里親事情
この記事を書くに当たり、年間どれくらいの頭数が、保護団体から里親として譲渡されているのかを調べました。しかし、この情報については非公開としている団体が多く、確かめることはできませんでした。
そこには、日々の活動にあたっているたくさんの方の、葛藤や取り組みがあるのだと感じました。保護犬とは、何らかの悲運を背負って生まれた犬を心のある方たち(多くはボランティア)の善意と労力によって救い出された犬のことです。
こうした犬たちの里親になるという方もまた、ホスピタリティに満ちたすばらしい精神をお持ちです。保護活動、里親に感心を寄せられている皆さまに、まずは感謝と敬意を申し上げます。
犬の里親を考えたら
さて、保護犬の里親になろうと決めたら、考えることがいくつかあります。家族の同意、家庭環境、住宅事情、金銭的負担に合わせ、最も大事なのは里親になる覚悟のような肝の部分です。これらをすっ飛ばして「かわいそうだから」という一時的な感情だけが先走りしてしまうと、後々になり、飼いきれなかったという結末に至ります。
犬の里親に適していない人の特徴3選
少し厳しいようですが、ここで犬の里親に適していないかもしれない方について、実例を3つご紹介します。
1.利益目的
ここで言う利益とは金銭だけではなく、自身の名誉、名声のために、里親になったという事実を利用するケースです。これは動画配信サイトでの例ですが、犬の里親になった動画配信者がいました。彼女はレスキュー、保護活動に貢献した善意ある私、というモデルを前面に打ち出して動画のアクセス数を稼ぎました。
事情を知らぬ視聴者からはたくさんの応援コメントが寄せられ、彼女にとっては優しい人柄をアピールするための絶好のプロモーションになったことでしょう。でも、その先がいけません。なんと譲り受けた小型犬を半年もしないうちに、別の団体に引き渡していたのです。
理由は「忙しくなったため」。これでは、里親になるという本気度が足りなかった、命に向き合う覚悟ができていなかった、利益目的で利用した、と非難されても仕方がありません。
2.サイズの不一致
「大きい犬にモフモフするのが夢」とおっしゃるご夫婦が、ペットショップで売れ残ってしまった犬を引き取りました。犬種はグレートピレニーズ。アニメや映画の世界で有名になったこの犬種は一見、温和で物静かなイメージを持ちます。
しかし、成犬時の体重は50キロほどになる上、力も強い犬です。幼いうちから従順性と行動のコントロールが必要な犬ですが、そこまでは考えずにイメージばかりで引き取ってしまったために、ご夫婦はその大きさと体力を手に余し、ついに飼いきれなくなりました。
「こんなに大きくなると思わなかった」、「散歩で腰を痛めた」、「ほかの人に飛び掛かってケガをさせた」などの理由から、せっかく里親になっても再び放棄する方が大型犬には多いそうです。
こうした特殊な犬種では、譲渡する側の事前説明が不足していることも問題になっています。しかし、やはり飼うのは里親になる本人ですから、成犬時になった際の犬種の特性やサイズなど鑑みて、里親になるかを決めるべきでしょう。
3.イメージ優先な動機
ドッグカフェで愛犬とお茶をする姿は、犬を飼っていない方から見てもカッコいい印象を受けるものです。そんな風景を見て、ふと「あ、いいな。私も犬を飼って、あんなふうにお茶したいな」と思う方もいらっしゃいます。
でも、子犬は手がかかると聞くから、成犬でも小型犬ならいいよね。里親なら無料なの!?それはお得だわ!と。安易に里親になるのは危険な動機。もちろん、成犬を譲り受けるメリットはたくさんあります。しかし、譲渡される犬のほとんどは、なにかしらの不遇な状況、過酷な経緯を背景に持っています。
こうした犬があなたをすぐに受け入れて、里親となる動機ともなったドッグカフェでかっこよく過ごすには、時間がかかるかもしれません。「こんなはずじゃなかった。引き取ってすぐにカフェに行けると思ったのに」と文句を言われては、犬もたまったものではないですね。
まとめ
飼育放棄、虐待、ネグレスト、多頭飼育崩壊、ブリーダー放棄、売れ残り犬、捨て犬。こうしたものは、私たち愛犬家にとって、悲しく、とても痛ましい事実ですから、できれば見たくも聞きたくもないという方も多いです。
一方で、こうした現実を知り、里親という選択肢を広めていくのも愛犬家ができることではないでしょうか。優しさの循環を願ってまとめとさせていただきます。