人気犬種のフレンチブルドッグの有病率を調査
この10年くらいの間、フレンチブルドッグは世界中で常に人気犬種の上位にランクされています。
一方でフレンチブルドッグやパグに代表される短頭種の健康問題についてもたびたび問題提起されており、これらの犬種の健康問題を改善するべく様々な分野の専門家が取り組み始めています。
この度イギリスの王立獣医科大学が、動物病院で診断される一般的な疾患についてフレンチブルドッグの有病率を調査し、その結果を発表しました。
王立獣医科大学はイギリス国内の動物病院と連動している大規模症例データベースを運営しています。調査はこの膨大なデータを使用して行われました。
他の犬種よりもフレンチブルドッグに多い疾患とは?
この調査のために使われたデータは、王立獣医科大学が運営する獣医療データベースVet Compassに参加しているイギリス国内の動物病院で診察を受けた犬の電子カルテに基づいています。
2016年の1年間にイギリスで診察を受けた90万頭以上の犬のうち、ランダムに抽出された21,850頭のフレンチブルドッグ以外の犬と2,781頭のフレンチブルドッグのデータが調査分析されました。
《参考URL》
https://cgejournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40575-021-00112-3
「フレンチブルドッグ以外」と「フレンチブルドッグ」の2つのグループに共通する疾患43種類が抽出され、フレンチブルドッグはそのうちの20の疾患について他の犬種よりも有病率が高く、11の疾患について他の犬種よりも有病率が低くなっていました。
フレンチブルドッグ以外の犬種に比べて、フレンチブルドッグに特に多かった疾患は以下のようなものでした。
- 鼻腔狭窄症 約42倍
- 閉塞性気道障害 約30倍
- 聴覚障害 約14倍
- 皮膚炎 約11倍
- 出産困難 約9倍
他の犬種よりもフレンチブルドッグに少ない疾患では、ここまでの大きな差は見られませんでした。
フレンチブルドッグの健康を改善するために必要なこととは?
この調査結果は、フレンチブルドッグの健康状態が他の犬種と非常に異なっており、その大部分がはるかに良くない状態であることを示していました。
上記の時に多かった疾患が示している通り、フレンチブルドッグの健康状態を低下させているのは犬種特有の極端な形状と強く関連しています。
つぶれた鼻先や短過ぎるマズルのために鼻の穴が極端に狭く、気管が閉塞しやすくなっているために呼吸障害が起きやすいというものです。
頭の形状が影響を及ぼすのは鼻や気道だけでなく、外耳道も狭くなっており耳の感染症や炎症が起きやすい原因となっています。
たるんだ皮膚のシワは湿疹や炎症が起きやすく、大きな頭蓋は正常な出産の妨げとなります。
犬種特有の極端な形状は自然なものではなく、愛玩のために選択繁殖を繰り返した結果作られたものなので、上記のような疾患は「犬種特有だから仕方がない」というものではありません。
研究者はフレンチブルドッグの形状の特徴をより緩やかなものに変化させていくことが、現在の当犬種の深刻な健康状態を改善する論理的な方法であると提案しています。
まとめ
フレンチブルドッグの健康状態が他の犬種に比べて全般的に劣っており、その原因は犬種特有の形状と密接に関連しているという調査結果をご紹介しました。
この調査が実施されたイギリスでは、短頭種の犬の人気について専門家が長年にわたって警鐘を鳴らしていますが、フレンチブルドッグやパグの人気が衰える兆しはありません。
しかし一方では、これらの犬種の医療費の高さに閉口した飼い主が飼育放棄する例も後を絶たない状態です。
鼻ぺちゃ顔や大きな目は人間の基準では可愛らしく見えますが、無理矢理にこの形状にされたために犬たちは健康問題に苦しんでいます。フレンチブルドッグの健康状態を改善するためには多くの人がこの現実を知ることが重要です。