ある日突然、飼い主が怖い!
愛犬とふと目が合った後。なぜか、スゴスゴと体を丸めながらソファの下にもぐり込んでしまった。いつもなら手元に駆け寄ってきて、撫でてもらいたがるはずなのに…。
こんな経験をした方はそう多くはないでしょうが、稀にあることなのです。飼い主に近づくのを拒むばかりではなく、さらに体がブルブルと震えていたり、普段は温厚な性格の子が、急に歯をむきだしにして唸ったり、空中を咬むような仕草をしたりする、などということも。
こうした愛犬の行動を目にし、一番はじめに飼い主が考えるのは、体調が悪いのかな?といった心配ですね。
しかし、それだけが原因ではない可能性があるとしたら、いったいどんなものでしょうか。
その原因に共通すること
愛犬が、飼い主を怖がるようになる。その理由はいくつか考えられますが、突発的なものにしても、蓄積したものにしても、どちらともに共通するのは、なんらかの形で恐怖に感じた感情と、飼い主が結びついてしまったという事実です。
怖がる理由3つ
ここからは、飼い主を怖がってしまう理由3つとその対処法について、具体的なケースを見ていきましょう。
1.肉体的な暴力による支配
何度でもハッキリと申し上げますが、犬のしつけと称した暴力については、絶対にNGな行為です。思いっきり気の強いタイプの犬にとって、短絡的な暴力は反骨心をあおるだけですが、それ以外の多くの犬は、飼い主からの暴力的行為を恐ろしいと感じます。
通常、犬の記憶は単発的記憶と、長期的記憶の二つに分けて脳にインプットされますが、あまりにも大きな恐怖感情が心に焼き付いてしまえば、それは一時的なものでは済まされません。
心の深部にまで突き刺さったショックから、いわゆるトラウマとして刻み込まれてしまうでしょう。
2.衝撃+印象
ある一瞬の衝撃が、印象とともに恐怖心として刷り込まれることもあります。
例えば大きい雷や地震、火事等がそれにあたりますが、ただでさえ大きな衝撃の中、パニックを起こした犬が、その出来事の恐怖印象と飼い主とを結びつけて、脳に記憶してしまうことがあります。
衝撃の対象はこれらの天災等に限らず、不運にも交通事故や犯罪被害に巻き込まれてしまった場合でも同じです。とにかくそうした衝撃に遭遇してしまった場合、まず飼い主がやるべきことは犬を守るという行動です。
一緒になってパニックを起こしたり、動揺や焦燥をあらわにして犬に接すると、犬の目からは、衝撃的な恐怖印象=飼い主として重なって見えることがあります。こうした出来事があるとしたら、飼い主の方に思い当たる節がなくても、怯えるような行動を取ることも考えられます。
3.負の感情の押し付け
犬は不安が大の苦手です。いつだって安心して生きたい動物ですから、不安なできごと、不安な感情を避けたがる性質を持っています。不安定な感情というのは負のエネルギー。ヒステリック、怒り、恨み、焦りなどを指します。
犬はこれを発している人を避けるものですが、問題はこの感情を犬に押し付けた場合です。いわゆる「八つ当たり」や「とばっちり」というものがこれにあたります。ネガティブな感情を犬にぶつけてしまっては、恐怖に感じるのは無理もありません。
例えばこれが、人の親子、兄弟間であったとしたら、言い返したり、その態度はおかしいと指摘したしなめられるでしょうが、犬ではそうはいきません。
対処法
犬が飼い主に恐怖を感じる、というのは、基本的にはあってはいけないことです。なぜなら、飼い主というのはいつでも、犬から熱い信頼と尊敬をされる存在であるべきだからです。
犬が飼い主に怯えるようになるには、それ相当の理由があるに違いありません。
ですから、その原因、理由を見つけることから対処が始まります。上記の3つのうち、いづれかに当てはまるとか、または近しいできごとがあったならダメージの修復をします。とはいえ、心の奥底にいったん染みついてしまった恐怖を、取り除く作業は一筋縄ではいきません。
「あ、あれがダメだったのかな」と後になって気づいたとしても、「さっきはごめんね~」と犬に急にベタベタしたり、媚びたりするのはかえって逆効果。不安定の上書きをするだけですのでやめましょう。
ではどうするか。犬があなたを怖がっていたとしたら、必要なのはなにもしない時間です。ただひたすら、犬の目を見ないように、犬に感情を向けないように、あなた自身が安定して普段どおりの暮らしをすることです。
そうしているうちに、犬の方からあなたに近づいてくる瞬間が来ます。そのとき、安定した状態で犬に接することがとても大事。少しずつ犬は安心を取り戻し、いつもと同じように心を寄せてくれるようになります。それが恐怖ダメージの修復に、最も適した方法です。
まとめ
いかがだったでしょうか。犬が飼い主のことを怖がるようになる原因と、3つの理由、対処法をお伝えしてきました。
どうか、あなたの犬が恐怖を感じることなく、この先も健やかに暮らすことを願っています。