時代が変われば、箇所も変わる?
「犬は、頭を撫でられるのが大好きです」。昭和時代の犬の飼い方ハウツー本には、決まってといいほどこのように書かれていたものです。しかし今、周囲の犬たちを見回してみても、撫でられて一番好きな個所は「頭」という犬はほとんどいません。
もちろん頭も好きだけど一番は〇〇。という、頭とは別の個所を好む犬が多いですね。時代が変われば犬との関わり方も違ってきますから、昭和とは違う飼い方によって、犬が喜ぶ撫で方も変化してきているのかもしれません。
犬が喜ぶ撫で方とは
犬は好きな人、心を許している人に気持ちを込めて慈しむように撫でてもらうと喜びます。それは犬の記憶に染みついた愛情の表現だからです。
生まれてすぐに母犬の温かい舌でペロペロとなめられて育った懐かしい遠き日の記憶。犬が喜ぶ撫で方とは、ほとんどの犬がもう二度と会うことのない母犬の舌の温もりを、飼い主の手で再現して愛情を伝えることだと言えます。
ダメな撫で方3選
さて、ここから反対にダメな撫で方を紹介します。中には「あるある~!」というような身近な例も含まれているかもしれません。
1. ワシャワシャと
犬は色彩が分かりにくいとか、遠くはぼんやりとしか見えないなど犬は人と違う視力を持っています。それに加えて、目の前から1メートルより近い距離には、はっきりと焦点を合わせることができません。
そうした理由から、犬の目からあまりに近い位置で「ワシャワシャと」、激しく撫でられると手の動きが把握しづらいため怖いと感じることもあるようです。
2. バンバンと
次は、「バンバンと」、まるで体育会系のノリで激励するような強めの撫で方について。「これ、うちの犬は絶対嫌がるだろうなあ…。」と思う方が多いでしょう。しかし、好む犬もいるのです。
バンバンと表現するのは少し大げさかもしれませんが、ボディをポンポンと、気合を入れるかのように分かりやすく撫でることで、テンションが上がり嬉しくなるようなタイプの犬がいます。
ただ、自身の犬がこのタイプだからと言って、他人の犬にも同じ撫で方をしてはいけません。ほとんどの犬は、そうした荒々しい撫で方を嫌がるので注意してください。
3. ガバッと
また、犬は「ガバッと」、上から覆いかぶさられるような人の動きにも不安を感じます。これは一説によると、犬は本能的に熊のようなのっそりとした大きいシルエットの動きに敵意、警戒心を感じるためです。
特に他人の犬を撫でる際は、立ったまま犬の頭上から覆いかぶさるような体制は避けたほうが無難ですね。まず人が座ったりしゃがんだりなど姿勢を低くし、撫でる手も上からではなく下の方からゆっくりと優しく撫でましょう。
それ、勘違いかもしれません
あなたの犬は、「誰からでも撫でられるのが好き」というタイプでしょうか。それとも、「家族以外に撫でられるのはあまり好きではない」というタイプでしょうか。
基本的に犬は、心を許していない人に撫でられるのが得意ではありません。これを読みながら、「え?うちの子、誰でも好きだし、誰からでもとにかく撫でてもらえれば喜ぶけどな?」と思った方もいますが勘違いしている可能性もあります。
誰からでも撫でられるのが平気だというのは素晴らしいことです。しかし、犬の気持ちとしては、「まあ、平気は平気だけれども、本音は早く飼い主のところに戻りたい」と思っている子がほとんどのように見受けられます。
心を完全に許している人以外に撫でられるときは、ある程度のところで切り上げ、飼い主のそばに寄せて安心させることを、ぜひセットで行ってみてください。
ここが好き!トキメク撫でられスポットは〇〇!
冒頭で、犬が撫でられて嬉しい箇所は歴史と共に変化している。と書きましたが、小さな検証をすべく、今回、独自で筆者のインスタグラムからアンケート調査を行いました。(実施日:2021年12月19日~20日実施、回答者数320名)
「あなたの犬は、どこを撫でられると一番よろこびますか?」という質問について、色々な回答をいただきました。第一位はなんと、「首」。次いで、耳、脇、お腹の順でした。(他に、耳の中、おしり、内もも、目まわり、ボディの横、あご、等々)
正直なところ、やはり教科書とリアルはちがうな、と思い知らされた驚きの結果となりました。普段、私たち訓練士はよく「犬が撫でられて嬉しいのは胸やお尻の上あたりですよ。首、脇、お腹、顔は急所なのであまり触られるのが好きではありません。ですから幼いうちから慣らすように~云々」と、飼い主たちに話すものです。
しかし、このアンケート回答を受け、犬を飼うスタイルについて、また一つフェーズが変わってきたのかなと感じましたし、それを飼い主のみなさんに教えていただく結果となりました。アンケートにご協力してくれた方々にお礼を申し上げます。
まとめ
より犬と飼い主との距離が近くなったと言える現代。すべてを飼い主にゆだね、安心して撫でられることを好む犬が増えたと思います。
今日も明日も、その先もずっと、お互いの温もりを感じながら、撫でられ喜ぶ愛犬の顔を見守っていきたいですね。