舌の役割
動物の舌は口腔の中にあり、筋肉の基盤と粘膜の表層を持つ構造をしています。
粘膜の部分には味蕾という味の受容器官や、舌の感覚を鋭敏にする乳頭と呼ばれる器官が分布しています。
また、舌には味を感じたり食べ物をなめとる以外にも、声を出すための器官としても重要や役割があります。
更に、犬の場合は舌を出してパンティングという喘ぎ呼吸をすることで体温調節を行います。
これは長い舌や喉から唾液を蒸発させて体温を下げる行為で、犬にとって舌というのは生命を維持するためにも大切なものなんですね。
犬の舌
健康な犬の舌は、基本的には血色の良いピンク色をしており湿っています。
もちろんこの血色には個体差があるため、普段から犬の状態を舌の色を含めて観察しておくことが大切です。
「いつもと違う」ということに気が付けるかどうか、それが重要なんですね。
では、「いつもと違う」という場合はどこが違うのかを見てみましょう。
1.いつもより赤みが強い
舌の赤みが強いときは、緊張をしていたり、体温が上がっていたりすることが多いようです。
このような時はパンティングをしていることも多いです。
そのため、ちょっといつものピンクより色が濃いかな、というくらいであれば、水を飲ませてゆっくり休ませてあげてください。
しかしいつもより相当に赤みが強いという場合は、発熱をしている可能性があります。
直腸温を計るか、あるいは動物病院を受診してください。
発熱している場合は絞った濡れタオルをかけてあげる、脇や鼠径部を冷やすなどして、体を冷やしてあげると良いでしょう。
2.いつもより白い
犬の舌や歯茎の血色が悪く、白くなっている場合は貧血の可能性が高いです。
内臓で出血が起こっていると外見ではわからないまま貧血が進む場合もあります。
また、免疫介在性溶血性貧血の場合は愛犬の命にかかわります。
ちょっと白いかな、という場合でも歯茎を指で押してみて血色の戻りを観察してみましょう。
白いままで赤みが戻るのに時間がかかる場合は、貧血の恐れがあります。
出来るだけ早く動物病院を受診し、血液検査を受けましょう。
3.いつもより黄色い
これは黄疸を起こしている可能性があります。
黄疸とは胆のうや肝臓のトラブルからくることが多く、溶血や肝炎などの病気が隠れているサインです。
尿の色、外耳の色や皮膚の色も同時にチェックし、早めの動物病院受診をお勧めします。
4.いつもより紫色
これはチアノーゼの可能性があります。
チアノーゼとは何らかの原因によって気道がふさがれ、酸素不足になっている状態です。
犬の場合は異物の誤飲であったり、心臓の病気や肺炎が原因であることがあります。
こちらは一刻もはやく動物病院を受診してください。
出しっぱなしの舌について
犬は口を開けて舌を出しっぱなしにしていることがあります。
口の中が乾いてしまわないか心配になってしまいますが、多くの場合は「パンティング」のため心配いりません。
喘ぎ呼吸をすることで、犬は体温を調節しているのです。
しかし気温も高くなく、運動をしているわけでもないときにパンティングをしている場合は、犬が何らかの緊張状態であったりストレスが高い状態であったりすることを示しています。
その場合はストレスの元を取り除くようにしてみるのも良いでしょう。
また呼吸の状態や、舌の色を観察して異常があれば動物病院を受診するなどしてみてください。
さらに、犬は熟睡している時や完全にリラックスしている状態のときも、舌がだらりと出てくることがあります。
この場合はほとんど心配しなくて構わないのです。
しかし老犬の場合は、舌先が乾燥してひび割れてしまったり、小さな傷口から細菌の感染などが起こったりしますので、気がついたら口の中にしまってあげると良いでしょう。
まとめ
犬の舌は味を感じたり食事をなめとったりする以外に、生命維持のための器官であったり、健康のバロメーターであったりと様々な役割があります。
犬が舌を出しっぱなしにすることは、ほとんどの場合心配する必要はありません。
とはいえ、毎日犬の様子と舌の色をよく観察して、「健康」な状態を把握しておくことが大切ですね。