太り過ぎの犬と食事療法の研究
犬の肥満率の高さは多くの国で問題になっています。太り過ぎは犬の寿命を短くするだけでなく、生活の質も低下させます。
体重が増え過ぎると関節に余計な負担がかかり炎症を起こしやすく、運動や暑さに対しての耐性も低くなりますし、糖尿病や心臓病のリスクも高くなります。
つまり、人間の肥満のリスクとほぼ同じなのです。
この度、アメリカのイリノイ大学アーバナシャンペーン校の動物科学の研究チームが、太り過ぎの犬の食事療法に関する研究の結果を発表しました。
高タンパク質、高繊維質の食事で実験
この研究では、コントロールされた量の高タンパク高繊維の食事を与えた結果、犬の体組成、血液代謝物、糞便中の微生物叢と代謝物が調査されました。
実験に参加したのは不妊化手術を終えたメス犬12頭でした。体重は14.8kgプラスマイナス2.0kgの範囲で、全員が太りすぎと判定されています。
実験には特別に設計された低カロリー高タンパク質高繊維のフードが使用され、ベースラインとなる体重を測定するために、最初の4週間に渡ってこのフードが与えられました。
その次の週にはベースライン期間の80%の量が与えられ、24週間に渡って毎週1.5%の体重減少を目標とするよう調整されました。
期間中に5回の血液サンプル採取、7回の糞便サンプル採取、自発的な身体活動の測定も行われたそうです。
食事療法24週後のそれぞれの数値の変化
上記のような実験期間を終えた後、犬たちには全体で31.2%の体重減少が見られ、犬の筋肉量はほとんど失われず体脂肪率は11.7%低下と、健康的な体重減少が達成されました。
血液検査の結果では中性脂肪、インスリン、炎症マーカーは体重減少と共に低下しました。これらは全て健康のために良い結果を示しています。
またこの研究では体重が減少する過程での犬の腸内細菌叢の変化を測定した点で珍しいものです。便に現れた変化では含まれるアンモニアの量が減少していました。これも健康にとって良いことです。
腸内細菌叢の変化では、体重の減少と共に数種類の細菌属が減少した中、アロバキュラム属の細菌の割合が増加しました。アロバキュラムの増加は食物繊維の副産物である酪酸の増加とも相関していました。
以前の研究では、酪酸は腸内で抗炎症作用と抗発がん作用を持っていることが示されています。腸内細菌の変化のうちのいくつかは解釈が困難で、今後さらに調査が必要であるとしています。
高タンパク高繊維のフードでの食事療法に対して犬の体調は良い反応を示し、数値上の変化は健康にとって有益なものであったと研究者は報告しています。
まとめ
太り過ぎを対象に低カロリー高タンパク高繊維の食事療法を行った結果、健康的な体重減少と中性脂肪、インスリン、炎症マーカーなどの低下が確認されたという報告をご紹介しました。
ダイエット用の療法食は数多くありますが、さらにこのような研究が活かされていくことが期待されます。体重を減らさなくてはならないような事態は無いのが一番ですが、食事療法のためのフードはこのような研究に支えられているのだと知ることは安心にもつながりますね。
《参考URL》
https://doi.org/10.1093/jas/skab379
https://www.sciencedaily.com/releases/2022/01/220124115040.htm