自然の中で犬は異質な存在
広々とした自然の中で愛犬を自由に遊ばせてあげたいと思う飼い主さんは多いでしょう。確かに普段と違う場所で興奮する愛犬の姿を見るのは嬉しいものです。
しかし、犬は自然の中では生態系に含まれない異質な存在であるということは心しておく必要があります。犬による自然破壊は世界中の多くの地域で問題になっていることだからです。
多くの日本人にとって「広大な大自然、こんな場所で遊べる犬は幸せ」というイメージがあるニュージーランドも、野生動物や自然環境を守るために特定の地域への犬の立ち入りを規制している国のひとつです。
野鳥と犬の悲しい関係
犬が最も脅威となるのは、自然の中に住む野鳥たちに対してです。捕食をしなくても、犬が巣に近づくだけで鳥にとっては大きなストレスになります。特に川原や海岸で地面に巣を作るシギやチドリには悪影響で、親鳥が犬から逃げるためにヒナや卵が犠牲になることもあります。
また、ニュージーランドにはキウイやニュージーランドクイナ(ウェカ)などの希少な飛べない鳥が生息しています。
中でも同国の国鳥であるキウイの個体数に大きなダメージを与えているのは、ペットの犬や猫と外来種のオコジョやキツネなのだそうです。一部の地域ではオコジョなどを上回って犬がキウイの捕食者のメインとなっていると言われています。
野鳥に限らず、ペットの犬は全ての野生動物から20メートル以上の距離を取らなくてはいけないという規制もあります。オフリードが許されているエリアでも、飼い主は常にリードを手にしていることも義務付けられています。
自然の中では犬が入ってはいけないエリア、必ずリードを着けていなくてはいけないエリア、入ってはいけない時間帯のあるエリアなど、ニュージーランド自然保護局が細かい規制を定めているのですが、規制があることを知らない人、知っていても無視する人が多いという現状です。
自然保護局が立てている対策
規制の設定だけでなく自然保護局はさまざまな対策を講じています。その中のひとつに、飼い犬を対象にしたキウイに近づかないためのトレーニングがあります。
このトレーニングはキウイの遺体やフンを使って、犬がそこに近づくと電気ショックカラーで首に軽い電流を流す嫌悪刺激を与えるものです。
キウイに近づくと嫌なことが起きるという条件付けをして、今後犬がキウイに近づかないようにします。訓練終了後は電気ショックカラーは使いません。トレーニングは自然保護局のウェブサイトから申し込むことができます。
電気ショックカラーは使用に反対する人も多いですが、アメリカにはガラガラヘビから犬を守るために、同じようにヘビの模型と匂いを使って電気ショックカラーで嫌悪刺激を与えるトレーニングがあるように、この場合は一概にダメとは言えないのかもしれません。
絶滅の危機に瀕している在来種の生息地は全て犬の立ち入りが禁止されています。ルールに従わず飼い犬が野生動物を殺してしまった場合には、飼い主に対して懲役または2万NZドル(約157万円)の罰金が課せられます。犬が殺処分となる場合もあるということです。
まとめ
ニュージーランドのビーチや山で走り回る犬がそこに生息する野生動物の安全を脅かすため、同国の自然保護局が規制を設けていることをご紹介しました。
日本でも外飼いの猫が野生動物を狩ってしまうことが問題になっていますし、沖縄の希少な鳥ヤンバルクイナが犬に襲われて数が減少しているなど、同じような問題が起きています。
日本の場合、山に捨てられて野良になった犬や猫による被害も大きいため、また別の深刻な問題もあります。
犠牲になるのが希少な鳥や動物であると問題視されることも多くなりますが、スズメやトカゲなどどこにでもいる小動物も自然の中では食物連鎖の一部を担っており、それを連鎖に含まれない犬や猫が狩ることは問題であると全ての飼い主が認識する必要があります。
外国の情報を知ることで改めて自分の周りにも目を向け、自然の中で愛犬を悪者にしない責任の全ては飼い主にあると肝に銘じたいと思います。
《参考URL》
https://www.doc.govt.nz/parks-and-recreation/know-before-you-go/dog-access/wildlife-wise/
https://www.sunlive.co.nz/news/284860-control-pets-to-protect-our-wildlife.html