気候と犬の運動にはどんな関連があるのか?
地球温暖化による異常気象は世界規模での深刻な問題ですが、犬と暮らしている人にとっては毎日の散歩という日常的な行動を左右する問題でもあります。
特に夏の異常な暑さは、犬の命に直接関わることなので苦労している方も多いと思います。
この度、イギリスのノッティンガム・トレント大学の環境科学の研究者チームが、複数の国の犬の飼い主を対象にして、気候が犬の運動意欲や活動レベル全体にどのくらいの影響を与えるのかアンケート調査を実施しました。
毎日の散歩は犬の福祉や健康維持のために大きな役割を果たしているので、気候の影響を飼い主が認識しているかどうかは重要な問題です。
5カ国語での犬の飼い主へのアンケート調査
アンケートへの参加者はSNSと獣医学関連サイトを通じて募集されました。
募集は英語、ポルトガル語、スペイン語、オランダ語、ハンガリー語で行われたため、ヨーロッパ、北米、オーストラリア、アジア、わずかながら南米とアフリカからと世界のさまざまな地域から合計3153名の回答が集まりました。
質問項目は犬についての一般的な情報の他に、犬の日常的な活動レベル、ドッグスポーツへの参加状況、夏と冬それぞれの活動レベル、犬の活動中または活動後に起こりやすい問題、問題の予防方法や対処方法などが含まれていました。
活動レベルはスコアをつける形式で質問され、夏と冬のさまざまな気象条件での犬の活動レベルがスコア化されました。
犬の活動レベルは異常気象に大きく影響されている
犬の日常的な活動はほとんどの場合が散歩を指していました。58.6%が1日1時間以上の散歩や運動をしており、約7割の犬が1日に複数回の散歩や運動の時間を持っていました。
気候から受ける影響では、冬の時期に活動レベルを低下させるのは「寒さ48%」「氷雪64%」で「雨25%」を大きく上回っていました。冬の気候への対策として犬にコートなど洋服を着せている人は約半数でした。
またドッグスポーツに参加している犬の場合、飼い主が冬の寒さを問題にする割合はたいへん低くなっていました。
夏には82%の飼い主が犬の散歩や運動の時間を短縮しており、87%は犬自身の運動量も低下すると回答しました。
夏の活動レベルを維持するための努力や工夫は、水中の運動や水辺の散歩を挙げた人が90%以上を占めました。また保冷剤や冷却機能のある洋服なども広く利用されていたそうです。
短頭種の犬の飼い主は夏の暑さに用心深く対応しているだけでなく、冬の寒さに対しても慎重な対応が伺えたそうです。このことから短頭種の犬の健康改善と一般への周知の必要性が改めて認識されました。
研究者は現在の異常気象の中でも、とりわけ夏の暑さが犬の活動レベルに大きく影響していると強調しています。
今後、夏の暑さはさらに厳しくなると予想されるので、活動レベルを維持しながらも、犬の福祉に配慮した対応などを効果的にアピールする戦略が必要だとしています。
まとめ
気候と犬の活動レベルについて国際的なアンケート調査を実施した結果から、近年の夏の異常な暑さが大きく影響しているという結論をご紹介しました。
日本でも夏の日中に散歩をして犬が熱中症になってしまったり、反対に1日中室内のこもり切りになるような例は多く見聞きされます。
夏に比べると影響は小さいとは言え、冬の寒さ対策の洋服なども拒否する飼い主さんは少なくありません。犬の健康と福祉を守るためにも、このような研究結果から幅広い層への効果的なアピール方法が考案されて広まってほしいと切に願います。
《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani11113302