犬の感情、表現
それぞれに姿たちは違っていても、すべての動物は感情を持ち、表現をする生きものです。ですから、犬が「嫌だな、やめて」といった感情を持つことも当然のことですね。
飼い主のあなたもそうであるように。
決めつけという名のメガネ
「犬は上下関係を大事にするし、家族内で順位を付けたがる習性を持つ。だから、目上の者に歯向かうなどないはずだ」といった古風な説にとらわれているうちは、犬からのメッセージを正しくキャッチすることができません。
一度、その決めつけという名のメガネをはずして、犬を裸眼で見てみましょう。うちの犬は何を嫌がるのか。もしかしたら困っているけどガマンしているのかもしれない。他の犬では聞いたことがないけど、うちの犬はこれをされるのが苦手かもしれない。それはなぜ?など、これまで見えなかったものが見えてくるはずです。
犬が『やめて』と伝えている行動や態度5選
1.体がこわばり、後ろに引き気味になる
飼い主の行動に拒否感を持つと、犬はまず体を硬直させます。その時点で気付かずに飼い主がその行動を続けると、犬は体をさらにこわばらせ、全体的に体を後方に引く、または横に倒します。
つまり、不快な行動をとっている飼い主から少しでもリーチを取るようにします。その際、しっぽは丸まり股の中へ入れ、額の筋肉も緊張状態にあり、耳は後方へ寝かすようにしているでしょう。たれ耳の犬であっても、耳の付け根が後方へ傾斜、またはぴょこんと立つようにしている様子が見られます。
2.顔をそむける、前片足をあげる
1では、それでもまだ飼い主の顔を見ているか、チラチラと意識してちょっと見ていますが、これでも「やめて」という意思が伝わらない場合は、顔をグっとうつむくように背けます。これは、グッと、というところがポイントで、もう全視界を遮ってしまうように、グッと下方横に背けます。
この動作と同時に、片足をあげる犬もいるでしょう。片足をあげる仕草は、犬の持つ本来の習性。犬は前足から走り出しますので、最速で逃げる準備をしている動作にあたります。感情としては人で言うところの「ドン引き」といったところでしょうか。
3.逃げまわる
これはもう単純ですね。人の子供でもそうですが、走り回って逃げるというのは、相手に歯向かわず、争わずに「やめて、嫌なんだ」といった意思を伝える最強の手段です。
さらに追い打ちをかけてしまうのは、飼い主がそれを追いかけるという行為。愛犬が何に対して嫌がっていたとしても、すでに拒否感でいっぱいの犬が、飼い主に追いかけられ、いよいよ追いつめられるとどうなるでしょうか。
4.吠える、唸る、歯をむきだす
逃走することで「やめて」という意思が伝わらない場合、犬はアクションを起こします。敵意を持って吠える、低く重厚な音を発して唸る。また、鼻の上にしわを寄せ、歯をむきだすという行動を取るかもしれません。
ここで飼い主がとってはいけない行動は、「対抗して激しく叱る」です。普段温厚な犬がここまでの手段でメッセージを出すというのは、よほど嫌な状況、または嫌な行為なわけですから、そのアクションを抑え込むように叱ってはいけません。
もちろん、叩いたり大きな音で恐怖感を植えつけるのはもってのほかです。飼い主はそうした対抗よりも、もっと、この事態の本質に目を向けなければいけません。なぜ犬は嫌がるのでしょうか。
5.飼い主を咬む
犬が「いやだ」を伝えるための、Maxな手段です。ここは説明するまでもなくご想像にかたいですね。このパターンでこじらせてしまうのは、咬んでしまったあと、飼い主がひるむ場合です。極端な例ですが、咬まれても動じない、引かない姿勢を取るといった覚悟、信念とも呼べる強い意志があれば別ですが。
空中を咬むような、から咬みをする、また本気で飼い主を咬んでしまう。その瞬間に飼い主がひるんでしまうと、犬にとっては、咬んだら→嫌なことをされなくなった。という方程式が脳にインプットされます。
これを繰り返していくうちに、上記の1~4をショートカットする癖が付きます。嫌なことがあったら→咬むと最速で終了する。といった飼い主にとっては不本意な結末にいたりますので注意が必要です。
それを受けて、飼い主はどうするか
犬が何に対して嫌がっているのか。この理由に着目することが大事です。「やめて」の対象を知り、「やめて」から、「まあ、我慢できるかも」というように、徐々に慣らしていく手順を踏みましょう。
もちろん、やめてのアクションが大きいほど(例えば上記のうち3、4のような)段階を踏んでいく必要があります。同時に、なぜ愛犬はその行為を「やめて」と拒否感を感じてしまうのか、理由について探り当てることが鍵になります。
まとめ
さて、いかがでしたか。犬が飼い主に『やめて』と伝えている時の行動や態度5選をお送りしてきました。これは程度の問題でもあります。何が何でも飼い主のやること、指示することについては絶対服従をさせる、ではなく、犬からの「やめて」のサインをキャッチして、早めに対処するのをおススメします。