動物の愛護及び管理に関する法律
「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)は、昭和48年に制定された動物の飼育に関する法律です。法律の大きな目的は、動物の愛護と動物の適切な管理(危害や迷惑の防止等)についてです。
時代の変化と共に動物愛護の声が高まりをみせ、そうした声から平成11年、平成17年、平成24年、令和元年には見直しが行われ法改正がされています。※一部未施行のものについては段階的な取り組みがなされています
現代版、生類憐みの令
「生類憐みの令」とは、5代将軍・徳川綱吉の時代に発布された法令です。文字通り「生き物を大切にせよ」という内容のおふれで、中でもとりわけ犬を大切にしたことから、綱吉は「犬公方」と呼ばれることも。
江戸時代に施行された「生類憐みの令」と、現代の犬の法律は、まったく関係がないでしょう?と、思われるかもしれませんが、簡単に言うと、「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)は、この現代版のようなものなのです。
現代の法律では、飼い主は動物の健康と安全を保つように努めなければならないことや、動物の取扱業者を登録制にすることなど、動物への虐待防止やきちんとした取扱いをすることを主軸としています。いずれの法律もペットを守り、人とペットが一緒に暮らしていくためのルールを定めているというわけですね。
身近な実際の例はこちら
しかしながら、法律などのルールはペットを守ると同時に、飼主さんへの責任が生じることも明記されています。
犬を飼う上では、思わぬ事故を起こさないためにしつけなどをしっかりと行い、飼育環境を良好にすること。また、周囲に迷惑をかけないように管理する必要があります。では、ここからは実際に起きたトラブルのケースを3つご紹介します。
1. 重過失傷害罪
これは犬の散歩時に、犬が他人を咬んでケガをさせたというケースでの判例です。犬が人にケガを負わせる状況には、様々なシチュエーションがあるでしょうが、いかなる場合でも、飼主は犬を管理する義務があります。
例えば、咬ませないしつけが不足していたのかもしれませんし、犬に全く咬む意思が無かったのにも関わらず、なにかの理由により偶発的に起きてしまったことかもしれません。しかし、その場合においても飼主さんの管理が行き届いていなかったという意味で、この重過失傷害罪が適用される場合があります。
2. 県動物愛護管理条例違反(犬の係留義務)
犬の飼育には係留義務というものが定められています。これを怠り、犬を放し飼いで飼育した場合は、県動物愛護管理条例違反(犬の係留義務)罪が適用され、各都道府県の制定により30万以下の罰金刑が課されます。
係留といっても実際には犬を外に繋いで飼う方はもうほとんどいませんから、外飼いの場合には頑丈な柵内で管理しているか、とか、散歩時のノーリードの際の事故ではこの刑罰が適用されるケースがあります。
尚、他には例えば東京都の場合、以下のようなものが都で制定されています。
- 緊急時の措置命令違反 →1年以下の懲役又は30万円以 下の罰金
- 虚偽報告、立入検査拒否等 →20万円以下の罰金
- 緊急時無通報
- 咬傷犬検診義務違反
- 措置命令違反 →5万円以下の罰金
- 犬の飼い主の遵守義務違反
- 事故無届虚偽届出 →拘留又は科料
京都市では、平成27年7月1日から独自の「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例」が施行されています。この条例では、飼い主に対してペットの糞を回収する義務を課すること(同8条2項)、市民に対して不適切な方法で飼い主のいない動物にえさを与える行為を禁止すること(同9条)などが定められ、違反をすると、過料の制裁が科される場合があります。
このように、ペットと人の共生に向け、双方がマナーの向上を目指してルールを進化させている地域もあります。
3. 動物愛護法違反罪
犬を劣悪な環境で飼育した場合に適用されるのが動物愛護法違反罪です。近年、悪質な動物の虐待等に関する事件が後を絶たない状況等を踏まえ、令和2年に愛護動物のみだりな殺傷、虐待・遺棄についての罰則が強化されました。
愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科せられます。また、愛護動物を虐待又は遺棄した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。これにはネグレスト(世話をしない)も含まれます。
また獣医師は、虐待を受けた可能性がある、不自然に傷をつけられた、また、死亡した動物を発見した場合は、遅滞なく都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならないという一文も付け加えられました。
まとめ
いかがでしたか。今回は法律や条例、など、堅苦しい言葉ばかりが続いてしまいましたのでお読みになるのも疲れたことかと思います。
しかし、中身をかみ砕いてみると、つまりは、犬の行動のすべては飼主さんにゆだねられていますよ。だから、しっかり管理してマナーも守りましょうね。それから犬を大事に飼ってくださいね。
残念ながらペットは法律上では「物」として扱われてしまうからこそ、飼主さんが法についても知り、犬を安全に健やかに飼いましょうね。といったごく当たり前の内容になっていると思いませんか。
そうそう、狂犬病も、狂犬病予防法という法律に基づいたものですから、基本的には接種させる義務があります。その際に発行される登録鑑札を犬の首輪に必ずつけておくこと、とも明記されているのですが、これについては実際のところ少々難しいような気も…。こちらは今後の改正がなされることを期待します。