離婚の際のペットの『親権』は誰のもの?
犬や猫を飼って一緒に暮らしていたカップルが離婚などで別々に生活を始める時、どちらがペットを引き取るかというのは、世界の多くの国でしばしば争いを引き起こす問題です。
日本も含めて、ペットに対する権利は「所有権」であり、法律上は家具や自動車などと同じ解釈になる国は少なくありません。
アメリカでは双方が弁護士を雇って、完全に権利を2分割してペットが双方の家を定期的に行き来するのか、メインとサブの飼い主を設定するのか、サブ飼い主の面会権、医療費など高額な出費の際の分担などを決定し、法的に共同の権利を設定する例も増えています。
アメリカのこのような例は民事の法的措置で、国や州の法律ではペットはやはり所有物という扱いになります。そのため法的に焦点となるのは、人間側の権利であってペットの福祉は含まれません。
このアメリカとよく似た傾向だったスペインで2022年1月から法律が改正されました。新しく改正されたスペインの法律は、離婚などの際に双方がペットの共同監護権を取得することを強化するものです。
簡単に言うと、スペインではペットが物品ではなく感情のある生き物であると定められ、家族の別離の後のペットの幸せが考慮されるようになったということです。
法律によって「動物の福祉」が考慮される!
スペインでは、法律が改正される以前から裁判などの際にペットを物品ではなく「福祉に配慮するべき感情や感覚のある生き物」として扱う傾向が進んでいました。
しかしこの度の法改正により、民法、民事訴訟法、住宅ローン法で扱われる全てのケースにこの考え方が適用されることになります。
法改正以前のスペインでは、離婚するカップルがペットの権利を主張する際に焦点となったのは動物の所有権の証明でした。法改正後は、どちらと暮らすことが動物の福祉にとって最良であるかが考慮されます。つまり子供の親権を決める際と同じことが焦点となります。
動物の福祉に鑑みて考慮される点とは「経済的支払い能力」「動物の安全と健康が保証されること」「他の家族のメンバーとの感情的なつながり」などです。
例えば、子供とペットの感情的なつながりが強い場合は、子供の監護権を持つ側がペットの監護権についても考慮されます。
日常的なことや動物病院に連れて行くなどの世話を、どちらか一方だけが担っていた場合も大きく考慮されます。過去に虐待などの履歴がある場合は、もちろん監護権を得ることはできません。
ヨーロッパで進んでいる同様の動き
スペインの法律改正は同国の動物福祉を大きく改善すると考えられています。以前はペットを巡っての係争は物品の所有権であったため、係争中にペットが双方から引き離されて一時預かりされる例もあったからです。
ペットを物品ではなく福祉に考慮するべき生き物として扱う法律は、スペインだけでなくヨーロッパの他の国でも既に実行されています。
ドイツ、スイス、オーストリア、フランス、ポルトガルは動物を物品ではなく「感覚を持つ生き物」として見なしています。イギリスでも同様の傾向があります。
昨年スペインでペットの監護権を争う裁判を担当したある弁護士は「ペットは家族の一員であり、家族が別々に暮らすことを決定した場合、動物の新しい生活は他の家族のメンバーと同じ重要性を持って規制されなくてはならない」と述べています。
まとめ
スペインで離婚など家族の別離の際に、誰がペットを引き取るのかという法的な決定が物品の権利ではなくペットの福祉を考慮することを焦点とするよう法改正があったというニュースをご紹介しました。
日本の法律はまだまだここまでの域には達していませんが、諸外国がどのような傾向で動物を扱っているかを知ることは、法改正にあたってパブリックコメントなどで国民の意見が求められる際に大いに参考になります。