遠くない「いつか」にやって来る愛犬の介護
いくら寿命が伸びているとはいえ、犬の寿命は人間と比べると極端に短いのが現実です。
そのため、愛犬をご家庭に迎え入れたその時から、いずれ遠くない日に愛犬の介護が始まるという覚悟が必要です。
今回は、愛犬の老化に伴う介護に焦点を当て、老化の加速をなるべく抑えるためのヒントや、代表的な介護の内容について紹介します。
早めの準備で老化の加速を抑える
犬種や個体差がありますが、大型犬で8歳、小型犬や中型犬でも10歳からが「シニア期」だと言われています。
その少し前から徐々に運動量や気持ちのハリが落ちていき、飼い主さんへの構ってアピールも減ってくるようです。
犬の老化のサインはたくさんありますが、なかでも分かりやすいのは下記のような症状ではないでしょうか。
- 活動量の減少、睡眠時間の増加
- つまずく、よろける、歩きたがらない
- 毛艶がなくなる、白髪が目立つ
- 目ヤニ、耳垢、口臭の増加
- 食の好みや食欲の変化
- 食べこぼし、飲み込みづらい
- 反応が鈍い
- 物によくぶつかる
これらのサインに気付いたら、「危険を排除し、可能な範囲で刺激のある生活」ができるように環境や生活内容を見直し、愛犬の老化の加速を抑えましょう。
気持ちまで萎えさせないように、できるだけ多くの刺激を与えるように工夫しましょう。
食事に関する介護
食事の姿勢
まだ初期の場合、食事の姿勢を楽にしてあげます。
飲み込む力や首の筋力が弱っているため、頭を下げた姿勢は負荷が高いからです。
食器台等を利用して食器の位置を高くし、頭を下げずに食べられるように改善します。
食事内容
健康状態にもよりますが、基本的にはシニア犬に必要な栄養素が含まれているシニア用の食事に切り替えます。
持病を抱えている場合もあるため、食事内容についてはかかりつけの獣医師とよく相談して決めてください。
飲み込む力が弱っているため、基本は小粒で柔らかいフードを与えます。
水分補給も兼ねて、ウェットタイプやスープを掛けた食事なども良いでしょう。
食事回数
一度にたくさん食べられなくなることが多いので、1日に必要な食事量を少量ずつ複数回に分けて与えます。
1回の食事時間が長くなると愛犬も疲れますので、様子を見ながら調節しましょう。
自力で立てない場合の食事介助
寝かせたままにせず、飼い主さんの体やタオル、クッションなどで愛犬の上半身を起こし、頭を高くさせます。
少量の柔らかいフードをスプーンで舌の上の奥に入れます。
しっかりと飲み込んだことを確認してから、次を給餌します。
流動食の場合は、シリンジを利用します。
飲み込めているのかを確認しながらゆっくりと食べさせてください。犬のペースに合わせることが大切です。
食後30分程度は、そのままの姿勢にさせたままそばで様子を見てください。
また食後は、口の周りだけでなく、湿ったガーゼで口の中も拭いてあげます。
排泄に関する介護
粗相をしても叱らない
加齢と共に筋力や感覚、消化器官などの機能が低下するため、思うように排泄ができずに粗相が増えてきます。
しかし、決して叱らないでください。愛犬自身が一番ストレスを感じています。
行動範囲内にペットシーツを敷いておくだけでは間に合わない場合は、おむつを使用しましょう。
排尿・排便の介助
排尿したいのにできない場合は、飼い主さんが下腹部(膀胱のある場所)を両手ではさみながら軽く押すと、うまくできる場合があります。
排便ができない場合は、オリーブ油を付けた綿棒の先を少し肛門に入れて軽く刺激すると、促せる場合があります。
また「の」の字を描くような腸のマッサージでも、便通を改善させる効果を期待できます。
認知症に関する介護
夜鳴き
夜鳴きが始まったら、愛犬の体をなでる、話しかける、足のストレッチやマッサージをするなどで、リラックスさせ落ち着かせます。
毎朝起こしてしっかりと朝日を浴びさせることで、愛犬の体内時計をリセットしましょう。
朝の散歩も効果的です。カートでも構いません。できるだけ昼間に活動をさせ、夜はしっかりと眠らせる生活習慣をつけさせましょう。
徘徊
夜中は飼い主さんの目が届かなくなりますので、円形サークルを用意して、その中で徘徊させます。
サークル内は滑り止めを敷き、その上にペットシーツを敷くことで、粗相にも対応できます。
サークル内には障害物を置かないようします。昼間、飼い主さんの目が届く時間帯は、サークルから出してあげましょう。
寝たきりに関する介護
寝たきりになった場合に最も気を付けなければならないのが「床ずれ」です。
床ずれは、自分自身の重みが長時間皮膚の同じ部位にかかり続けることで血行が滞り起きる、皮膚や皮下組織の壊死です。
寝たきりの愛犬に代わり、飼い主さんが1〜3時間おきに寝返りを打たせることが予防策です。
背中側を起こして反対側を向かせてください。
背中を軸に回転させると内臓に負担がかかるため、避けましょう。
並行して高反発クッションを使い、体圧を分散するのも効果的です。
また、寝具類を清潔にしておくことも大切な要素です。
まとめ
愛犬の状態によって、介護の内容は千差万別です。
愛犬に最適な対処を行うためにも、若い頃からかかりつけの病院を作り、何でも相談できるような関係を築いておきましょう。
介護は終りが見えません。
一人で抱え込んでしまわずに、動物病院や老犬ホーム、動物介護士などのプロの力も借りながら、最後まで愛犬と一緒に笑顔で過ごせるように工夫してみましょう。