しつけはエゴか
犬のしつけとは、言ってしまえば「野生の本能をできるだけ抑えて、人との生活になじむように教えること」ではないでしょうか。これを、人のエゴじゃないの?人の勝手を犬に押し付けるなんて、と捉える方もいらっしゃるでしょう。わたくしも一定の共感をいたします。
しかし、現実的に考えてみてください。犬になにも教えず、犬を犬らしく本能のままに一緒の空間で暮らすことを。果たして本能のままに育った犬は、共生しやすい犬になるでしょうか。
正直に申しますと、非常に扱いづらく手に追えない犬になります。そうなってしまったために、飼いきれず放棄された犬をたくさん見てきました。引き取り手がなかなか見つからない理由のひとつには、人とコンタクトが取ることができないといった面もあります。
しつけの本質
犬に人の社会で快適に過ごしてもらうためには、人社会のルールやマナーを教えるというのが大事なキーです。共同生活の中で喜びを分かち合うことは、犬と人の共通した古来からの結びつきが根っこにあります。
犬と人はちがう生きものですが、長い歴史の中で人の社会変化に合わせ、犬の生態も変化し続けてきました。ですから、現代においては現代の人の生活スタイルになじむように犬に教えること。これが犬のしつけの本質ではないでしょうか。
ピックアップ!しつけ10選
それでは、犬が暮らしやすくなるために教えるべきしつけを10選一気にご紹介します。
1.おいで(呼び戻し)
2.身体全部を触らせる(足を拭かせることや、目ヤニをとるなどを含む)
3.抱っこ(中、大型犬では抱き寄せる)
4.アイコンタクト
5.待て
6.オスワリ(または、フセでも)
7.トイレ
8.引っ張りすぎない散歩
9.過度に吠えない、飛びつかない
10.咬まない
「え?こんな基本的なこと?」と感じられたでしょうか。そうなのです。犬のしつけでマストハブなのは、こうした基本のキ。この10のしつけをできるだけ早期に教えることで、犬との暮らしがググっと楽になるのです。意外と簡単でしょう。
あなたの愛犬がこれらをすでにマスターしているなら、それはあなたががんばって犬に教えた努力の証明と言えます。同時に、犬もあなたにほめてもらいたいという気持ちから、必死に理解を重ねてきた結果とも言えますね。ここまでできれば、飼い主と愛犬とは強いきずなが結ばれているということ。おふたりに拍手を送ります。
覚えさせないとどうなる?考えられるトラブル
さて、この10のしつけ。覚えさせないと、どのようなトラブルに発展する可能性が考えられるのでしょうか。項目ごとにコンパクトにお伝えします。
1.「おいで」は、一生もの。人の指示で手元に来ることを教えないと、自分の都合の良いときにしか来ない犬になります。
2.「身体全部を触らせる」ことができなければ、清潔を保てません。また、病気やケガの発見が遅れます。
3.「抱っこ」で大事なのは、抱っこから解放する瞬間です。犬の意思で解放するくせが付くと、自分勝手な行動意思を強める結果に。
4.「アイコンタクト」は見落としがちなしつけです。でも、これができなければ、指示を無視しがちな犬になります。
5.「待て」を教えるというのは、愛犬の命を守るしつけと言っても過言ではありません。誤飲、事故へつながる危険性があるからです。
6.「オスワリ」を覚えさせないと、落ち着きがなくいつもウロウロとして、おさまりどころのない不安定な犬になる傾向があります。
7.「トイレ」は教えなければ、覚えません。犬って勝手に覚えるでしょう、オムツがあるから、と先延ばしにしても良いことはありません。
8.「引っ張りすぎない散歩」犬のサイズが大きくなるほど必須項目です。飼い主の転倒、足腰の負担と続き、やがて散歩自体が困難に。
9.「過度に吠えない、飛びつかない」これを教えないと、社会から歓迎されない犬になります。近隣に迷惑をかける犬になります。
10.「咬まない」咬むのは人や犬、だけではなく、他者の持ち物、服等を咬む。ケガや破損は飼主の管理不足として、訴訟の対象となります。
まとめ
しつけの10項目の必要性をご理解していただけたと思います。さて、最後に、冒頭でお話した〇〇の答えはもうお分かりですね。これらのしつけを通して、私たち飼い主が犬に伝えるべきこと。それは責任でも、道徳でも、順位でも、権威でもありません。
答えは「愛情」です。シンプル過ぎるかもしれませんが、結局のところ、愛情がなければ1~10を犬に教えることなどできません。これらすべては、犬が飼い主とのきずなを育み、社会、他者から歓迎されるために欠かせない、愛情のしつけ10項目なのです。