犬の抗ガン剤治療に伴う副作用の下痢
犬と暮らしている人にとって最も辛く考えたくないことは愛犬とのお別れですが、愛犬の命に関わるような病気について勉強しておくことは決して邪魔にはなりません。犬が亡くなる原因となる病気で最も多いのは、さまざまな種類の悪性腫瘍です。
幸いなことに犬のガンの治療法は多くの研究が進められており、効果的な治療薬も開発されています。ガンの治療方法の代表的なものは抗ガン剤と呼ばれる化学療法です。
抗ガン剤には強い副作用がある場合が多いのですが、副作用の症状で一般的なものの一つに下痢があります。下痢が重症になると抗ガン剤による治療を中止しなくてはならない場合もあるため、副作用の制御は重大な課題です。
2021年12月、アメリカ食品医薬品局が犬の抗ガン剤治療に伴う副作用の下痢を治療する薬を条件付き承認することを発表しました。
新しく承認された化学療法誘発性下痢のための治療薬
この新しい治療薬はCanalevia-CA1という名でアメリカの製薬会社ジャガー・ヘルスによって開発されました。
この薬は化学療法を受けている犬に下痢の症状が出た場合に、その原因を専門の獣医師が適切に診断した上で、処方箋によってのみ投与されます。犬の化学療法誘発性下痢を治療するための薬として初めて承認された処方薬となります。
Canalevia-CA1の有効成分はクロフェレマーで、クロトンレクレリという木の樹液から精製されたものです。
ジャガー・ヘルス社はこの樹液の採取について公正な取引に基づき、生態系の保全や現地住民への支援も含めたサステナビリティ(持続可能性)を確立していると発表しています。
クロフェレマーはHIVの治療を受けている成人の非感染性下痢の治療薬として、ヒトでの使用が承認されています。ヒトでは、腸管上皮細胞によって分泌される塩化物イオンと水分をクロフェレマーが阻害することによって機能します。犬の場合も同様に機能すると考えられています。
Canalevia-CA1の治験の結果
犬の化学療法誘発性下痢の治療薬Canalevia-CA1の有効性を研究するための治験結果は、次のようなものでした。抗ガン剤治療によって下痢の症状が出ている犬24匹を対象に、12匹にCanalevia-CA1を投与し、投与しなかった12匹と比較されました。
薬の投与によって治療が成功したかどうかは、下痢が解消し3日間の観察で再発しなかった場合に成功と見なされました。
投与開始から3日後、Canalevia-CA1を投与した12匹中9匹(75%)が治療に成功しました。投与しなかった対照グループの12匹のうち下痢が解消したのは3匹(25%)でした。
Canalevia-CA1自体にも副作用が出る可能性はあり、便の変色、食欲と活動の低下、嘔吐が一般的なものでした。
まとめ
犬の抗ガン剤治療に伴う副作用のひとつ「化学療法誘発性下痢」の初めての治療薬がアメリカ食品医薬品局によって条件付き承認されたというニュースをご紹介しました。
このような薬は一生縁がなく暮らしていけるのが一番なのですが、いざという時に色々な選択肢があると知っているだけでも心の持ちようが違います。
毎日の愛犬との生活に必要な情報ではありませんが、日頃から少しだけアンテナを張っておくと獣医さんから説明を受けた時の助けにもなり得ます。