IT企業の成功者が設立した動物保護基金
アメリカには大小たくさんの動物保護団体がありますが、それらの団体を財政や運営面でサポートしている『Maddie’s Fund マディー基金』という財団があります。
マディー基金の創設者は、シリコンバレーのIT企業ピープルソフトやワークデイなど6つの企業を設立したデイブ・ダフィールド氏です。
ダフィールド氏はピープルソフトを立ち上げた際に、愛犬のミニチュアシュナウザーのマディーに向かって「この事業がうまくいったら、そのお金をお前の仲間たちのため使うよ」と約束したそうです。
ダフィールド氏の事業は大成功を収め巨額の財を成しました。マディーはその時すでに天国にいたのですが、ダフィールド氏は約束通り動物保護団体をサポートするために3億ドル(現在の日本円では約330億円)の基金を立ち上げ、マディーの名を冠しました。
現在、アメリカの動物保護活動においてマディー基金の名前を見ないことがないほど、同基金の存在は大きなものになっています。このマディー基金のダフィールド氏が開始した新しい支援があります。
名門大学による動物行動研究所設立を支援
ダフィールド氏は現在マディー基金とは別に「デイブ&シェリル・ダフィールド財団」を運営しています。先ごろ、アメリカのコーネル大学がこの財団から1,210万ドル(約13.9億円)の助成金を受け取ったと発表しました。
この助成金はコーネル大学獣医学部が、コンパニオンアニマルの行動に焦点を当てた動物行動研究所を開設するために使われます。
同研究所はアメリカ国内の獣医師や動物の飼い主をサポートし、コンパニオンアニマルの行動と福祉への理解を深め、生活を改善することを目標としています。また、研究所は『ダフィールド動物行動研究所』と名付けられることが決定しています。
行動上の問題は動物が飼育放棄されたり、保護施設に連れて来られる理由の大きなものです。しかし、問題行動と言われるものの原因が人間の側にあったり、行動の理由に関する知識が無かったりすることは少なくありません。
飼い主にとって身近な存在であるかかりつけの獣医師が行動治療への橋渡し役になったり、飼い主自身の知識を支援することは、捨てられる動物を減らすことにもつながります。
新しい研究所が打ち出しているサポート
ダフィールド動物行動研究所は教育や研究を通じて、コンパニオンアニマルおよび盲導犬などサービスアニマルの行動障害の診断、予防、治療を促進することを目指しているそうです。
助成金は研究所の設立だけでなく、教員や獣医師レジデンシーの養成支援、研究支援にも提供されます。立派な研究所だけでなく人を育成していくことは何よりも重要だからです。
また、アメリカでは戦場から戻った退役軍人の心的外傷後ストレス障害や、負傷による身体的障害が長年の社会問題のひとつになっています。
心身の障害や後遺症に苦しむ人々の大きな助けとなっているのが専門に訓練された介助犬ですが、犬もトレーナーも養成プログラムも十分とは言えない状態です。
ダフィールド動物行動研究所は助成金の一部を介助犬トレーナー養成のプログラム作成に使うことも発表しています。
まとめ
アメリカで大成功を収めた企業設立者が莫大な私財を投じて動物保護基金や動物福祉のための財団を設立し、動物保護団体や研究機関を支援しているという話題をご紹介しました。
動物好きな人の多くが「もしも私が億万長者になったらたくさんの動物を救うことにお金を使いたい」と一度は考えたことがあると思います。そのような夢を実現しているかのようなダフィールド氏の活動は、世知辛い世の中で希望を感じさせてくれる思いがします。
《参考URL》
https://news.cornell.edu/stories/2022/02/12m-grant-establishes-duffield-institute-animal-behavior
https://www.maddiesfund.org/index.htm