犬の記憶
犬は、嬉しい時によく聞く言葉を「良い言葉」、嫌な時によく聞く言葉を「嫌な言葉」として覚えます。
これを上手に活用することで、犬にとっての「褒め言葉」や犬が進んでやりたがるような号令、合図に利用することができます。
犬のしつけに大事なのは、叱らずに褒めることです。
叱ることが増えると、犬にとって「嫌な言葉」が増えていきます。
怒っていなくても、愛犬にとっては嫌悪する言葉として捉えてしまい、モチベーションを下げてしまうということも。
逆に犬にとって「良い言葉」が増えると、愛犬は喜んで飼い主さんの指示に反応したり、常に高いモチベーションを維持することができるようになります。
多くの犬が喜ぶ言葉をご紹介しながら、愛犬に「良い言葉」を覚えてもらうためにどうすればよいのかについて、考えていきましょう。
犬が喜ぶ言葉
1.「ご飯」「おやつ」
愛犬にとっての大きな楽しみの一つが「食べること」です。
そして飼い主さんの多くは、食事を与える時に「ご飯」という言葉を発し、おやつを与える時に「おやつ」という言葉を発するのではないでしょうか。
そのため多くの犬にとって、「ご飯」や「おやつ」は良い言葉として記憶に定着しています。
「ご飯」や「おやつ」という言葉を発した直後に給餌することで、犬はこれらの言葉と食事やおやつを関連付けて覚えます。
このとき重要なポイントは、タイミングです。
言葉と行動の間に時間が空くと、犬は言葉と行動を結びつけることができなくなります。
言葉を覚えさせたいときには、良いことでも悪いことでも、結びつけたい行為と言葉の間に時間を空けないことです。
2.「ヨシッ!」「Go!」
「待て」の状態を解除する合図として「ヨシッ!」という言葉を使うことが多いのではないでしょうか。
また散歩の途中などで「待て」をさせた後に、その状態を解除して散歩を再開する時に「Go!」という言葉を使うこともあるかもしれません。
このように、愛犬がしたいと思っていたことをさせてもらう時の合図の言葉も、愛犬にとっては「良い言葉」です。
これらの言葉を覚えさせたい時のポイントは、言葉を統一することです。
昨日は「行こう!」と言い、今日は「Go!」、明日は「いいよ!」では、いくら頭が良くても記憶にきちんと定着させるのは難しいです。
覚えさせたい言葉は、使用するシーンとタイミング、そして言葉を常に統一することです。
3.「散歩」
食べることと同じくらい、またはそれ以上に大好きなのが、お散歩です。
必ず「散歩」という言葉を発してから準備を始めるようにすると、愛犬は「散歩」という言葉と実際の散歩を結びつけて記憶します。
飼い主さんが「散歩」と言うと、自らリードを取ってくるようになる場合もあります。
気を付けたいのは、むやみに予定を変更しないことです。
「散歩」という言葉を聞いて、愛犬は期待を膨らませます。
にも関わらず、予定を変更して別のことを始めてしまうことを繰り返すと、愛犬の飼い主さんへの信頼感が低下してしまうでしょう。
4.「良い子!」「偉い!」
多くの犬が、飼い主さんから声を掛けられたり撫でられたりするのが大好きです。
その際に、「良い子だ!」とか「偉いね!」と言われていると、これらの言葉も良い言葉として記憶され、愛犬にとっての褒め言葉として定着します。
褒める時に常におやつに頼っていると、肥満を招くこともあり得ます。
愛犬にとって褒め言葉を作ってあげることで、おやつがなくても愛犬にとって十分なご褒美になりますので、意識的に褒め言葉を作ってあげましょう。
5.自分の名前
大抵の飼い主さんは、愛犬を褒める時に「○○、偉いね!」のように冒頭で愛犬の名前を呼ぶのではないでしょうか。
このように、嬉しい時に名前を呼ばれることで、愛犬は自分の名前を良い言葉として覚えます。
ただし、叱る時にも冒頭で名前を呼んでしまうのはやめてください。
褒め言葉のときと同じ理由で、自分の名前が嫌な言葉になってしまうからです。
愛犬を飼い主さんの元に呼び寄せる時に、必ず愛犬の名前を呼ぶと思います。
何かする際にも必ず愛犬の名前を呼ぶでしょう。
愛犬にとって、自分の名前が必ず良い言葉になるように、意識してあげましょう。
飼い主さんの気持ちを愛犬に正しく伝える工夫
犬は、自分が経験した出来事と言葉を関連付けて覚えます。
そして、その出来事で自分が感じた感情でその言葉を捉えるようになります。
そこで気を付けていただきたいのが、声をかける時の飼い主さんの声のトーンです。
犬は、嬉しいという意思を表示する時には甘えたような甲高い声で鳴き、不快な時には低い唸るような声で鳴きます。
そのため、飼い主さんが甲高い声で「やめなさい!」などと叫ぶと、愛犬は飼い主さんが喜んでいると勘違いしてしまいます。
飼い主さんがやってはいけないことを教えようとしているにも関わらず、「飼い主さんを喜ばせたい!」と問題行動をエスカレートさせる原因になってしまう場合があるのです。
愛犬を褒めるときには声のトーンを上げる、いけないことを教えたいときには声のトーンを下げるといったことを意識すると良いでしょう。
まとめ
犬の習性をよく理解しておかないと、飼い主さんの意図が正しく伝わらないことがあります。
愛犬とのコミュニケーションをスムーズに図るためには、愛犬が喜ぶ言葉をたくさん覚えさせることが望ましいと考えられます。
愛犬が喜ぶタイミングに、間を空けずに短めで覚えやすい言葉を高いトーンの声で発することで、犬に良い言葉をたくさん覚えさせましょう。