犬と人間、猫と人間の関係性をリサーチ
動物と人間が関わりあうことで生まれる相互作用が近年注目されており、さまざまな形のアニマルセラピーや、ペットを飼うことが心身の健康増進につながると言った研究報告が増えています。
これらの研究は犬と人間に関するものが多く、猫と人間についての研究はあまり多くありません。また犬と猫を比較したものはさらに少ない状態です。
この度メキシコのヌエボ・レオン自治大学の心理学者が、犬と猫の両方と暮らしている人々へのアンケート調査で「犬と飼い主の関係」と「猫と飼い主の関係」を比較した調査結果を発表しました。
ペットとの関係性を質問票で測定
調査に参加したのはメキシコ在住で犬と猫の両方を飼っている人たちで、最初にアンケート調査への回答を依頼した人に別の犬と猫を飼っている人を紹介してもらうという形で参加者を募りました。
最終的に、少なくとも1匹の犬と1匹の猫を飼っている132人が参加し、オンラインアンケートに回答しました。
ペットと飼い主の関係性を一定の尺度で測定評価するために、MDORS(Monash Dog Owner Relation Scale モナシュ犬と飼い主関係性尺度)という定型化された質問票が使用されました。
MDORSとはオーストラリアのモナシュ大学の研究者が考案した、犬と飼い主の関係性を客観的に評価するための質問票です。
犬と飼い主の関わり合い、感情的な親密さ、理解の容易さの3種のサブ項目に分かれており、全部で28の質問に回答します。回答はスコア化され、飼い主の認識に基づく関係性の強さが示されるというものです。
この調査では、犬と飼い主向けに設計された質問票を猫向けにアレンジして使用しました。全ての参加者は最初に自分と猫の関係性について質問票に回答し、次に犬について回答しました。
犬と猫、飼い主との関係にどんな違いが見られただろう?
参加者の回答をスコア化して集計した結果は次のようなものでした。
- 飼い主との関わり合いは猫の方が多かった
- 相手を理解することの容易さも猫の方が上だった
- 感情的な親密さは犬の方が強かった
- 総合的には猫の方が人間との関係性スコアが高かった
猫よりも犬との感情的な親密さが高いという点を具体的に言うと、犬が社会的支援(散歩などで地域への帰属意識を感じられるなど)コンパニオンシップ、無条件の愛情をくれると回答者が認識していることを示しています。
猫が犬よりも飼い主との関わり合いが多いのは、猫を膝に乗せて撫でる、ブラッシング、抱きしめるなどの時間が犬よりも多いことを示しています。
また猫との関係は犬よりも責任が小さく、日常生活への制限が犬よりも小さいことが、相手への理解の容易さにつながっています。
このように相手(猫)から与えられる「関係性の利益」と、自分(飼い主)が与える「関係性のコスト」のバランスに基づくと、猫と飼い主の関係は全体的に良好であるという結果を示しました。
以上は犬と猫を全体的に比較した結果ですが、他にいくつかの注目すべき点がありました。
- メス猫よりもオス猫の方が、より感情的に親密で理解が容易だった
- メス猫よりもオス猫の方が、関係性の総合スコアが高かった
- メス犬よりもオス犬の方が、感情的な親密さが高かった
どうやら猫も犬も、メスよりもオスの方が甘えん坊の傾向が強いようです。
また猫も犬も年齢が若い方が、飼い主が与える「関係性のコスト」が高いことを示していました。これは動物が若いうちは常に注意が必要であったり、相互理解もまだ未完成であるので当然と言えます。
しかし、この調査のサンプルには9歳以上の犬がおらず、10歳以上の猫は全体の10%のみだったことから、ペットの年齢が上がった場合の関係性のコストについては示されていません。
研究者は飼い主と犬/猫との関係について引き続き調査を行う必要があると述べています
まとめ
犬と猫両方を飼っている人へのアンケート調査から、両者との関係性をスコア化した結果、全体的には猫の方が飼い主との関係性スコアが高かったこと、感情的な親密さは犬の方が高かったという報告をご紹介しました。
人によって意外に思われたり「やっぱり」と思われたりと、色々な感想があるかと思います。過去に実施された唯一の犬と猫と人間の関係性を比較した別の研究では、人々は犬と猫との関係は同等に有益であると認識しているという結果だったそうです。
この研究で猫の方が関係性において優れているという点は、ペットとして猫の方が人気の高い国で挙げられる理由とも一致しているそうです。
しかし一緒に暮らしている人にとっては、犬は犬、猫は猫でどちらも大切な家族で、違うところも全部含めて愛おしいに違いないと思います。
《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani11092745