独占欲ってなんだろう?
犬は、群の中で暮らしていた習性が残っているため、比較的独占欲の強い動物だといわれることがあります。
国語辞典で「独占」という言葉を調べてみると、「他人を排して独りで専有すること」だと記載されています。
つまり独占欲が強いと、対象となるものを自分だけのものにしようと、目の前にいるライバルを排除する行動に出るということです。
それは、人間の「嫉妬」に似ているように見えるかもしれません。
飼い主さんに対する愛犬の独占欲が強い場合、「愛犬からの愛情」だと嬉しく感じるかもしれません。
しかしその思いがあまりにも強すぎると、ライバルを排除する行動などがエスカレートし、問題行動に発展しかねません。
本記事では、独占欲の強い犬はどのような仕草や態度を見せるのか、それがエスカレートするとどのような問題が生じるリスクがあるのか、そしてそれに対してどのように対処すればよいのかについて説明します。
独占欲の強い犬がよく見せる仕草や態度
1.飼い主さんに対して自分の体や頭をこすり付ける
飼い主さんからいつもとは違うニオイがしている場合、愛犬が自分の体や頭などを、飼い主さんの手足や体などにこすり付けることがあります。
これは一種のマーキングで、飼い主さんに自分のニオイをつけることで、飼い主さんは自分のものだと主張して安心するための行動です。
外出から帰宅した時や、入浴直後などによくみられます。
2.自分の前足を乗せる
飼い主さんの足や腕に自分の前足を乗せたり、乗せた足で飼い主さんのことをちょんちょんとつついたりすることがあります。
傍から見ると、とても可愛らしい仕草ですよね。
これは、自分に注目していない飼い主さんに対して、「ここにいるよ。こっちを向いて!」というサインで、根底に独占欲が働いていることが多いようです。
3.ライバルと飼い主さんとの間に割って入る
明らかに飼い主さんが自分以外の何か・誰かに関心を向けている場合に多く見られます。
飼い主さんが関心を向けている対象を自分のライバルとみなして、ライバルと飼い主さんの間に割って入ってきます。
ライバルは、他の犬や人等の場合もあれば、本やテレビなどの場合もあります。
在宅ワーク中の場合は、パソコンがライバルになることもあるでしょう。
4.ライバルに向かって攻撃的な行動をとる
飼い主さんが関心を向けているライバルに向かい、唸ったり吠えたり、噛み付いたりといった攻撃的な行動をとることがあります。
2014年にカリフォルニア大学で行われた実験では、自分を無視して犬のぬいぐるみと遊んでいた飼い主に対して、1/3の犬が飼い主とぬいぐるみとの間に割って入ろうとし、1/4の犬がぬいぐるみに噛み付いたということです。
独占欲の強さがエスカレートして生じるリスク
飼い主さんへの依存心が増大して分離不安症になる
飼い主さんに対する犬の独占欲の強さは、飼い主さんへの信頼度の低さの表れだという考え方があります。
飼い主さんの自分に対する愛情に自信がないから不安になり、ライバルを排除して自分の方を向かせようとしているという考え方です。
この気持がエスカレートすると、飼い主さんの姿が見えなくなると「もう帰ってこないかもしれない」という不安に襲われ、分離不安症というメンタル系の病気に繋がる可能性が高まります。
ライバルに怪我をさせてしまう
先ほど紹介した実験では、犬が噛み付いたライバルはぬいぐるみでした。
しかし実際のライバルは、他の家の犬や子どもであることも少なくないでしょう。
その場合、独占欲の強さが高じて、愛犬が他人や他の動物を傷つける事故に繋がる可能性が高まります。
独占欲が強すぎる犬への対策
愛犬との間にしっかりとした信頼関係を築く
愛犬の飼い主さんに対する独占欲が強すぎると感じた場合は、まず愛犬との間にしっかりとした信頼関係を築き直すことから始めてみましょう。
一時的に飼い主さんがライバルに関心を向けたとしても、最後は必ず自分自身に愛情を注いでくれる、と信じてもらうことが大事です。
また、長時間出かけたとしても、最後は必ず帰ってきてくれると信じさせ、愛犬を不安にさせないことが大切です。
過剰に構いすぎたり甘やかしすぎたりしない
普段から必要以上に愛犬を構いすぎたり、甘やかしすぎたりすることで、愛犬の飼い主さんへの依存度を必要以上に高めてしまうことがあります。
飼い主さんも愛犬も、お互いにべったりという距離感ではなく、良きパートナーとして適度な距離感を保ちながら過ごすことが大切です。
まとめ
一見愛犬から愛されていると感じられるような仕草や態度は、飼い主さんに対する独占欲の強さから生じる行動かもしれないことが分かりました。
また独占欲は、愛犬が飼い主さんに対して抱いている「不安感の裏返し」の可能性があることも分かりました。
愛犬の不安感が増大し、飼い主さんに対する独占欲がエスカレートしてしまうと、愛犬を分離不安症にしてしまったり、他人や他の動物を攻撃して怪我をさせてしまうリスクが高まります。
愛犬との信頼関係をしっかりと築き、適度な距離感で接することで、良い関係を維持できるようにしましょう。