犬の気持ち、人の気持ち
チラチラと飼い主の顔を覗きこむ愛犬の様子の多くは、相手の表情や気分を推測して読み取ろうとする行動に当たります。
人でよく使われる「顔色をうかがう」という表現が、この行動に近いような気がしますね。これには、相手の機嫌を損ねないようにするといった、多少の弱気さや忖度も含まれています。
犬の場合はどうでしょうか。ここからは具体的な犬の気持ちを3つ、ご一緒に見ていきます。感情を表すサインによって意味がちがってきますので、犬の感情が出やすいとされる、しっぽに注目してみましょう。
1. 期待
しっぽを高い位置で素早く振りながら、耳を後方に倒し、キラキラとした瞳で飼い主の顔をチラチラと覗きこむ様子。これは、次に起こる良い展開を期待している時に見られる犬のサインです。
嬉しさとワクワクを体いっぱい感じていて、飛び跳ねたいくらいハッピーですが、それをこらえて飼い主の合図を待っているという気持ちの表れです。
例えば、お出かけが好きな犬は、飼い主が出かける準備をする気配を感じるだけで期待を膨らませます。こうした良い予感を感じている時には、チラチラと顔を覗きこむものです。
2. うしろめたさ
少々ネガティブな表現ですが犬は「やらかしてしまった」という時も、チラチラと顔を覗きこむことが多いです。
これも上記と同じように飼い主の反応を見るという行動と似ていますが、しっぽ の位置に違いが現れます。期待とは逆の気持ちなので、しっぽは当然低い位置や下向きにあります。
しっぽの長い犬や短い犬、付け根の位置によっても見え方は異なりますが、いつもよりしっぽが下気味の位置にあり、ユラユラとゆっくり揺らしている時はうしろめたさを感じている可能性が高いです。犬によっては完全にしっぽを丸め、内股に隠すように入れてしまう子もいますね。
また、うしろめたさを感じている時の犬は、顔色をうかがうように上目遣いで白目を多く見せることもあります。それくらい犬は、飼い主との関係が強固であればあるほど反応を気にする生きものです。
3. 尊敬
普段から飼い主を意識している犬も日常的に顔をチラチラ覗いてきます。例えば、散歩中に飼い主の顔を見上げるように、振り返るように、チラチラと視界に入れることがあるでしょう。こうすることによって、今、自分がしている行動が正しいかどうかを確認しています。
飼い主に信頼を寄せ尊敬の感情を持っている犬によく見られる行動であり、散歩時だけでなく部屋で一緒にリラックスしている時も同じです。
しっぽは通常運転ですが、尊敬は目に現れます。チラチラと顔を覗いて飼い主と視線が合えば、たちまち嬉しそうな目で見つめ返してくるでしょう。
ここからは余談ですが、顔を覗きこむという犬の行動に、いいイメージを持っていない飼い主もいます。過去に私が相談を受けた飼い主に、こんな方がいました。「先生、うちの犬はいつもいつも、チラチラと私の顔色をうかがうのです。もしかして、この犬は卑屈で性格が暗いのでしょうか」。
答えは逆です。犬が尊敬し注目しているからこそ、表情から感情を読み取ろうとしていつも必死なのです。この件で、私は犬の気持ちを正しく読みとることの大切さを感じました。
まとめ
いかがでしたか。犬が顔をチラチラと覗きこむ時の気持ちについて紹介してきました。いずれも気持ちは違いますが、共通するのは「飼い主の感情を読み取ろうとする行動である」ということ。期待、うしろめたさ、尊敬。色々な感情を犬と交わし、目と目で通じ合う関係を築きたいですね。