ドッグスポーツ『アジリティ』が膝の怪我のリスク因子になる?研究結果と対策

ドッグスポーツ『アジリティ』が膝の怪我のリスク因子になる?研究結果と対策

前十字靭帯断裂は犬に多く見られる膝の怪我です。人気のドッグスポーツであるアジリティがこの怪我のリスクを高めるという研究結果とその対策についてご紹介します。

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膝の怪我リスクと身体活動の関連をリサーチ

トンネルをくぐり抜けたボーダーコリー

数あるドッグスポーツの中でも人気の高いアジリティですが、実は他のスポーツに比べて怪我のリスクが高いものでもあります。

なかでも前十字靭帯断裂はアジリティやフライボール(アジリティに似たハードルのジャンプとボールキャッチを組み合わせた競技)によるリスクが高いと考えられています。

犬の脚の太ももの骨と脛の骨は、前十字靭帯と後十字靭帯によって結びついています。この前十字靭帯が切れてしまうのが前十字靭帯断裂です。危険因子として知られているのは、犬種、体重、加齢、不妊化手術の時期があります。

この度アメリカのワシントン州立大学獣医学部の研究者が、前十字靭帯断裂の危険因子として、アジリティなど身体活動を検証したリサーチ結果を発表しました。

前十字靭帯断裂を経験した犬とそうでない犬を比較

ドックダイビングをするラブラドール

リサーチはアジリティ競技に関連するSNSアカウントを介したオンラインアンケート形式で行われました。

最終的にリサーチの対象となったのは、アジリティ競技に参加しており前十字靭帯断裂を患っている(または過去に患った)犬260頭と、この怪我を負ったことのない1,006頭のデータでした。

前十字靭帯断裂を患ったことのあるグループへの質問は、怪我をする前に犬が参加していたアクティビティ、怪我の治療、飼い主についての基本事項などがありました。

怪我をしたことがないグループへの質問は、犬が参加しているアクティビティ、飼い主についての基本事項についてでした。

犬の身体活動と前十字靭帯断裂の関連についての調査であるため、犬種、性別、不妊化状態などについての質問項目はありませんでした。

リスクの高い身体活動と低い活動

フライボールをする犬

アジリティ競技に参加していて前十字靭帯断裂を経験したことがある犬のデータからは、次のような傾向が示されました。

  • アジリティ初級または中級者レベルが多い
  • 競技会に出るのは1年に10回未満
  • 米国アジリティ協会の競技会に参加している犬が多い
  • 国際アジリティ協会の競技会に参加している犬が少ない
  • アジリティの他にフライボールも行っている
  • アジリティの他には短い散歩やランニング程度の活動

初級〜中級者に怪我が多いのは、競技の後に身体を整えるコンディショニング運動が十分でない可能性があります。参加している競技会の違いによる怪我の数の差は、競技会の地面の材質の違いが考えられます。

フライボールはハードルを飛び越えてボールをキャッチする競技なので、アジリティと似た身体活動ですが、この競技に参加している犬の怪我の率はアジリティだけの場合の約2倍に上りました。

アジリティの他の身体活動が短時間の散歩やランニングだけの場合、体幹部分が鍛えられないため怪我の増加につながっている可能性があります。

また、前十字靭帯断裂の経験がない犬が行っている身体活動は、プールに飛び込むドックダイビング、ノーズワーク、ルアーコーシングなどがありました。これらは前十字靭帯断裂につながるリスクの低い活動と言えます。

アジリティ競技を行う場合、競技やトレーニング後のコンディショニング運動、体幹を鍛えるための筋力トレーニングを取り入れることで、怪我のリスクを低下させると研究者は述べています。

まとめ

ハードルを飛ぶオーストラリアンシェパード

アジリティ競技はノーズワークやルアーコーシングなどに比べて前十字靭帯断裂につながるリスクが高いこと、アジリティをしている犬の中でも怪我をした犬の傾向、怪我を防ぐためのコンディショニング運動と、体幹トレーニングの重要性についての研究をご紹介しました。

ドッグスポーツは犬の運動になるだけでなく、飼い主と犬が一緒に取り組むことで感情的な繋がりが強くなるなど、良い面が強調されることが多いものです。しかし、人間のスポーツと同じで怪我のリスクは当然あるので、このようなリサーチ結果が報告されるのは対策を立てるためにもありがたいことです。

《参考URL》
https://rdcu.be/cHmVD

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