飼い犬と飼い主さんの関係
かつては、特殊環境におけるオオカミの群れの社会順位性が、犬の社会にも当てはまると信じられていました。
しかし現在は、自然環境で暮らすオオカミの群れにはリーダーや順位などはなく、家族のような関係性があることが分かっています。
飼い犬にとっての群は一緒に暮らしているご家族であり、親のような存在の飼い主さんがいます。
つまり飼い主さんは、愛犬が信頼し限りなく愛情を注ぐ対象なのです。
そのためか、犬は成犬になっても「構って欲しい」というサインを、仕草や行動で示します。
こういったサインを紹介し、どのように対処するのが望ましいのかについて解説します。
犬が構って欲しい時に見せる仕草や行動
1.飼い主さんにまつわりつく
飼い主さんにまつわりついて離れないのは、「注目して欲しい」という気持ちの表れです。
気を引くために、子犬が鳴く時のような少しハイトーン気味な声で「クンクン」と鳴きながら、しつこくつきまとってくることもあるでしょう。
他にも、飼い主さんの体を鼻先でつついたり、前足で引っ掻いたり、服を引っ張ったり、スリッパに噛み付いたりなど、気を引くためにいろいろなちょっかいを出してくることもあります。
2.顔を舐める
飼い主さんの顔、特に口の周りを舐めることがあります。
これも愛情表現の一種で、信頼をしている相手への挨拶です。
衛生面と愛犬の気持ちを両立させるためには、「人間とは口の周りを舐めて挨拶してはいけない」と教えた方が良いでしょう。
3.体を寄せてくる
飼い主さんがソファなどに腰掛けてくつろいでいると、愛犬がピタリと自分の体を寄せてきて、前足やあご、頭などを飼い主さんに乗せてくることがあります。
これも甘えている仕草です。そっと抱き寄せて、同じ時間と空間を共有しましょう。
4.遊びに誘う
総じて犬は、飼い主さんと一緒に遊ぶことが大好きです。
そのため、「一緒に遊ぼう!」と誘ってきます。
仰向けになってお腹を見せたり、頭を低くしながら前足を伸ばしお尻を上げて尻尾を左右に大きく振ったりした場合は、誘いのサインです。
5.何度もしつこく遊びの続きを要求する
一緒に遊んでいて、何度もおもちゃを持ってきては遊びの続きを催促する場合、遊び足りずに「もっと遊ぼう」と誘っているのです。
しかし、その裏にはストレスが隠れている場合もあるので注意が必要です。
飼い主さんが上の空で遊んでいたりはしませんでしたか。
6.よく吠える
コミュニケーション不足によるストレスを抱えている場合、よく吠えるようになることもあります。
それまであまり吠えなかったのに、最近よく吠えると感じた場合は、心当たりが無いかを振り返り、愛犬との付き合い方を見直してみてください。
7.仮病を使う
犬は仮病を使う場合があります。
以前怪我をした時に飼い主さんに優しくしてもらったことを覚えていて、もう一度優しくしてもらいたいために、飼い主さんの前にいる時だけ足を引きずって歩くなどのように再現するのです。
これも愛犬の必死な構ってアピールです。仮病を使わなくても愛犬を安心させられるような付き合い方を見直しましょう。
8.転位行動を繰り返す
皮膚などに異常がないのに同じ場所をずっと掻き続ける、舐め続けるような場合も、「構って欲しい」サインの場合があります。
望んでもなかなか叶えられず、ストレスの域にまで達したため、転位行動といって全く関係のない行動で気を紛らわしているのです。
放置しておくと、問題行動へとエスカレートしていきます。
もっと一緒にいられる時間を作る、コミュニケーションを密にとるなどの改善や工夫をしてあげてください。
犬が甘えてくるときの対応
メリハリを付けて甘えさせる
犬は、自分と一緒にいる時の飼い主さんが心ここにあらずといった状態なのか、真剣に自分と向き合ってくれているのか、をきちんと把握しています。
愛犬と一緒に過ごす時には、短時間でもいいのでしっかりと向き合いましょう。
また、スキンシップの回数や散歩の時間を増やしたり、たまには違うコースを散歩するなど、いろいろと工夫してみてください。
そして、愛犬からの構ってサインに応えられない時には「今はダメ」と明確に伝えて無視することで、メリハリを付けましょう。
向き合えない時はきっぱり拒絶する、向き合う時はとことん向き合う気持ちが大切です。
愛犬とのコミュニケーションを振り返る
愛犬からの構ってサインの中には、これまでのストレスが裏に潜んでいる場合があることも分かりました。
飼い主さんの都合で最近愛犬との関係が疎遠になっていないか、時々振り返ってみましょう。
意識して愛犬と向き合う時間を捻出し、短時間でもいいので真剣に向き合う姿勢を示すことが大切です。
誤解をさせない対応をする
愛犬からの構ってサインを嫌がったり叱ったりすることで、愛犬に「構ってもらえた」と誤解をさせてしまい、そのサインの頻出を助長してしまうことがあります。
「しつこいちょっかい」「吠える」「仮病」「転位行動」などに対してこのような誤解を与えると、エスカレートしてしまうことがあります。
メリハリのある対応を、わかりやすく明確に伝えることが大切です。
まとめ
愛犬とは、言葉を介してコミュニケーションできません。
お互いに勘違いをしたり、無用なストレスをためたりすることもあるでしょう。
それを減らすためには、飼い主さんが愛犬の気持ちを汲んで対応することが大切です。
犬の生態や習性に関する正しい知識を学び、愛犬と良い関係を上手に構築していけるように努力してみてください。