米国獣医師からの提言「保護犬を迎える時に知っておきたいこと」

米国獣医師からの提言「保護犬を迎える時に知っておきたいこと」

保護施設で暮らしていた動物は、世話する人も迎える人も気をつけなくてはいけないポイントがいくつかあります。シェルター・メディスンに詳しいアメリカの獣医師が発表した内容をご紹介します。

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アメリカの保護施設の犬や猫たち

保護施設のスタッフ女性と犬たち

アメリカには公営私営合わせて多くの動物保護施設があり、年間1千万頭以上の動物たちが保護されています。またそのほとんどは犬と猫が占めています。

保護施設で暮らす動物のための医療は、家庭で飼われている動物とは違う注意点やスキルが必要なことが多く、そのために『シェルター・メディスン』と呼ばれる保護動物のための医療というコンセプトがあります。

資金や人的資源に恵まれた保護施設では、シェルター・メディスンをよく知る獣医師が動物たちの医療ケアをしたり、スタッフへの指導をしている場合もあります。

シェルター・メディスンはアメリカで生まれたコンセプトですが、すべての動物保護施設が十分な医療や人手を持っているわけではありません。

保護施設での生活に特化したケアを受けずに家庭に迎えられた犬や猫も、新しい飼い主によって一般の動物病院へと連れて行かれます。

その際に、飼い主も獣医師も保護施設で暮らした動物の心理状態などを知らずにいると、犬や猫の行動が手に負えないという事態が起きて、施設に戻されるということも少なくありません。

このような事態を改善するために、アメリカのシカゴで動物病院を営みシェルター・メディスンにも精通しているナタリー・マークス獣医師が、獣医師向け業界誌のサイトに「ホームレスの動物たちが怖がらずにすむ環境を」という公開書簡を投稿しました。

獣医師向けに書かれたものですが、保護犬や保護猫を迎えたいと考えている一般の飼い主さんも知っておきたいことがたくさん含まれているので、ここにご紹介します。

保護施設で犬や猫が感じる恐怖や不安

ケージから顔を出している子犬

アメリカには、ある獣医師が立ち上げた「フィアー・フリー」という団体があります。

直訳すると「恐怖からの解放」という意味の団体名が表す通り、ペットの犬や猫が直面するあらゆる恐怖について飼い主、獣医師、ペットトリマー、保護団体スタッフなどが、正しい知識を持って動物の恐怖や不安を取り除くための教育が主な活動です。

この書簡を公開したマークス獣医師もフィアー・フリーの教育を受けて、団体から認定されている一人です。マークス獣医師が強調しているのは、保護施設での生活は犬や猫に恐怖、不安、ストレスを与えるということです。

保護された犬や猫が一般の家庭から来たにせよ、野良として暮らしていたにせよ、保護施設のケージでの暮らしは突然の大きな環境の変化です。新しい匂い、音、人間、他の動物など新しい情報が洪水のように押し寄せ、施設での生活の初期から脳に恐怖の記憶として残ります。

また多くの保護施設は、資金や人手の関係で犬や猫たちに「普通の」日常生活を与えることが困難です。そのため短期の収容期間であっても不安や適応困難につながります。

長期に渡って施設にいる動物の場合は感情への影響はさらに深刻で、行動障害や不安障害につながる可能性があります。

施設内での経験だけでなく、飼育放棄された経験、捕獲された経験、譲渡イベントでの経験などが恐怖の記憶になっている場合も数多くあります。

日常生活の中で恐怖や不安を軽減するためには「エンリッチメント」と呼ばれる生活を豊かにする工夫が重要です。散歩に連れ出したり、おもちゃで遊ぶ時間を作るといったものが代表的です。このエンリッチメントも施設によって対応が大きく異なります。

保護犬や保護猫を迎える際に心に留めておきたいこと

男性の手で撫でられている子犬

上記のようなことについて、マークス獣医師は保護施設スタッフや、保護動物を診察する獣医師がどのように対応すれば良いのか述べています。

一般の飼い主が施設や獣医師の行動を変えることは難しいのですが、保護施設にいた動物がどのような心理状態だったのか可能性を知っておくことは大切です。

動物愛護センターなどから迎えた犬が、こちらを向いてくれないのは「人間を舐めているから」でも「もう成犬で訓練は不可能だから」でもありません。

ほとんどの場合が、恐怖と不安を感じているからです。犬を叩いたりすることはなくても、新しく迎えた犬を家族で取り囲んで撫でることも、恐怖と不安につながる可能性があります。

保護施設にいた犬や猫は生活環境の激しい変化を経験しています。新しく家庭に迎えられたことも激しい変化の一つです。

安心できる環境かどうかを動物自身がゆっくりと認識できるように、人間は静かに見守ることが大切です。数日して落ち着いた様子が見えたら少しずつポジティブな経験(トリーツ、遊びなど)を重ねていくことが、恐怖や不安を消していくのに役立ちます。

日本ではペットショップから犬や猫を迎える例が多いですが、この場合も保護施設とほぼ同じです。多くの子犬や子猫は幼い時期に母犬や兄弟から離されて流通のいくつかの段階を経ているため、環境の激変に伴う不安や恐怖を経験しています。

つまり家庭的なブリーダーの住宅から飼い主のところに直接来たのではない限り、犬や猫を迎える人は不安と恐怖を打ち消してあげるための心構えと知識が必要です。

実際にどのように対応するかは、信頼できるトレーナーやセミナー、または書籍などに頼ることになりますが、上記のようなことを知っていれば選ぶポイントも絞られるかと思います。

まとめ

保護施設で犬を選んだ女性

アメリカの獣医師が保護動物を診察する獣医師向けに書いた注意を促す公開書簡の中から、日本の飼い主も知っておきたい部分を抜粋してご紹介しました。

保護犬や保護猫は決して「傷もの」や「欠陥品」ではありません。しかし、彼らが経験した可能性の高い恐怖や不安について知っているかどうかは、家族に迎えた後の生活に大きく関わってきます。

保護動物に限らず、人間のそばにいる動物が感じる恐怖や不安について、人間はもっと理解を深める必要があると思います。

《参考URL》
https://todaysveterinarybusiness.com/the-fearless-journey-of-a-shelter-pet/

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