犬が覚えている言葉の目録を作成
犬と暮らしている人の多くは毎日ごく普通に犬に話しかけ、犬がいくつかの言葉を理解していると感じています。犬が特定の言葉をかけられたときに決まった行動を取ることからも、彼らが人間が発する単語やフレーズを覚えていることが分かります。
このように「犬が常に一貫した反応をする言葉」について、カナダのダルハウジー大学の心理学/神経科学の研究者が単語の詳細な目録を作成しました。
目録作成のデータとなったのは飼い主へのオンラインアンケートです。犬が覚えているのはどのような言葉で、より多くの言葉を言葉を覚えている犬の特徴や、その飼い主の特徴などが調査されました。
「あなたの犬が覚えている言葉は?」アンケート調査
アンケート調査への参加者はSNSを通じて募集され、匿名で参加することができました。最終的に165人が回答を完了しました。
質問事項は飼い主の性別や年齢、職業などの基本事項、犬の性別、年齢、トレーニング履歴、不妊化の有無、犬種などの基本事項が含まれ、具体的な言葉については用意されたリストからの選択と、そこに含まれない言葉を回答者が記入するというものでした。
用意された言葉のリストは単語または短いフレーズ172種類で、過去の研究やトレーニングで使われる言葉などを基にしています。172種の言葉は次の7つのカテゴリーに分かれています。
1. 人や動物の名前30種(犬の名前、ママ、リスなど)
2. コマンド関連63種(おいで、おすわり、ストップなど)
3. おもちゃ関連10種(ボール、フリスビーなど)
4. 食べ物関連19種(トリーツ、おなかすいた?など)
5. 生活関連23種(クレート、お風呂など)
6. 場所関連16種(公園、散歩など)
7. ルーティン関連11種(おしまい、いい子ねなど)
犬が覚えているという基準は、その言葉をかけた時に犬が一貫した反応を示すことと設定され、それぞれの言葉がどのくらい当てはまるかが0〜5の6段階評価で回答するよう求められました。
犬が覚えていた言葉の数と傾向はどんなものだったのか
アンケート調査の回答を集計分析した結果、回答者の犬たちが一貫して反応する言葉の数は平均89語(提示されたリストから78語と追記された11語)でした。
言葉の数は15〜215とかなりの幅がありました。最多の215語というのは2歳児の語彙とほぼ同じなのだそうです。
飼い主の属性の違いは、覚えていた言葉の数との関連が見出されませんでした。反対に犬の属性は言葉の数に関連を示していました。
犬の属性で関連していたのは、犬が警察犬など専門の仕事を持っているか、受けたトレーニングのレベルと犬種で、年齢は言葉の数に影響していませんでした。
警察犬、軍用犬、救助犬などの仕事に就いている犬は職業訓練を受けていない犬の1.5倍の数の言葉を覚えていました。また、犬種ではハーディンググループの犬種とトイグループの犬種に多くの言葉を覚えている傾向が見られました。
今回の調査は飼い主の回答のみに基づいていること、サンプル数が少ないこと、研究者による観察データや実験データとの比較がされていないことから、今後さらに研究が必要だということです。
しかしこの研究は、犬がどのような言葉に反応する可能性が高いかを特定する機器の開発や、さまざまな職業候補の犬の可能性を早期に予測するのに役立つ第一歩となると研究者は述べています。
まとめ
一般の飼い主を対象にしたアンケート調査で、犬が覚えている言葉について調査分析を行ったところ、犬たちが覚えている言葉の数の平均は89語で、職業を持っている犬は多くの言葉を覚えていたという結果が出たことをご紹介しました。
研究者もサンプル数の少なさについて言及していますが、このアンケート調査はかなりボリュームのあるもので途中で回答を止めた人も少なくなかったようです。
飼い主の属性は影響していないという調査結果が出ていますが、全ての項目を完了したという点である程度のスクリーニングが行われており、165人の回答者の愛犬は世間全般の家庭犬よりも高度な訓練を受けていた可能性が高かったのでは無いかと思います。
とは言え、犬の人間のコミュニケーションについて研究が進められるのは犬にも人にも嬉しいことです。今後の報告を楽しみに待ちたいと思います。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2021.105513