犬の下半身の「ふらつき」や「よろけ」は要注意
犬の場合、下半身つまり後肢に力が入らなくなり、よろけたりふらついたりする症状を見せる病気には、深刻度の高いものが多いということをご存知でしょうか。
愛犬が後肢をどこかにぶつけてよろけたりふらついたりしたものの、すぐに元に戻り、その後再発もしない場合は別です。
しかし、いつまでも症状が続いたり、再発を繰り返すような場合は、すぐに動物病院で診てもらうことを強くおすすめします。
下半身にこのような症状を発症させる病気には、大きく分けて以下の3つの原因が考えられます。
- 脳神経系に異常をきたした場合
- 骨や関節に異常をきたした場合
- 血管が何らかの原因で詰まってしまった場合
これらの3つの原因毎に、犬の下半身にふらつきやよろけの症状を引き起こす病気をご紹介します。
1.神経系の疾患:椎間板ヘルニア
犬の背骨は、首の骨である7個の頚椎、胸部の背骨である13個の胸椎、腰の骨である7個の腰椎の27個の小さな骨(脊椎)で構成されています。
そして、頚椎の一部を除いてそれぞれの脊椎は、椎間板という軟骨によってつながっています。
脊椎の形状からできる空洞には脊髄という神経の束が通っています。
椎間板はクッションとなって背骨にかかる外圧から背骨を守っていますが、中の組織が変性して飛び出し、脊髄を圧迫すると神経症状を起こします。これが「椎間板ヘルニア」です。
初期段階で後肢に力が入らなくなり、歩く時にふらつくようになります。
そのまま重症化させてしまうと後肢を引きずるようになり、麻痺で排尿困難になったりします。
痛みがあると、抱っこをした時に「キャンッ」と鋭く鳴いたり、段差を嫌がったり、背中を丸めたりしていることが多くなります。
これらを早期に察知して、早めに治療を開始できるようにしてあげましょう。
好発犬種には、ミニチュア・ダックスフンド、ペキニーズ、トイ・プードル、コッカー・スパニエル、ウェルシュ・コーギー、シー・ズー、フレンチ・ブルドッグなどが挙げられます。
その他、ふらつきなど下半身に症状が現れる神経系の病気としては、内耳にある前庭という平衡感覚を司っている器官が侵される前庭疾患や、脳腫瘍、脳炎なども挙げられます。
前庭疾患や脳腫瘍は、高齢の犬によくみられる疾患です。
2.骨や関節の疾患:膝蓋骨脱臼
後肢の膝蓋骨(膝の骨)が正常な位置からずれてしまうのが「膝蓋骨脱臼」です。
内側にずれる場合を内方脱臼、外側にずれる場合を外方脱臼といいます。
膝関節やその周囲に先天的な異常がある場合や、外傷、栄養障害など、発症の原因はさまざまです。
好発犬種は、トイ・プードル、チワワ、ポメラニアンなどの小型犬種です。
初期の段階では、脱臼を起こしたり自然に元に戻ったりということを繰り返すため、無症状に見えて気付きづらいかもしれません。
たまにスキップをするような歩き方になるので、歩く様子(歩様)は常に気にする習慣をつけると良いでしょう。
重症化すると脱臼したまま戻らなくなり、顕著な跛行や腰をかがめた姿勢や内股で歩くようになり、さらには地面に足を最小限しかつけないような歩き方になっていきます。
他にも、骨折や股関節脱臼などでも、下半身にふらつきやよろけが出ることがあります。肥満にさせない、滑りやすい床材には滑り止め効果のあるマットを敷くなどで、ある程度予防することが可能です。
3.血管の閉塞:大動脈血栓塞栓症
血管内皮に炎症が起きたり血液の流れが停滞したりといったことが原因で、血液が固まった状態になることがあります。これを、血栓といいます。
血栓が大きいと、そこから先の血液の流れを止めてしまいます。
「大動脈血栓塞栓症」は、大動脈が左右の後肢に枝分かれする細い部分に血栓が詰まる病気です。
後肢に血液が流れず、足を動かすために必要な酸素や栄養を供給できなくなります。
血栓は、心筋症により血流が停滞した場合や呼吸状態がよくないときなどによくできます。
犬に多く見られるのは、心筋が薄く延びてしまう拡張型心筋症で、ドーベルマン、グレート・デン、ボクサー、セント・バーナードなどの大型犬に多く見られます。
元気消失、食欲低下、体重減少、動きたがらないなどの症状や、肺に水が溜まって咳が出たり呼吸困難を起こしたりすることもあります。突然死につながることもある病気です。
他にも、内臓にできた腫瘍等が周囲の血管を圧迫して、血管を閉塞させることもあります。
シニア期の犬は腫瘍を発症しやすくなりますので、年齢のせいだと見過ごさずに、早めに動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
先天性疾患の場合は比較的若いうちに発症することが多く、今回ご紹介した病気にもあるように、シニア期以降に発症しやすい病気もあります。
特にシニア期に入ると、筋力が低下したり視力や聴覚などのさまざまな機能が低下してきます。
特に下半身がふらついたりよろけたりする場合は、今回ご紹介したような深刻度の高い病気の場合が多いです。
そのため、「年齢のせい」と思ってしまわずに、早めに動物病院で診てもらうようにしましょう。
定期的な健康診断と、自宅での観察・ケアによる常日頃からの健康管理で、早めに愛犬の病気に気付いてあげられるようになりましょう。