを放置するリスク
1.残便感を放置するリスク
たまたまその時はうんちのキレが悪く残便感が残ったということもあるかもしれません。
しかし、排便の都度残便感を気にしているようであれば、便秘の症状である可能性があります。また、去勢手術をしていない高齢の犬の場合、前立腺肥大や前立腺腫瘍の可能性もあります。
便秘の原因を調べてきちんと対処しないと、体重減少、脱水、食欲不振になることがあります。重度の便秘になってしまうと手術が必要になることもあります。
たかが便秘と軽く考えずに、動物病院で診てもらいましょう。
2.むず痒さを放置するリスク
痒みは、掻くことでさらに痒みが増していきます。
つまり、掻けば掻くほど痒くなるのです。
そのため、舐め続けることで痒さが強くなり、噛んだりお尻を地面に擦り付けたりとどんどんエスカレートしていきます。
その結果、お尻の周りの皮膚に傷が付き、そこから細菌感染してさらにひどい状況になっていく可能性があります。
3.不快感を放置するリスク
お尻の周りに不快感を感じる原因にはいくつかあります。
内部寄生虫の場合、子犬だと下痢や嘔吐だけではなく、成長不良の原因になります。
人も含めた他の動物への感染源にもなりますので、駆除することが大切です。
また、肛門腺（肛門嚢）に分泌物が溜まっている場合は、放置することで肛門嚢炎となり、進行すると皮膚が自壊して膿が出てきてしまうことがあります。
また会陰ヘルニアの場合、尾の斜め下の辺りが膨らんだように見えます。ヘルニアの穴から直腸や膀胱などの臓器があるべき場所におさまらずにはみ出してしまう病気で、中に戻らなくなる嵌頓ヘルニアを引き起こすと命にかかわります。
皮膚炎も含めて、愛犬が不快感からお尻周りを舐め続けていると感じた場合も、迷わずに動物病院で診察してもらうことをおすすめします。
4.心因性の行動を放置するリスク
特に痒みや不快感を感じているわけではなさそうだし、目視でも異常が確認できない。
でも愛犬を見るといつもしっぽを追いかけ回したり、お尻を舐め続けている…。
そのような場合は、心因性の問題行動が疑われます。
放置してしまうと問題行動がどんどんエスカレートしていき、愛犬も飼い主さんも、共に苦しむことになります。
心の病気も、体の病気と同じように早期発見・早期治療が大切です。
動物病院で相談し、行動の原因となっているストレスを見極め、取り除いてあげることが大切です。
まとめ
愛犬がお尻を舐めていてもセルフグルーミングの一環だと考え、特に気にする飼い主さんは少ないかもしれません。
実際に、セルフグルーミングの一環として舐めているだけであれば、気にする必要のない行為です。
しかし、いつ見てもお尻の周りを舐めているといった場合は、セルフグルーミング以外の理由が疑われます。
もちろん、いつも舐めている理由はその犬によりさまざまです。しかし、そのまま放置してしまうと状態を悪化させる可能性があります。
愛犬の些細な異変にもすぐに気付けるのは、この世で飼い主さんだけです。
ご自身の違和感に自信を持ち、すぐにかかりつけの動物病院で診てもらうようにしてください。
