花粉症のメカニズム
「花粉症」とはアレルギーの一種です。
人間や動物は体の中に細菌やウイルスなどの異物が侵入すると、それらを排除するための反応が起こります。これが免疫反応です。
細菌やウイルスだけではなく、呼吸などで体内に花粉が侵入するとそれらを「異物」と認識し免疫反応を起こします。
異物への反応は初回に侵入されたときより二回目、三回目に侵入されたときの方が強くあらわれます。
通常であれば免疫反応は病気の発症を抑える有効な反応です。
しかし、ある特定の異物に対して過剰に反応し、自分の身体そのものに不利益な症状を引き起こすことが「アレルギー」といわれる症状です。
花粉症の場合、体内に侵入した花粉に反応して免疫系の細胞が身体に炎症を起こさせるのですが、適切な状態であればちょっとしたくしゃみや鼻水、涙を流す程度で終わります。
しかし花粉が一度にたくさん体内に入ったり、繰り返し多量の花粉が入り込むことで免疫系の細胞が暴走してしまうことも。
そうなると、身体の炎症が過剰に起こるため、花粉症のつらい症状(鼻水、鼻詰まり、止まらないくしゃみ、涙と目の充血など)があらわれてしまうのです。
犬の花粉症
花粉症がアレルギーの一種であるということから、犬も花粉症になる可能性は十分に考えられます。
しかし「花粉症」のあらわれ方は人とは少し異なるようです。
人の場合はくしゃみや鼻水、咳、くしゃみ、目のかゆみなどを訴える場合が多いのですが、犬はこのような症状があまり出ないことが分かっています。
では犬が花粉症になると、いったいどのような症状が出るのでしょうか。
1.皮膚炎
犬の場合、花粉症の多くは皮膚症状にあらわれます。
もともとアレルギーの素因がある犬は皮膚のバリア機能が低下しているため、花粉が付着するとその刺激に反応した皮膚に炎症が生じやすくなります。
花粉のようなアレルゲンが関係して皮膚症状が良くなったり悪くなったりするのを繰り返してしまう皮膚病を「アトピー性皮膚炎」といいます。
アトピー性皮膚炎がある場合、炎症を起こした部分に強いかゆみを感じたり、特徴的な湿疹が身体の柔らかいところを中心に左右対称にあらわれることが多いようです。
進行すると皮膚が黒くゴワつくようになっていきます。
2.外耳炎
垂れ耳の犬に多い外耳炎ですが、花粉症でも引き起こされます。
軽度であれば耳の内側が赤くなったりちょっと湿疹ができたりする程度です。
しかし、こちらもアトピー性皮膚炎同様に、繰り返すことで皮膚が腫れたり黒くごわつくようになっていきます。
3.鼻炎、喘息などの呼吸器症状
割合は少ないのですが、犬の花粉症でもくしゃみや鼻水があらわれるタイプの犬もいます。
また、もともとアレルギー体質の犬である場合や短頭種の犬の場合、鼻炎症状が進行すると気管支炎や気管支喘息の症状もあらわれます。
鼻腔や気管支の炎症で気道狭窄を起こし、喘鳴が聞こえることもあります。
愛犬が花粉症になった時の対処法
花粉症の場合、多くは季節性のためその時期を過ぎるとすっかり症状が落ち着いてしまうことがほとんどです。
毎年同じような時期(スギ花粉は春、イネ花粉は秋など)に症状が出る場合は花粉症を疑い、適切な治療をうけることをおすすめします。
また家庭でできる対処法は以下の通りです。
- 花粉を室内に持ち込まない
- 犬の皮膚に花粉を付着させない
- 花粉を除去する
人間の花粉症の対策と変わりませんね。
アレルゲンとなる花粉が飛散する時期を把握し、その時期は帰宅する前に良く服を払って家に入ったり、こまめに掃除をしたり空気清浄機を使って室内の花粉を極力減らしましょう。
また犬に洋服を着せたり、こまめに体表や被毛を拭いてあげたり、花粉の飛散が少ない時間を見計らって散歩したりと、長時間にわたって犬が花粉にさらされないようにすることが大切です。
もちろん散歩から帰宅した際は、家に入る前に念入りにブラッシングして花粉を落としましょう。
アレルゲンとなるものを体内に極力侵入させない、これがアレルギーの対策には一番です。
また、皮膚のバリア機能は皮脂によって保たれているため、アレルギー体質の犬は乾燥肌であることが多いです。
バリア機能を保つためにも、皮膚は程よく保湿されているほうが良いとされています。
花粉の季節は特に念入りに保湿をすると良いでしょう。
まとめ
人も辛い花粉症ですが、犬たちはくしゃみや鼻水といった症状こそ少ないものの皮膚炎などでかゆみを伴うことが多いので、それはそれでとてもつらいと思います。
アトピー性皮膚炎は根治できるものではありませんが、アレルゲンと触れる機会を減らすことで症状を抑えることができます。
花粉症と思われる皮膚症状を見かけたら、なるべく早めに対処してあげてくださいね。